タイトル 直撃!地獄拳

公開年

1976年

監督

石井輝男

脚本

石井輝男

主演

千葉真一

制作国

日本

 

本作は、「ボディガード牙シリーズ」と「殺人拳シリーズ」で世界に空手ブームを起した千葉真一を主演に迎え、忍者の末裔・拳法・空手の達人である暗殺者の主人公を演じた。華麗でスピーディ、核コミカルにアクション・空手・忍術を駆使し、国際麻薬組織の殲滅を描いた娯楽映画となっている。

監督・脚本、石井輝男の時点で不穏な空気が流れるが、本作はかなり悪乗りはしているものの、そこまでぶっ飛んだ映画ではなくそれなりのアクション・コメディ作品にとどまっている。

興行的にも大成功となり、この年の興行成績で第5位を記録。またアメリカでは「The Executioner 」というタイトルで1999年の時点で、10万本以上のビデオが売れ、アクションスターとしてのSonny Chiba(サニー千葉)の名声を高める事となる。

幼少時代の甲賀龍一を演じるは、真田広之!

 

映画は元警視総監・嵐山の元に姪の恵美が2人の男の調査報告書を届けるところから始まる。

甲賀忍法宗家第二十四代の嫡子で貧乏探偵事務所の所長、甲賀龍一。元警視庁麻薬課刑事で今ではヤクザの殺し屋をやっている隼猛。元日本伝合気道場の師範で死刑囚の桜一郎。

手始めに甲賀に桜を脱獄させ、3人そろったところで、嵐山は重大な仕事の依頼をする。

隼と嵐山は国際麻薬密輸組織の捜査中に、多くの刑事が殉職させ辞任に追い込まれていた。そこで、3人で国際麻薬密輸組織を撲滅させようと目論んでいたのだ。最初は断るも、「盗んだ麻薬は好きにしていい」という条件に、ホイホイと参加を表明する甲賀と桜。甘いんねえ。と思っていたら、甲賀は麻薬の横取りを企んでいた。流石、千葉ちゃん。

本作、甲賀に千葉真一。ハヤブサに佐藤允。嵐山に池辺良。恵美に中島ゆたかと豪華。さらに麻薬組織のボスは津川雅彦。隼の後輩で拳法の達人に倉田保昭。チョイ役で室田日出男や安岡力也というメンツ。この頃の映画の出演者はすごい。

組織は某国駐日大使の娘・マーガレットが口がきけないことを利用して、日系人実業家・マリオ水原の情婦にして、彼女が持つ外交官特権を使って麻薬の密売をしていた。水原の山荘に隠匿し、密売のパーティを開いて売買する手口をとっていた。

マリオ水原を演じるのは津川雅彦。マーガレットを演じたアネット・プリンガーに関して調べたが、他に出演作が見つからなかった。金髪白人美女で日本人悪党の情婦となり、衆人環視の元に裸をさらすという、当時の日本人男性のコンプレックスを具現化したような記号的なキャラ。それ以上でもそれ以下でもない。ちなみに本作、無駄に女性の裸が良く出てくる。

ちなみにやられているのは安岡力也

 

一味が取引のために香港に向かっている間に、日本にいた殺し屋たちをことごとく倒した。これに衝撃を受けた水原は、ニューヨークで新たな用心棒を雇い、最後の大仕事として、200億円分の大量の麻薬取引計画を実行する。

しかし甲賀は隼が到着する前に麻薬の横取りを企み、山荘に潜入するがアジト内に仕掛けられた催眠ガスのために眠らされて捕まってしまう。その頃隼は助っ人に自分後輩で拳法の達人倉山田を率いて、山荘に駆けつけようとしていた。というのが大まかな粗筋。

この頃は、嫌みな役が多かった津川雅彦

 

本作では石井輝男はカルト的な演出は控えめにして、アクションとコメディのバランスを取っている。そのせいもあって、物語はテンポよく進み1時間の中編のように感じるほど。

少々悪乗りはあるものの、綺麗にまとまっている印象がある。ただそれだけにちょっと物足りなさを感じるのも事実。ここまでギャグに振るなら、もっと暴走してもよかったように感じてしまうが、これも石井輝男が監督だからそう感じるのだろう。そう思っていたら、次回作の「直撃地獄拳 大逆転」では悪乗り満載で、いかにも石井輝男らしい映画に仕上がっている。

観客の心をくすぐる絶妙なアングル

 

そしてこちらの方がいまだに、カルト映画の名作として愛され続けている。綺麗に撮ればいいと言うものでもないという一つの見本だろうか。機会があれば、そちらの方の感想も書いてみるつもりだ。いやそれよりも石井輝男なら「江戸川乱歩全集 恐怖・奇形人間」ではないか?