タイトル ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ

公開年

2023年

監督

エマ・タミ

脚本

スコット・カーソン セス・カデバック エマ・タミ

主演

ジョシュ・ハッチャーソン

制作国

アメリカ

 

本作は、PC、及びスマートフォン用のホラーゲームである同名コンピュータゲームシリーズを原作としたホラー映画。2015年にワーナー・ブラザース・ピクチャーズが本作の映画化権を獲得したが思うように進まず、ワーナーは後にこれを破棄することになった。その後2017年になって、2000年にジェイソン・ブラムによって設立された主に低予算ホラー映画を製作しているブラムハウス・プロダクションズが製作を務めることが発表された。

内容が以前紹介した、ニコラス・ケイジ主演の「ウィリーズ・ワンダーランド」と似ているが、特に訴訟沙汰にはなっていないので、あくまで元ネタの一つといったところ。実際に見ると、設定に類似点はあるものの、キャラクターの造形やコンセプトは全くの別物と言えるし。むしろ本作が「ウィリーズ・ワンダーランド」を参考にしているような部分も見受けられる。

叔母はアビーに支払われる補助金を狙っているようだが、マイクには支払われないのか?

 

主人公のマイクは、モールで警備員の仕事をしていたが、ぐずる我が子を親が強引に連れて行こうとしたのを誘拐と勘違いして、父親をボコボコにしたことから失業する。彼は、弟が目の前で誘拐された過去があったのだが、それにしてもボコりすぎ。すでに両親は他界し、妹アビーの親代わりとして生計を立てるため必死に仕事を探す彼は、廃墟となったピザ・レストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の夜間警備員として働くことに。

「モニターを監視して誰も施設に入れない」という簡単な仕事のはずだった。仕事に就いたマイクは、地元の警察官のヴァネッサと知り合うが、どうも彼女は何か隠している様子。

その頃アビーの親権を狙う叔母が彼を失業させるため、施設にベビーシッターの兄たちを送り込み、盛大にぶち壊そうとするが、突然施設のマスコットだったアニマトロニクスが動き出し、侵入者たちを血祭りにあげる。ここが本作の数少ないホラー要素だが、何ともあっさりと終ってしまうのが残念。

そんな事をつゆとも知らぬマイクは、ベビーシッターが来ないのでアビーを連れて深夜勤務に就く。その前にヴァネッサが「施設に泥棒が入った」と知らせに来るが、何故か殺されたシッターたちは見つかっていない。後で死体は無造作に転がっていたので、これは警察の捜査ミスだろう。というか、この件でひょっとしたらヴァネッサは架空の存在ではと疑った。

居眠りをしたマイクが目を覚ますと機械仕掛けのマスコットたちが眼を怪しく光らせながら自ら動き出す姿を目撃。しかし、彼らはアビーと仲良く遊んでいるのだ。事の成り行きに理解が追い付かないマイクだったが、マスコットたちはアビーを彼らの世界に連れていこうとしている事に気が付くのだった。というのが大まかな粗筋。

「やばい。俺変なとこに来ちまった!」

 

原作のゲームをしたことが無いので、ちょっと調べて見ると。映画でも舞台となった80年代に廃業したピザ・レストランに夜間警備員として午前12時から6時までの間勤務する主人公が、警備員室から一歩も動かず、ライト・監視カメラ・扉を駆使して襲い来るアニマトロニクスから生き残るという内容。単純だがそれだけに飽きずに何度もやれるようになっていると思うが、本作にはそうした要素は全くない。そもそも主人公は警備員室からしょっちゅう動いているし、映画のヒロインポジションのヴァネッサは映画オリジナルキャラ。ただ彼女の役割は、この施設の曰く因縁の説明役といったところで必要かと言えば特に必要はない。演じているエリザベス・ライルは現在32歳で、80年代に閉鎖されたこの施設に子供のころ来た事があるとすると、年齢が合わなくなるので彼女自身も霊的な存在かと思ったが、そんな事もなかった。

何か知っている様に見えて、実は何も知らなかった人

 

ゲームでも主人公であるマイク・シュミットは、ゲームではプレーヤーなので顔すらはっきりとは出さないようで、映画化にあたりキャラの掘り下げが行われ、幼いころに弟を目前で誘拐され、そのトラウマゆえに夢の中で犯人を探ろうとしているという設定が追加されているが、肝心のこの謎も解明されていないし、妹を叔母に取られそうという部分は、なくても映画は成立する。また、アビーが描く絵がピザ屋の出来事とシンクロするというのも、あまり生かされているとは言い難い。

ゲームだと、ここだけで物語は進む

 

本作はホラー映画としてのピークは中盤の、叔母にそそのかされたシッターたちが、ピザ屋に乱入してアニマトロニクス達の返り討ちにあって全滅するところで、それ以降はホラー映画としての見せ場はほぼない。肝心のアニマトロニクス達もアビーだけでなく、マイクやヴァネッサとも仲良くなり、一気に映画はファンタジー風味となる。終盤ようやくホラー色が出だすが、餌枠がバッタバッタと殺されるようなこともなく、かといってゲームのように警備員室に立てこもって、アニマトロニクスの襲撃を必死で防戦するという事もない。そうした見せ場と言うものが無い状態でずるずると最後まで続いてしまう。それとよく分からないのが、後半マイクの家に1体が出現するが、どうやって移動したのか不明。帰る時はアビーとタクシーに乗っているので、瞬間移動できるわけではなさそうだ。

不気味な人形が襲い掛かり、主人公らが激しいサバイバルを繰り広げるような映画と思ったら、肩透かしを食らうこと必至。そもそもラスボスが何をしたかったのかよくわからず、ひどくもやもやした気分のまま見終わることになった。