タイトル サスペリア・テルザ 最後の魔女

公開年

2007年

監督

ジェイス・アンダーソン ダリオ・アルジェント ウォルター・ファサーノ

脚本

ダリオ・アルジェント

主演

アーシア・アルジェント

制作国

イタリア・アメリカ

 

絵画修復の技術を学ぶためにアメリカからローマへやってきた研究生・サラ。彼女は博物館に運び込まれた発掘物の壺を調べていたが、それは“母の涙”と呼ばれる邪悪な魔女の遺物だった。魔女たちが解き放たれてしまい、周囲の人々が次々と殺されていく。

「サスペリア」、「インフェルノ」に続く、魔女3部作の完結編。魔女と主人公の因縁、残酷でグロテスクな描写、女性たちの美しさと裸体など、つぼにはまる要素が散りばめられている。ダリオ・アルジェントだからストーリーは期待しておらず、鮮血を中心とした鮮やかな色彩日や、巧みに練られた構図。そして、エロティックとグロテスクを巧みに織り交ぜた構成に期待したのだが、前者の二つは期待外れ。後者の二つはそれなりにあったがやはり期待外れという結果に。2000年以降の作品は、明らかにパワーが落ちていいるように感じたので、ある意味予想通りだったかな。

イタリアのヴィデルボの墓地の工事現場で「オスカー・デ・ラ・バレー 1815年」と刻まれた、古びた櫃と遺品入れが発見される。遺品入れは司教が預かることに。その後ローマ 古代美術館に件の遺品入れが送られ鑑定されることになる。職員のサラと同僚のジゼルは遺品入れを開けてしらべはじめると、刃物で指を傷つけてしまい、遺品入れに血が注がれる。ホラー映画で遺品や遺物に血を注ぐとろくなことにならないが、ジゼルは突然現れた黒いフードをかぶった女に殺され、ゴブリンのような化け物が現れ何度もその遺体に探検を突き刺す。その現場を目撃したサラは驚いて逃げ出す。途中つかまりそうになるが、突如頭に響く女の声に導かれ、難を逃れる。警察に通報するが、彼女の証言に警察は半信半疑、というかかなり彼女を怪しんでいる様子。そこに館長のピアースが現れ家に泊めてもらう。この時点で二人の関係はお察しで、その夜はそんなんことになる。

翌日ピアースとサラは送った司教の元に向かうが彼は卒倒し意識不明となっていた。若い神父はピアースたちに棺桶に書かれていた名前「オスカー・デ・ラ・バレー」についての古い逸話を語る。この日を境にローマでは次々と異変が起こり、暴力が日常を支配するようになる。

ピアースは若い神父から遺品入れの中身のリストを受け取り、ローマへ戻るが、彼をゴス系のファッションに身を固めた2人の女がじっと見ていた。その後、サラが外出からピアースの家に戻ると、ピアースの息子ポールが誘拐されていた。警察に行くように勧めるサラに悪魔祓い師であるヨハネス神父に会いにいくとサラに告げるが、彼の前に再びゴスロリファッションの女が出現する。そのあとなんやかんやあってサラもヨハネス神父を訪ねる事にするが、そこでマルタという降霊術師の女性と会う。彼女はサラの母の事を知っていた。サラの頭に響いた声は、今は亡き母親・エリザだった。マルタは錬金術師のグリエルモと会うように勧める。それからもなんやかんやあって、グリエルモと会い、なんやかんやあって魔女に心酔した建築家の残した建物に向かい、そこで涙の母と呼ばれる魔女と対決することになる。と言うもの。

と、ここまで書いたが、最初に書いたのはこの3倍ぐらいの長さでさすがに長すぎて、相当端折ってさらに突っ込み所やボケなどもすべて削除して、ようやくこの長さになった。いや、この映画そんなに長くないのに、色々な人に会って話を聞かないと真相に辿れないから、無駄に話が複雑すぎるし登場人物も多すぎる。誰か一人に整理して、警察と魔女軍団に追われるサラの逃避行を主軸に据えれば、スリリングで面白い話になっていたはずなのに、実に勿体ない。ラストの涙の母との対決なんて、ギャグとしか思えないほどあっさりと決着がついたから、呆気にとられてしまった。

ダリオ・アルジェント80年代ぐらいまでは、独自の美意識や構図から天才的とさえ思われていたが、今世紀に入って妙に通俗的になってしまった。アルジェントが普通の映画を撮ったら、物語を分かりやすく解説することが苦手だから、凡庸な映画になってしまう。本作はその好例だと思う。

何より復活した魔女たちが、普通に飛行機に乗ってローマにやってくる場面。最初見たときは魔女とは思えなかった。別にほうきに乗れとは言わんが、飛行機に乗るならプライベート・ジェットみたいなのから颯爽と降りてきたらかっこよかったのに。ちなみにこの中にいたリーダー格を演じたのが日本人の市川潤。イタリア語にフランス語。英語も話せるバイリンガルで2003年に、エルマンノ・オルミ監督の映画「屏風の陰で歌いながら」の主役チン・シーこと中国の伝説的な女海賊の首領、鄭一嫂を演じ注目される。現在ではイタリアでは人気があるという。

主人公のサラには監督の娘、アーシア・アルジェントが演じた。彼女の演技には特に問題はないが、本作はそれ以前に問題だらけなのが難しいところ。

本作で一番盛り上がったのは、ラストの死体と汚物まみれの下水に漬からされるアーシア・アルジェント。その鬼畜なまでの変態っぷりは老いても健在。まあ、必要かと言われれば必要ないんだけど。