タイトル 悪魔のいけにえ

公開年

1974年

監督

トビー・フーパー

脚本

キム・ヘンケル トビー・フーパー

主演

マリリン・バーンズ

制作国

アメリカ

 

本作は、殺人鬼レザーフェイスの恐怖を描いた事で、その後のホラー映画に多大な影響を与えたばかりか、様々なサブカルチャーにも影響を与えた、ホラー映画の金字塔。トビー・フーパーが初めてとった商業映画。監督は、これが商業映画初作品として知られる。

公開時に「実話をもとにした」というコピーが広く流布したことから、墓場から死体を盗掘し、その死体の皮膚や骨を使ってモニュメントを作った、エド・ゲイン事件をモデルにしたと言われるが、トビー・フーパー自身は「子供の頃に叔父から人間の皮でランプシェードを作った男の怪奇譚何度も聞かされ強く印象に残っていた」程度であり、本作との直接的な影響はないと語っているから、偶然似たのが真相なようだ。

映画が完成した後も、なかなか配給が決まらなかったが、ようやく独立系の配給会社ブライアンストン配給会社での公開が決まり、巧みな宣伝もあって大成功。しかし、この会社はマフィアともつながりがあるなど、色々と問題のある会社でなかなか当初の契約通りに利益を渡さず訴訟沙汰となったが、判決が出た頃は倒産していたという、ある意味映画以上に怖い事になっていた。

大急ぎで撮ったにしてはカット割りや構図は見事

 

映画は事件や事故などの不穏なニュースのナレーションが流れ、その中にテキサスで墓泥棒が横行しているというニュースがでる。テキサスの祖父の墓があるサリーとフランクリンは祖父の墓の安否を確かめるため、帰省がてらやって来る。一行はサリーとフランクリン兄妹以下、ジェリー、カーク、パムの5人。フランクリンは足が悪く車椅子。ジェリーとサリー。カークとパムは恋人と言う関係。とりあえず祖父の墓の無事を確認した一行は、祖父の家に向かう途中でヒッチハイカーを広いが、そいつがとんでもない奴で、勝手にポラロイド写真を撮って売りつけようとしたばかりでなく、買わないと知るや車内でその写真を燃やし、更にはフランクリンに切りつける。車から追い出されるが、後で何かの印のようなものを付けている事が判明。その後、ガソリンスタンドで給油しようとするが主人は「ガソリンはない」と言われ、仕方なくそのまま祖父の家に到着するが、長年放置されていたので廃屋。

ここまで、この5人の少々奇妙な関係が浮き彫りとなっている。サリーとフランクリンが兄妹だが、フランクリンは少々我儘で幼稚な性格なせいか、二人はあまり関係は良くない様子なのが見て取れる。

川遊びに行ったカークとパムは、隣にある家を発見し、ガソリンを分けてもらうために出かけるが、突然、チェーンソーを持った人の皮で作った不気味なマスクをした大男が出現し、二人ともあっさりと倒されてしまう。更に、二人を探しに来たジェリーも撲殺される。

待てど暮らせど帰ってこない3人にしびれを切らせたサリーは、フランクリンと探しに行くが、その目の前にチェーンソー男が出現。あっという間にフランクリンが殺され、サリーだけ必死で逃げ、ようやくガソリンスタンドに到着し、主人になんとか匿われた。

キャラの深堀りがされていないところに恐怖を感じる巧みな演出

 

大方の予想通り、彼は大男の仲間。だって、あのガタイのいい男が、ドアを閉めたぐらいで入って来ないんだもん。バレバレ。そしてサリーがめでたく拉致されて、大男のいた家に向かう途中で、あのヒッチハイカーを拾う。なんと彼の仲間だった。まあこれも印がついていた時点で、何となく察しがついたが。

そしてこの家には、もう一人グランパと言う老人がいるが、設定年齢124歳で、若い頃はブイブイ言わせていたが、今ではよぼよぼの老人。ガソリンスタンドの男が長男で、ヒッチハイカーは三男。レザーフェイスは4男。「次男いないやん」と言われるかもしれないが、実はヒッチハイカーは双子で、この時はベトナムに従軍中だったらしいことが、続編で明らかとなる。という事は、この一家も住民登録されているという事か。私は郵便配達なら、この家に召集令状は持っていきたくないが。

本作は、それから80年代にかけて迎えたスラッシャー映画の絶頂期の先駆けとなり、現在見ても古臭さを一切感じさせない新鮮な驚きを与えてくれる、まぎれもないホラー映画の名作だ。残虐シーンばかり指摘されることが多いが、実はゴアシーンの直接描写は控えめ。チェーンソーでの切断シーンは全く映像として移されない。その一方で、複数用意され場面場面によって使い分けられたレザーフェイスや、ガソリンスタンドで焼かれる肉が人肉らしい事が分かるシーンなど、不気味で不快さを感じる演出で残酷さを表現している。

 

配給会社とのトラブルから、当初儲けそこなったが、2006年9まで、世界中で総額60億円以上の配給収入を上げている、キラーコンテンツとなっている。

過激なグロテスクシーンも存在しないため、「怖い映画を観たいけど、グロテスクなシーンは苦手」と言う方にも、オススメできる作品となっているのは皮肉。食わず嫌いにならずに、是非とも見ていただきたいが、チェーンソーを振りかざして追いかけてくる、レザーフェイスはトラウマになるかもしれない。