タイトル 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

公開年

2024年

監督

福田己津央

脚本

両澤千晶 後藤リウ 福田己津央

声優

保志総一朗

制作国

日本

 

本作は、新たなる「ガンダム・サーガ」のはじまりとして企画された「機動戦士ガンダムSEED・シリーズ」の劇場版で「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の2年後であるC.E.75年を描いたアニメーション映画作品。

「機動戦士ガンダムSEED」は、ファンに熱狂的に迎えられ宇宙世紀に続く新たなシリーズに核となる事が期待されたが、続編の「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」でまさかの失速。失速したというより、監督とメインの脚本家が暴走して物語が収拾つかなくなったというのが正しい様だ。その為劇場版は、波乱万丈の運命をたどることになる。

本作は人間味のあるラクスが見られる。特に後半はまさに田中理恵劇場

 

まだ「DESTINY」の放送終了後の2000年代後半に「劇場版 機動戦士ガンダムSEED(仮題)」として告知。しかしその後鳴かず飛ばずで、ようやく2021年5月28日に始動した放送20周年記念プロジェクト「GUNDAM SEED PROJECT ignited」で制作が再告知された。その後、2023年7月2日には正式タイトルが「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」として公開日が2024年1月26日になることが発表された。時系列で見ると2009年あたりから2020年ぐらいまで、約10年余りにわたって制作は中断していた事になる。よくぞ復活したなと感心するが、昨今ガンダムのメディア展開の成功が、後押しになった面はあるだろう。やはり金にならないと企画は通らないのだよ!ディズニーさん。

立場は違えど二人は今でも親友。このシーンはムネアツ!

 

本作の世界観は、先の大戦の末期、「デスティニープラン」を掲げ、世界各国への導入を迫ったプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの野望が阻止されてから2年を経たC.E.75年。地球連合からの独立を目指す小国や、コーディネイター排斥を企む「ブルーコスモス」によるテロ活動など、地球ではいまだに争いの火種がくすぶっていた。

そうした中、地球連合の主要国である大西洋連邦と中立国のオーブ連合首長国、そしてプラントは共同で世界平和監視機構コンパスを創設。その初代総裁に先の大戦で大きな役割を果たしたラクス・クラインを選んだ。彼女がいるという事は、キラ・ヤマトたち元地球連合軍所属のアークエンジェルクルーは勿論、シン・アスカたちザフト軍兵士など多様なメンバーが集い、紛争解決にあたるがなかなか収まらず鼬ごっこ。そうした中、キラは戦いは自分が当たり他の者には支援をさせていた。すべて自分がしょい込もうとするその態度は、彼を疲弊させたばかりか、戦友たちともしっくりいっておらず孤立しがちだった。

「あんたその女はやばいからやめとけ!ほら、言わんこっやない!」

 

そんな時、ユーラシア連邦から独立した新興国ファウンデーションから、ブルーコスモスの首謀者がユーラシア連邦との国境に潜伏しているとの情報がもたらされ、ユーラシア連邦に向かい、女王アウラ・マハ・ハイバルや宰相オルフェ・ラム・タオらと、ブラックナイトと呼ばれる親衛隊ブラックナイトスコードと共同作戦を行う。場所から旧ロシアにあったと思われるが、やはりあの戦争でロシアは疲弊したのか?それと、アウラ女王は幼く見えるが実は50歳を超えていて、デュランダルのデスティニープランに携わり、そこでの経験でコーディネイターを超えるアコードの創造を目指してオルフェたちを生み出した。「争いを辞めさせるため」等と御大層な事を言っているが、要は自分が君臨するデストピアを作りたいヤベー奴だ。

若い頃は年相応の見た目だったのになぜ幼女化したかは不明。まさかアポトキシン4869か?

 

ブラックナイツの策略でキラは、敵指導者の追跡に執着するあまり、作戦前のユーラシア連邦領内への領空侵犯をしないとの協約を破ってユーラシア領に侵入。戦果を拡大させてしまう。実はアコードは一種のテレパシーがあり、他者の思考を読むばかりか、相手を洗脳して操る事が可能だった。そのどさくさにブラックナイツはユーラシア連邦からファウンデーションへ核攻撃をしたように工作。アウラ女王とオルフェはラクスを拉致同然に連れ去り、宇宙に逃れた。作戦に参加したコンパスの部隊は、ブラックナイツの攻撃で次々と打ち破られ、アークエンジェルも沈んでしまう。アウラ達アコードはナチュラルは勿論、コーディネイターですら下等に見ていたが、自分達だけでは戦力不足なので。プラントの強硬派に働きかけて利用している。ファンデーションに潜入したアスランは、自国民を平気で殺すファンデーション国軍の姿を見ているが、それを探るきっかけはガガリから依頼されたもので、その顛末は特典の「二人の逃避行」の中で描かれている。

