タイトル パレンバン奇襲作戦

公開年

1963年

監督

小林恒夫

脚本

棚田吾郎

主演

丹波哲郎

制作国

日本

 

本作は1942年2月14日に蘭印侵攻作戦の一環として実行されたパレンバン空挺降下作戦に纏わる秘話を描いている戦争アクション映画だ。1968年に公開された「陸軍諜報33」と被る部分があるし、監督が同じ小林恒夫なので本作が参考にされたのだろう。

本作のエピソード自体全くのフィクションで、日本側もアクシデントはあったものの、完全な奇襲だったので製油施設はほぼ無傷で確保できた。この話を大きく膨らませ、事前に特殊部隊が施設に潜入して爆破装置を解体していたという、一種の潜入破壊工作物となっている。これが英国ならばスマートで適度に緊迫感のあるストーリーとなるし、アメリカならかなり力技でねじ伏せるような話となるが、日本だともっさりした感じの話になるのは何故だろうか。

映画の冒頭で大本営参謀が、パレンバン作戦を控えている空挺部隊を来訪し、油田等を無傷で確保するように無茶ぶり。役名は岸田中佐となっているが、雰囲気から辻正信と思われる。

その無茶ぶりを成功させるために、少数精鋭の特殊部隊を編成し爆破装置を解体する作戦が実行される。野尻中尉と腹心の竹内軍曹が3名の兵士を選ぶが何しろ現地は不案内。孫案時軍刑務所に収監されていた砂見がかつてパレンバン製油所の技師だったことを聞き付け、さっそく釈放させるが、本人はあまり乗り気ではない。野尻はなだめすかし脅してパラシュート降下の一夜漬け訓練を施して、同行を承諾させた。

出てくる兵器から陸自が制作に協力した様だ

 

砂見を演じるのが丹波哲郎。ただの元技師にしては貫禄あるし、態度もでかく他の軍人たちがかすんで見える。隊長の野尻に江原真二郎。竹内軍曹に織本順吉。兵士たちに今井健二。山本麟一。潮健児と今見ると豪華な顔触れ。もっとも今井健二と山本麟一が悪役、そして潮健児が特撮で名をはせるようになるのはこの後だが、それだけに貴重な映画と言える。なお江尻の同僚の空挺部隊中尉を、痩せていた頃の梅宮辰夫が演じている。

何故かエリがあるが、陸軍には礼装を除いてエリのついている軍服は存在しない

 

スマトラ降下した六人は、原地人の労働者に変装したが、オランダ兵に追跡されて現地人の村に逃げ込む。そこにオランダ軍がやってきて交戦となり、村越が犠牲になった。ちなみにこの時、村人が踊りを披露するシーンがあるが、それは日本に留学していたインドネシア留学生協会の皆さん。

敵の包囲野中製油所近くの町に侵入するが、堀江が戦死。修道院に逃げ込み砂見の元同僚のケッスラーに聞くが答えてくれない。秘密保持の為にケッスラーを射殺する砂見。と見せかけて、実は殺していなかった。

ついに精油所に潜入するが、あっさりと逮捕される一同。そこに突然の空襲が始まりその混乱を利用して逃げだす一同。刻一刻と作戦の時は迫っていた。というのが大まかな粗筋。

この頃の外国人役を一手に引き受けた感のある岡田真澄

右のシスターはフランソワーズ・モレシャン

 

設定ががばがばで、出発する時「作戦まで8時間」と言われていたのに、現地で2晩過ごしているし、潜入の手筈も出たとこ勝負。こんなとき英国映画だったら偽造身分証明書を用意するが、本作ではそんな面倒な事はしない。というより、これは現地の部隊で急造された計画で、部隊編成も計画もほとんど即興。うまく行ったらお慰みと言った作戦だ。

日本映画も多数の戦争映画を作ってきたが、こうした特殊部隊による工作を描いた映画で成功したものはあまりないように思える。どうしても特攻じみた片道切符的な作戦が多い。沖縄で義烈挺身隊による、飛行場襲撃作戦なんて特攻だったし、余り「任務を果たして生還する」という作戦は、日本人の感性に合わないのだろうか。

ただ本作は日本の戦争映画が陥りがちな、イデオロギー紛争は回避してて、その分気楽に楽しめるようにはなっている。あまり畏まらずに気楽に楽しむのがいいだろう。