タイトル 猛獣大脱走

公開年

1984年

監督

フランコ・プロスペリ

脚本

フランコ・プロスペリ

主演

ジョン・アルドリッチ

制作国

イタリア

 

本作は、凶暴化した動物達が動物園から逃げ出し、次々と人間を食い殺していくパニック・ホラー映画。その昔、ゴールデン洋画劇場で放送された時初めて見て、動物が人を襲う残酷シーンと、ラストの人間も動物なんだと思い知らされる、何とも胸糞なラストを含めて、引き込まれたことを今でも覚えている。その後も見た記憶があるので、深夜枠などで放送されたのかもしれないが、最初から最後まで通してみるのは久しぶり。

映画の舞台となっているのは、フランクフルト動物園、コンピューターですべての施設を管理している、近代的な動物園だ。獣医のリップは、記者のローラを案内していたがどういう訳か、今日は動物たちは気が立っている。その夜、下水溝から大勢のドブネズミが現れ、車中でイチャコラしていたバカップルが最初の犠牲者となる。

本作の俳優についてデータが乏しく、かろうじてヒロイン・ローラを演じたロレーヌ・ド・セルだけ判明した。イタリアの女優で、主にジャンル系の映画で活躍した。80年代には引退しプロデューサーに転身するので、本作はキャリア最後期の作品となる。

リップは、友人のウェルナー警部からの電話でバカップルの事を知り現場に駆けつけ、火炎放射器でネズミを焼き払うように助言。今なら主人公は動物愛護の精神を発揮して、他の方法を考えるだろうが、この頃は清々しいまでに人命重視だ。

同じ頃、リップの動物園では野獣たちが暴れだし、象が檻を破って逃走。その際電機がショートして全ての檻が開放されらからさあ大変。町中に猛獣たちが解き放たれてしまう。

ネズミの始末をしたリップは動物園に駆けつけようやく事態を把握。行政は直ちに外出禁止の措置を取るが、町にはそれでも大勢の人が出ていて次々と猛獣の餌食となる。

更に空港に侵入した象のせいで町中が停電に陥る。地下鉄で娘の許に向かっていたローラはそのため立ち往生。そこには虎が現れ、車内は大パニックに陥る。ローラは親とはぐれた少女を救い出し、必死に逃げだすのだった。というのが大まかな粗筋。

冒頭でわざとらしく、動物たちが水を飲むシーンがあるので、原因に関しては冒頭でネタバレを起こしているし、中盤でこれもわざとらしく子供が水を飲むシーンが結構しつこく描かれる。この頃は、余り伏線を隠そうとしていないのか。おかげで原因は、なんとなく観客に察せられるので、あまり衝撃はなかった。

猛獣が人を襲うだけでなく、人間を貪り食らう描写がされている等、イタリア映画らしくゴア描写はエグイ。流石、ルチオ・フルチの国!チーターに襲われた女が車で爆走して、結局事故を起こして大怪我をするところや、象が空港に押し入り停電を起こさせるところ。そして地下鉄での虎の大暴れなど見どころも多い。もっとも、チーターが100キロ以上で走れるのは、ほんのわずからしいので本作の描写は明らかにおかしいが。また、最初の方でバカップルがカー・セックス中にネズミに襲われるシーン等、サービスも欠かさない点は、作り手は観客が喜ぶように作っている。もっとも本作、現代の基準では明らかにアウトなカットもあるのだが、当時はあれが堂々と地上波で流れたと思うと、ある意味恐ろしい。

少女の着替えシーンは今なら完璧にアウト!

 

それまでB級のエログロ映画だったのが、ラストで突然社会派を気取りだすのは興ざめ。とはいえ、本作の魅力はあくまでB級ホラーとしての魅力。今では本物の動物を使った、こうした映画を作るハードルはかなり上がり、CGに置き換えられつつあるので、モノホンの動物が人を襲い残虐の限りを尽くす映画は極めて貴重と言える。そしてなんとも後味の悪いラストは幼少期に見るとトラウマになるだろう。ただ、突然事態が鎮静化するのは何ともご都合主義なので、ここだけは残念だったと思う。