こう並ぶと「こいつ、裏切るな」というのがだいたいわかる

 

宇宙に逃れたアウラたちは、先の大戦で壊されたハズのレクイエムを密かに再建しており、ユーラシアの首都モスクワが廃墟と化した。その上でデスティニープランの復活を宣言し、全世界に服従を強要した。デュランダルといい理想主義者ほどやばいものはいない。

その頃死んだと思われたキラを始めとするコンパスの隊員たちは生きていた。アスランから事の真相を聞いた一同だったが、肝心のキラはラクスに去られ(たと思っていて)意気消沈。そんなキラと喧嘩することで奮い立たせるアスラン。自分が何を果たすべきかに気が付いたキラは、ラクスを救出するため立ち上がるのだった。というのが大まかな粗筋。

今回も不可能を可能にしたが、さすがに疲れたご様子

 

当時私は、ガンダムへの興味を完全に失っていたが、「機動戦士ガンダムSEED」との出会いで、熱狂を取り戻す事が出来た。魅力的な登場人物に、作り込まれた世界感。そしてオリジナルのデザインを生かしつつも近代的にリファインされたカッコいいモビルスーツたち。どれをとっても面白く、たちまち夢中になったものだ。これにより新たなガンダム・サーガは始まると誰もが思っていたし、続編は歓喜の声をもって迎え入れられた。しかし続編の「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」は出だしこそまあまあだったが、次第に暴走と失速することになる。特に主人公、シン・アスカが途中でヴィランの立ち位置に座り、前作の主人公キラ・ヤマトが主人公に座るという迷走は、ファンを大いに困惑させることになる。結局「SEED」は新たなサーガを構築することなく、劇場版は頓挫。静かに終了したかと思われた。それが復活したのだから全く分からないものだ。細々とでも企画は続いていたのだろう。ただ、劇場版が作られると聞いても、正直ピンと来ずあまり興味がわかなかったのも事実。

こうやって登場した奴がいい奴だったためしはない

 

ストーリー展開は強引だし、整合性がきちんととれているとは言い難い。あのブルーコスモスのテロリストはいったいどうしたんだよ!しかし、そうした欠点を補って余りある魅力がある作品だ。それは。「魅力的な登場人物に、作り込まれた世界感。そしてオリジナルのデザインを生かしつつも近代的にリファインされたカッコいいモビルスーツたち」

これはファンが望んでいるガンダムに他ならない。ファンにとって、他の事はどうでもいい。旧作のキャラ達にもちゃんと見せ場が用意されているし、新キャラはほぼ悪役だが「殺しても構わない」程度に憎たらしいのがいい。最近悪役に過度に感情移入する設定を持ち込むことが多いが、どうせ最後に殺す奴なら不要だ。

ラストカットが無かったので、これでご容赦を

 

本作では、特にアスランが良かった。旧作では優柔不断さや、ヘタレっぷりからすっかりいじられキャラとなってしまったが、本作では久々にかっこよさを取り戻している。まあ、ガガリとのアレはナニだが、ある意味アスランらしい。それを察したカガリの反応も。前作では別れた二人だが、ERを見ると今後の展開によっては進展がありそうだ。そしてシンの心にはまだステラが残り、それが闇となっている事も判明。ぞわっと来るが、ルナとのやり取りを見るとうまく共存している様子。前作のお笑い担当アーサー・トラインもそれらしい活躍。ただ、主要キャラの中ではアンドリュー・バルトフェルドが出番がほぼないのが不満だが、後半のクーデター鎮圧のシーンで、一瞬だけ映っていた。ひそかに潜伏して機会をうかがっていたようだが、これもバルトフェルドらしい。

本作最大の笑わせポイント。ただでさえ笑えるが更に...

 

それに前作に引き続き、ラブコメ要素も全開。キラとラクス。シンとルナは終始いちゃいちゃしている。そもそもラストのラクスのパイロットスーツは何だ!けしからん!もっとやれ!!もっとも、えっ!な描写でお茶の間を凍り付かせるのも「SEED」の特徴なので、しっかりと歴史は受け継がれている。

欠点はあるけど面白い事に変わりない。かなりヒットしているようなので続編はあるだろうし、テレビシリーズも企画され、今度こそ本当に新たなガンダム・サーガが紡がれるかもしれない。

ストライクフリーダムガンダム弐式。ただでさえ強いが、プラウドディフェンダーと合体すれば無敵!ただ、キラとラクスが仲良くなければ実力を発揮できない。これからキラ達と敵対しようとするものは、二人にハニートラップを仕掛ける必要がある。えっ?二人はラブラブって?それじゃあ、打つ手なしだな。