タイトル リング ~ 事故か! 変死か! 4つの命を奪う少女の怨念

公開年

1995年

監督

瀧川治水

脚本

飯田譲治 祖師谷大蔵

主演

高橋克典

制作国

日本

 

本作は、フジテレビ系金曜エンターテイメントの枠で2時間スペシャルドラマとして制作された。その後映画化され、日本のホラー界に多大な影響を与えることになる鈴木光司原作の「リング」が、最初に映像化された作品が本作だ。

映画版と異なり、高山の設定などごく一部分を除けばほぼ原作に忠実に作られている。また、純粋なホラーとして作られている映画版と異なり、謎解きと言ったミステリー要素が強い原作を踏襲しミステリーの面が重視されているのが特徴。

主人公浅川役には高橋克典。そして高山に原田芳雄と主人公を女性にした映画よりもこちらも原作通りとなっている。この二人に加え、山村貞子は映画版で描かれた「長髪を振り乱し、クネクネと動きながら迫ってくる異形の怪物」ではなく、原作どおりに両性具有の美少女として描かれ、悲劇的な運命故に世を呪うようになった薄幸の女性という経緯も原作通り。演じた三浦綺音は、はかなさの中にも妖艶さを秘めた貞子を見事に演じた。後半では、その見事な肢体を惜しげもなく披露し、人気となった。

最初に貞子のえじきとなる雛形あきこ。若い!

 

女子高生の智子が怪死を遂げるところから始まる本作。この智子を演じているのが、当時はまだ無名だった雛形あきこ。その為彼女は映像化作品で、貞子に殺された最初の犠牲者と言う名誉?を授かることに。同時刻にタクシーで帰宅中の浅川は、突然もだえ苦しんで怪死するライダーに遭遇。智子は姪だったので調べると、あと二人同時刻に怪死しているカップルがいた事が判明。同時刻に4人の若い男女の怪死に疑問を持った浅川は独自に調査を進めると、4人が伊豆の貸別荘に泊まっていたことを突き止める。別荘を訪れた浅川は、そこで1本のビデオデープを発見する。ビデオを見るとそこには意味不明で奇怪な映像が収められ、最後に死の宣告がなされている。しかしその呪いを避ける方法は、他の映像が上書きされ消されていた。

この映像だが、その後の映画版と異なるもののかなり手が込んでいて、不気味さを漂わせている。

浅川は大学哲学科講師・高山に相談する。実は浅川が左遷されたのは高山が原因だったのだが、背に腹は代えられないといったところ。原作だと二人は同級生と言う設定だが、さすがにその設定はオミットされているようだ。

高山もビデオを見て、これが本物であることを見抜き、二人は死が訪れる前にその呪いの謎を解くべく調査を進めるが、思ったように進まない。何とか大島三原山にかつていた超能力者の山村志津子の娘、貞子が関わっていることまで行きつくが、浅川は残り少ない時間を妻と過ごしたいと調査を断念する。しかし、浅川の妻で妊娠中の静がビデオを見てしまう。妻とまだ見ぬ娘を助ける為に、浅川は伊豆大島へ向かう。

高野舞は浜田万葉が演じる。ラストから「らせん」の映像化も考えられていたようだが、結局実現せず

 

貞子は山村志津子と大学精神科の助教授である伊熊平八郎との間に出来た娘であることが判明。彼女はかつて東京の劇団で女優をしていたが、同じ劇団員から彼女は伊熊と関係があった事を聞き出し、伊熊が入院をしていた病院の医師、長尾に犯されそうになるが彼女が両性具有であることを知り、恐怖から井戸に突き落とし殺してしまった。その怨念により、ビデオに「念写」されたものだった。二人はその井戸が、事件の発端となったあの貸別荘の真下にある事を突き止め、彼女を供養すれば呪いが解けると考え現地に急行する。と言うのが大まかな粗筋で、90分の中にうまく複雑なストーリーを纏めている。

熱さと冷静さ。若さと老練。純真さと達観。この二人の対比がいい!

 

主演の二人、高橋克典と原田芳雄はいずれも好演。熱血漢で純粋な高橋と、一癖ありげでそれでいてこの事件を面白がっている様子の原田の対比が生きている。それでいて最後、すべてを悟り運命を受け入れる高山に対し、妻子の為に新たな犠牲者を探す浅川の怖さ。ある意味本作は、呪いよりも人が怖い系の作品と言える。

そして山村貞子を演じた三浦綺音の存在が、本作に強烈なインパクトを残している。彼女のはかなげでありながら、妖艶な怖さも併せ持った雰囲気から、恐ろしい呪いを後世に残した事に、納得できるビジュアルとなっている。今やアイコンと化していて、ギャク化している貞子だが、これには映画版の中田秀夫監督の手腕が大きい。本作の様なビジュアルだと人気は続かなかっただろうが、神聖さは完全に消し飛んでしまったのは残念。いまだにスピンオフが量産されている貞子だが、一度でいいから原点回帰して欲しと願っている。

はかなさと妖艶さが悲劇の美少女と言った雰囲気を醸し出す貞子

 

テレビドラマながら完成度の高い本作だが、ただ残念ながら一度VHSになっただけで、その後一度もDVD化されておらず、調べた範囲ではまだ配信もされていないようだ。その後の「リング・シリーズ」から完全に浮いた存在なので、今更出したくないのかもしれないが、最も原作に近く完成度も高い。せめてTVerあたりで配信してくれないだろうか。このまま埋もれさせるには惜しい作品だ。