タイトル 野獣暁に死す

公開年

監督

トニーノ・チェルビ

脚本

トニーノ・チェルヴィ ダリオ・アルジェント

主演

モンゴメリー・フォード

制作国

イタリア

 

本作は、イタリアンホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの原作を、彼とトニーノ・チェルヴィが脚色したマカロニ・ウェスタン。公開当時、日本の名優・仲代達也が出演し日本では話題となった。本人の彫りが深く余り違和感を感じない。もっと若ければ「テルマエ・ロマエ」に声がかかったであろう。

出所早々の銃撃戦。こりゃ、先が思いやられる

 

映画は刑務所に入れられている主人公のカイオアが、手作りの木製拳銃でひたすら早抜きの訓練をするシーンから始まる。それもそのはず、彼は濡れ衣で5年間服役しその間、一時も復讐を忘れた事はない。彼を陥れたのは日系人のフェゴ。彼はカイオアの妻をレイプして殺し自分がやった強盗の罪まで着せたのだった。

翌日出所したカイオアだったが、さっそく銃を調達する。更に殺しにやって来たフェゴの手下二人を返り討ちにする。

主演のモンゴメリー・フォードはアメリカの俳優で、本来の芸名はブレッド・ハルシーだったが、余りこの映画の成功を信じていなかったせいか、改名して出演している。なお、本人はあのハルゼー提督の甥だそうだ。

カネを預けている古い友人から受け取ると、復讐の仲間となる4人の殺し屋を手付が5000ドル、成功報酬が5000ドルで雇い入れると、フェゴが暴れている地域を目指した。

その頃フェゴ達強盗団は、軍の給料を運ぶ馬車を襲い、護衛の兵士たちは皆殺しにする。正規の軍人たちが、いくら多勢に無勢とは言え無頼の野党達に、一方的に殺戮されるのはリアリティがない。この強盗団を率いるフェゴを演じるのは仲代達也で、役柄は資料によって日系人というのもあれば、メキシコ・インディアンの血を引くというのもありよく分からないが、名前から後者だろう。ただ、日本人の仲代に敬意を表したのか、刃の長い蛮刀を日本刀のようにして戦うシーンもある。

チェルビが仲代に入れ込んでいるらしく、かなり見せ場が多い

 

カイオアが自分を追っている事を知った彼は、4人の偵察を出すが、彼らは酒場でカイオアとオバニオンが遭遇。乱闘となるが、そこにフェゴが現れ二人とも捕らえられてしまう。拷問を受けるが次の仕事が迫っていたので、二人に見張りを付けて残すことにするが、その間残った3人がやってきてふたりを救出する。

じっくり痛めつけて殺したいのかもしれないが、その結果手下を残すことになり少人数で襲うことになる。これは全くの愚策だ。とっとと始末して、全員で仕事をすべきだ。そもそも恨み重なるのはカイオアであってフェゴではない。

戻った一行はそこで惨殺された仲間の死体を前にする。フェゴはカイオアを追うように命じるが、ここでも戦力を分散するという愚を犯し、一人、また一人と部下たちがやられていく。最後に残ったフェゴはカイオアとの1対1の対決に挑む。

 

かなり低予算で作られた映画らしく、冒頭以外は町のシーンはなく、中盤から終盤にかけてはずっと荒野でのロケばかり。また本作はマカロニ・ウェスタンではおなじみのスペインロケをやっておらず、ローマの郊外のスタジオで撮影されている。

粗筋でも書いたが、色々と突っ込み所が多い作品。

最大の突っ込み所は、4人の助っ人だが、いずれも名うてのガンマンという設定だが、主人公のカイオアとの繋がりはなく、ただ金で雇われているだけ。一人1万ドルは確かに大金だが、誰一人としてカイオアを殺して金を奪おうなどと考えないのは疑問。4人が4人とも律儀で真面目な性格で最後まで生死を共にするというのは疑問があるし、物語としても盛り上がらない。そうするのなら、4人ともフェゴに恨みがあるという設定にすべきだった。フェゴの手下を罠にかけるシーンも、もう少しバリエーションがあればよかった。

カネが結んだ仲のはずが、いつの間にか強い友情に

 

また、モンゴメリー・フォード(面倒だからこれに統一する)の演技も単調で、余りフェゴへの恨みが感じられない。逆に仲代達也のふてぶてしさの中に、少し憂いを秘めたような演技の方が印象に残る。ただそれは印象に残るというだけで、特にいいという訳ではない。この役なら、にやにや笑いながら平気で人を殺す様な恐ろしさがある方が良かったと思うが。