タイトル メリダとおそろしの森

公開年

2012年

監督

マーク・アンドリュース ブレンダ・チャップマン

脚本

ブレンダ・チャップマン アイリーン・メッキ

声優

ケリー・マクドナルド

制作国

アメリカ

 

10世紀頃のスコットランドを舞台とする。ピクサー映画初の古来からの伝承をもとにしたアニメーションであり、ピクサー史上初となる人間の女性を主人公にした作品。その意味ではディズニープリンセスモノの一つと呼べるが、本作では王子様と恋に落ちることもだれかと結ばれることもない。ただ本作には、他のディズニー・プリンセスと違い、原作が存在せずメリダをはじめとする登場人物たちは、すべてオリジナルキャラとなっている。

ビジュアルが日本人好みでなかったせいか、日本での人気はいまいち

 

映画の舞台は約千年前のイギリス・スコットランド。ダンブロッホ王国の王女メリダの誕生日のガーデンパーティーの最中、巨大な熊モルデューに襲われてしまう。この時は父のファーガス王の奮戦で撃退できたが、この際王は左足を食いちぎられてしまう。

その後メリダはすくすくと成長するが、お転婆な性格で弓の名手であるので、メリダを立派な王女にしようとする母エリノア王妃は、日頃から厳しく接していた。

エリノア王妃は3人の領主とその息子たちを城に招き、最も優れた武勇を示した息子をメリダの夫にしようとするが、勝手に決められ怒り心頭のメリダは競技会に乱入し、自分自身が優勝してしまうのだった。

現代の視点では、みんなメリダに喝さいを送るところだが、時は1000年前のスコットランド。当時はまだ、狂暴なヴァイキングをはじめ数々の脅威があり、国中が結束する必要があった事を想うと、単純に喝采を送れない。

エリノア王妃は当然激怒2人の口論が始まる。メリダは王妃が丹精込めて手作りしたタペストリーを剣で一裂きする。怒った王妃はメリダの弓を暖炉に放り込んでしまう。悲しんだメリダは、愛馬アンガスに乗って城を飛び出すのだった。途中で不思議な「鬼火」に導かれ森を進んでいくと、森の奥で魔女の家に遭遇する。そこで、メリダは母の考えを変える魔法を注文するが、魔女の用意した魔法のケーキを一口食べたエリノア王妃は、大きな熊になってしまう。

流石にこのタペストリーの件は引いたし、その後の母を変えるため魔法に縋るのもいただけない。おまけに事あるごとに「私は悪くない」と繰り返す。「いや、あんたのせいだよ!」と突っ込みたくなる。コミカルに描いていたので、あまり深刻な感じはしないが、実写なら相当メリダは観客のヘイトを集めそうなキャラだ。

ファーガス王はモルデューに左足を食い千切られたため、全ての熊を憎んでいたので、何とか城から王妃を連れ出そうとする。弟の三つ子に協力してもらい、密かに母を連れ出すことに成功。メリダが魔女の店に辿り着くと伝言が残されており、魔法を解く手掛かりは内容が抽象的で具体的に何をすればいいのか分からず、ただ「二度目の日の出を迎えると魔法が永遠に解けなくなる」という事から、二日目を過ぎると王妃は元に戻れなくなる。

翌日、朝食を用意するメリダが川で鮭を射ったことを切っ掛けに、2人は夢中で川の鮭を取り始める。最初は王妃は鮭を焼いて食べていたが、本物の熊のように生で齧り始めやがて本物の熊のようになり、メリダにももう少しで襲い掛かるところだった。メリダの呼びかけで何とか王妃の意識が戻ると、2人の前に再び「鬼火」が現れる。導かれるまま荒れ果てた大昔の城跡に辿り着く。

穴に落ちたメリダは、そこにモルデューがいた。メリダはモルデューが魔法使いが話していた、強さを求めた王子であることに気付く。母と協力して逃げ延びたメリダは、剣で裂いてしまったタペストリーを修復すれば魔法が解けると考え、城に急ぐ。

城内ではファーガス王と3人の領主達が誰をメリダの夫にするか一触即発の状態。メリダは母が自室へ向かう時間を稼ぐために、絆の尊さと大切さを訴える。その話に感動した一同は、争いをやめるのだった。というか、そもそもはあんたの我儘から始まったんだけどね。

解決を祝して宴に向かった隙をついて2人は王妃の自室に入ると、またしても王妃が熊になってしまう運悪くそこにファーガス王までやってきて事態は最悪の瞬間を迎える。というのが大まかな粗筋

本作は世界中で5億3000万ドルものヒットを記録したが、日本では10億円弱と振るわなかった。前の「カーズ2」が30億円、次の「モンスターズ・ユニバーシティ」が89億円と本作だけ、ポッコリ穴が開いているように下がっている。確かにそれまでのピクサーと比べると、暗くやや大人向けで、メリダもあまりかわいらしい見た目をしていない事もあるのだろうが、随所にジブリの「もののけ姫」との類似点があったことから、ネガティブな風評があった事も大きいのではと思っている。ただせいぜい参考にしたぐらいで、私はあまり気にならなかった。それよりも前述したが、メリダの身勝手な性格も災いしたのではないかな。現在だとメリダは近代的な考えを持った自立した女性に見えるが、舞台は10世紀ごろのスコットランド。それに解決したとはいっても、それは3人の領主が物分かりがい良かったからで、別の価値観を見出したわけではない。それではどんな変化があったかと言えば、それは母娘の喧嘩が収まり、娘が多少成長した程度。我々がディズニー・プリンセスに求めるモノとは違った話になったように思える。

あまり魅力的とは言えないメリダだが、日本語版だと当時AKB48にいた大島優子がヒロインのメリダの声をやっている。明らかに話題性を当て込んでの起用だが、子役時代から演技経験があるせいか、意外とよかった。俳優にも顔出しの演技は良くても、声だけだと全くダメという人もいる中では、山路和弘や塩田朋子、郷田ほずみらベテランに交じってなかなかの健闘だったと思う。

 

本作のエンディングでは、2011年に死去したスティーブ・ジョブスへ、追悼が捧げられているが、これはジョブスがピクサーの創業者であることに由来する。