タイトル サンクスギビング
公開年 |
2023年 |
監督 |
イーライ・ロス |
脚本 |
イーライ・ロス ロジャー・バーンバウム ジェフ・レンデル |
主演 |
パトリック・デンプシー |
制作国 |
アメリカ |
本作は、クエンティン・タランティーノ監督とロバート・ロドリゲス監督がタッグを組んだ2007年の映画「グラインドハウス」内に収録されたイーライ・ロス監督によるフェイク予告編「感謝祭(Thanksgiving)」を、長編映画化したもの。同様の経緯をたどったものとして、ロバート・ロドリゲス監督の「マチェーテ」とジェイソン・アイズナー監督の「ホーボー・ウィズ・ア・ショットガン」があるが、それに続く3作目となる。イーライ・ロスと言えば、あの「グリーン・インフェルノ」を撮っただけに嫌な予感はあったが、ゴア描写が満載でその予感は的中。
アメリカではワッフルメーカーを手に入れるのも命がけ
ちなみにそのフェイク予告編がこれ。いかにも70年代のスプラッター・ホラー映画と言った雰囲気が漂い、ホラー映画ファンの心を刺激する。本作はR-18だが予告編はそれよりも、エログロ度が段違い。この16年余りの間に、規制は確実に強くなっているようだ。
サンクスギビングの2007年フェイク予告編。ちなみに本作は、この予告編の映画のリメイクと言う設定だそうな。
本作は、1500万ドルの予算に対して、現時点で4600万ドルの興行収入と大ヒットを記録し、既に続編の製作が決定している。久しぶりのスラッシャー・ヒーローが爆誕しそうだ。
映画は、マサチューセッツ州のプリマスでショッピングモールを経営する実業家トーマスの家で、保安官エリックを交え和やかに感謝祭の晩餐が行われているシーンから始まる。エリックはモールの店長ミッチの妻であるアマンダに惚れている様子。保安官が不倫していいのか?
この日、モールでは感謝祭のバーゲンセールが開催され、先着100名にワッフルメーカーがプレゼントされるが、それを目当てに店の外では大群衆が開店を今か今かと待ち構えている。Amazonで調べるとワッフルメーカーはだいたい2~3000円位。そこまで殺気立って求める程ではないと思うが、それだと映画は始まらない。
わざとらしく登場する保安官補。あまりミスリードになっていない
そこに、トーマスの娘ジェシカがBFで野球の有望選手のボビーとその友達が通りかかる。友達の1人が「携帯電話買い換えたい」とか言い出して、オーナーの娘と言う特典を生かしてこっそり従業員口から入れてもらうが、ここで一人が外にいる群衆を徴発。怒った群衆はモールに殺到しドアを破壊して店内に雪崩れ込み、阿鼻叫喚の地獄絵図となる。その混乱の中、警備員1人とアマンダが命を落とす。しかし、責任追及を恐れたトーマスは防犯カメラの映像を隠したことから結局事件は有耶無耶となり、誰も逮捕者が出ない幕切れとなってしまう。この騒動でボビーは選手生命を絶たれるほどの怪我をして行方をくらませ、ジェシカは前から自分に気があったライアンと付き合うようになっていた。
ホラーのヒロインはまじめて恋人一途だが、本作はその辺はドライ
ヒロインを演じたネル・ヴェルラークは英語版のwikiもなかったので調べたら、2000年10月19日 ニューヨーク生まれで現在22歳。2017年にテレビ番組「ブル」でキャリアをスタートさせたが、日本で公開されるような映画は本作が初めてなようだ。
1年後に町は感謝祭が迫り再び盛り上がりを見せ、あのモールでは再びバーゲンセールが行われることになる。しかし、アマンダを亡くしたミッチを始め、あの暴動で身内を亡くした人は反対の声をあげる。その頃ジェシカたちの元に、謎の人物のSNS投稿に自分たちがタグ付けされたことに気が付いた。確認すると、そこに、ジェシカたちの名札が意味深に置かれた感謝祭の食卓があった。
やがてダイナーの女店主が殺され、下半身がモールの看板に吊り下げられる事件が起きる。彼女は1年前の暴動の主犯格のひとりとされていた事から、あの事件で身内を亡くしたものの犯行と目される。犯人は、プリマスの初代知事ジョン・カーヴァーの仮面を被っていた。ここから殺人鬼の凶行はエスカレートし、暴動に恐れをなして逃げだした警備員マニーやジェシカの友人で当時店内にいたエイミーとロニーを殺害。エヴァンとギャビーは誘拐され、ジェシカにも襲い掛かるが、かろうじて逃れる事が出来た。
そこで保安官のエリックはジェシカたちと一計を案じ、感謝祭のパレードで犯人をおびき寄せようと画策する。しかし犯人は一枚上手でジェシカとその家族たちは犯人に捕らえられてしまう。ジェシカの義母のキャサリンを生きたままオーブンで焼き殺し、一家を縛り上げSNSに投稿された食卓に招くと、その前にキャサリンの丸焼きを並べるのだった。と言うのが大まかな粗筋。
ホラー映画史上、最もされたくない殺され方
B級に全振りした、80年代スプラッター・ホラー映画のテイストにあふれた怪作。元ネタのフェイク予告編よりもエログロ度は控えめながらも、イーライ・ロスらしく人間丸焼きなど容赦がなくR18も当然の仕上がり。個人的にフェイク予告編にあったヒロインがBFとキスしていたら首が…のシーンも再現して欲しかった。
正直犯人は冒頭のシーンと、突然保安官補が町にやって来るところでだいたい予想できるし、その後のミスリードもうまいとは言えず、ミステリー要素は期待しない方がいいだろう。とはいえ、本作を見るような紳士、淑女の方々はハナからミステリーなんて期待していないから、全く問題ないだろう。そもそも、感謝祭のパレードのシーンで、ミステリーは破綻しているし。
ホラーの鉄板演出。「志村!後ろ!」
それでもゴア描写大好きなホラー映画ファンにとっては、こたえられない映画。小難しい事は考えずに、頭空っぽにして楽しむべき。ただ、ゴア描写には容赦がないので、その手の映画が苦手な方にはお勧めできない。とりあえず私は、ケバブは見るのも嫌になった。
陰の主役。ジョン・カーヴァーの肖像画