タイトル ディセント

公開年

2005年

監督

ニール・マーシャル

脚本

ニール・マーシャル

主演

ショーナ・マクドナルド

制作国

イギリス

 

本作は、軽い気持ちで始めた冒険のはずが、不運が次々と重なり次第と極限状態に追い込まれた女性たちの本性が露呈する様を中心に描き、英国インディペンデント映画賞で最優秀監督賞を受賞したサスペンス・ホラー映画だ。良いエンタメ映画にありがちだが、物語は3部から構成されている。前半は、アウトドア派の主人公が川下りを楽しんだ後で、交通事故で夫と娘を無くし失意にくれているのを慰めるため、友人たちがちょっとした洞窟冒険に誘うところ。中盤は楽しい冒険のはずが主催者のちょっとした見えからトンでもない事態へとなり、後半はとんでもない事態に追い打ちをかけB級ホラー的展開が織り込まれる。そうした中、最初は仲が良かったグループが、次第に人間関係がぎすぎすしだし、最後はちょっとした勘違いから胸糞満点のラストに雪崩れ込むわけだが、実はアメリカ版だとラストが違うようだ。まあ、これはよくある事だがややこしい事に本作には正当な続編があって、それはアメリカ版に準拠している。本作のラストだと続編が作れないという大人の事情によるが、それならアメリカ版を公式にしてほしいのだがいまだに、本作が公式扱いとなっている。

上記の通り、映画の冒頭は急流下りを満喫した主人公サラとその友達たち。彼女の旦那さんは妻のレクレーションにもついて来てくれる優しい夫。その割に、主人公が後思い出すのは娘ちゃんばっかりなのがどうにも解せぬ。その帰途に交通事故でその旦那と娘が死んでしまう。

悲しみに暮れるサラを慰めようと、親友のジュノが女だけの冒険旅行に誘い、なんやかんやでついて行く事にする。このジュノは冒険大好きのアウトドア派で、今回も「普通の冒険じゃ詰まんねえよ」とばかりに、安全なポアム洞窟ではなく下見の時見つけていた前人未到の洞窟に一同を案内してしまったからさあ大変!通路が崩落し帰るに帰れなくなり、出口を求めてひたすら前進することになる。何も起きなかったら映画にならないから、これはお約束だ。

出発前に写真を撮ったら、必ず大半は死ぬ

 

こうした事態を招いたジュノに非難が集まるが、彼女はこうしたサバイバルのプロだけに、頼りにもしなくてはいけないという事から、グループ内でもやもやが溜まり始め、ちょっとしたことでそれが爆発するようになる。このことから仲が良かったグループに不協和音が巻き起こるが、リン鉱石の明かりを出口の光と勘違いした仲間のホリーが、急いでいたから穴に気が付かず足を骨折する大怪我を負ってしまう。彼女を治療するところが、結構えぐい。

その時サラは、何かの気配や声のようなものに気が付くが、誰も取り合ってくれない。地下の洞窟の中に人が住んでいること自体ナンセンスだから仕方ないが。

しかし彼女たちの行く手に、夥しい動物の骨が見つかり一同大パニック。そこに正体不明の怪物に襲われたことから物語はモンスター・パニックものの様相をも呈するようになる。果たしてサラは、脱出できるのか。というのが大まかな粗筋。

突然出現する地底人。この辺りからゲテモノ感が増す

 

普通はこの手の映画は、一人頼りになる人物を配し、その人物の手引きで一同は何とか難を逃れることが多い。本作でもジュノというサバイバルの達人がいるが、彼女が一同を酷い目に合わせた張本人という事で、一同が全面的に信頼できないというところがミソ。更に不可抗力とは言え、ジュノは仲間のベスを刺してその場を逃げ出してしまう。そしてその事からラストで更なる悲劇を招くことになる。この辺りの人物描写は見事。

物語後半は、地底人?との戦いがメインとなり、急にB級ホラー感が増してくる。地底人は暗闇に適応していて目は見えず、コウモリのように音で判断するようだが、コウモリと違い音波を出して敵との距離と探っているわけではなさそう。また、人の上に載っても気が付かないところを見ると、嗅覚も大したことはないらしい。どうやって暗闇の中で、壁にぶつからないのか疑問だ。それにしてもどうして終盤に地底人を登場させたのか。あのままだったら、「怖いのは人間系」の名作になっていたのに。とはいえ、自然の驚異を描くには金がかかるし、脚本上もアイデアだけで凌ぎ切るには無理がある。その意味では仕方なかったと思うが、そのおかげで後半はB急っぽさが前面に出てある意味面白さが増してきたのは何とも皮肉な事だ。

ただ、本作は俳優たちの演技力も全般的に高い事から、映画としてクォリティーが高く、前半はシチュエーション・スリラー、後半はB級モンスター・パニックとしてまさに一粒で二度美味しい作品として楽しむ事が出来る。時間も100分弱と丁度いいので、見て損はないと思う。