タイトル STORY GAME〈ストーリー・ゲーム〉

公開年

2022年

監督

ジェイソン・K・ラウ

脚本

ジェイソン・K・ラウ

主演

岡野りりか

制作国

アメリカ

 

本作は、日本の都市伝説や怪談をモチーフとした物語を、ハワイ出身のジェイソン・K・ラウ監督が新たな解釈で描いたホラー映画。「トイレの花子さん」や「四谷怪談」。そして「番町皿屋敷」等がモチーフとして日本を舞台にしたパートと、ハワイを舞台にして3人の若者とひとりの初老の管理人が語り合う姿を交互の描いたオムニバス・ホラー映画。日本のパートは日本ロケをちゃんとやっているらしく、アメリカのチャイナタウンでロケをしたようなおかしな描写はないが、日本人の感覚だと違和感を覚える事もある。まあ、この辺りは仕方のない事だろう。アメリカを舞台にした映画を日本人が撮ったら、日本人の目には普通でもアメリカ人が見るとおかしく思える部分もあるだろうから。この辺は、アメリカ人視点で日本の怪談や都市伝説を解釈すると、こう見える。と割り切ってみるべきだろう。

ハワイのキャンプ場にやって来た美術大学に通う3人の、芸術家の卵の貧乏学生。管理人から「嵐が近いから近くのホテルに泊まれ」と言われるが、「そんな金ない」と言い返され、しぶしぶといった体で通す。天候が今一なせいか、キャンプ場はほぼ貸し切り状態。3人は夜になるとキャンプファイアを囲んで、それぞれが創作した怪談を披露を披露することになる。ゲームのアプリを使ってテーマは「日本を舞台にした、緑の目が出てくる奴」という事だが、「日本を舞台にした」は守られているが、「緑の目」は実に曖昧。

まずは漫画家志望のチカが話したのは、日本の高校に転向したアメリカ人女子高生・アンがいじめにあって辛い思いをするが、その中心にいるJKを取り巻きと一緒に懲らしめようとする。大方の予想通りそれは罠で、彼女はひどい目にあい、自分をいじめたJK達に怨念が形となって復讐するのだが、この展開は「キャリー」そっくり。実はこの時、担任の先生も加担しているのだが、何故かおとがめなしという釈然としない展開。高校でハロウィンパーティーが開かれるが、この雰囲気はもろにプロムで如何にもアメリカ人のイメージだ。その後アンはトイレの花子さんになるというストーリー。

このパートのヒヒロイン・アンを演じるのがアヤカ・ウィルソン。カナダと日本のハーフで「パコと魔法の絵本」で、ヒロインのパコを演じていた。本作では影のあるヒロインを好演している。

次は脚本家志望のジェームズが語った話で、閉店間際で女将が片づけをしているの日本の居酒屋に、一人のアメリカ人が転がり込んでくる。ただならぬ様子のアメリカ人が、女将に語った話となる。

妻とうまく行っていないケンは、通勤電車の中でマスクをした妙齢の美女を見かけ、ついつい後を付けていくと、途中で彼女が落としたコンパクトを拾い美女に届ける。ミチコと名乗る美女と喫茶店でお茶をすることに成功するが、そこに中年男が割って入り、美智子に因縁をつける。慌てて店を出るミチコ。ケンはいったん見失うが、男に地下道に連れ込まれるのを発見。急いで後を追うと、そこのうずくまるミチコを発見する。そのわきには顔を切り刻まれたさっきの男の死体が。なんとミチコは口裂け女だったのだ。

このパートのヒロインは、伊藤歩。演技力の高さに定評があり、本作では得意の英語を生かして口裂け女を演じている。

これもトイレの花子さん同様、かなり脚色されているが、その部分に関しては特に問題ない。一番問題なのは、口裂け女のビジュアルをはっきり見せない事だろう。その為知らない人が見ると、何が起きているのかよく分からないだろう。それと、居酒屋のパートは、特に必要ないように感じた。

最後は小説家志望の二コルが語った、江戸時代の物語。とある武家に奉公人お菊は、主人の鉄山とは幼馴染で仲が良く、その事を正室から嫉妬されている。ちなみに正室の名前はお岩。なんの冗談かと思うが、このセンスは嫌いじゃない。ある日、先祖伝来の10のお面のうち、一番重要な家の守り神と言える面が無くなり、その嫌疑がお菊にかけられる。実は鉄山は間もなく戦地に赴く事が決まっていて、お面の紛失は凶事と捉えられていた。しかしそれはお岩が仕組んだことで、これを理由にお菊を折檻するが、しかしこのお面に縁のある人物の子孫だった。逆上したお岩はお菊を井戸に投げ殺すが、その日から鉄山たちの家に怪異が続くのだった。

元ネタは「番町皿屋敷」に「四谷怪談」を組み合わせたような話。3本の中で一番突っ込み所が多い話で、江戸時代の武士で戦地に行くとすれば、島原の乱と幕末しかないがそんな様子もなく、戦国時代の合戦の様子だし、そもそも女中が武家の正室にはなれない。とはいえ、そんな細かいこと言っても仕方ない。日本の時代劇でも、時代考証ガン無視している話もあるのだから、その辺は「アメリカ人だから」でスルーするしかない。

このパートのヒロインの遠海まりこの事はよく知らなかったので調べたら、主にCMで活躍しているようだ。現在は40歳と武家の女中にしては、ちょっとあれだが、主人と幼馴染という事なのでこのくらいの人がいいのだろう。ちなみに鉄山を演じる地曵豪は現在は47歳。

正確に、「トイレの花子さん」や「口裂け温女」「番町皿屋敷」を再現するのなら日本の作品を見た方が良く、その上で本作の見どころとなると、アメリカ人が日本の都市伝説や階段を解釈したらどう感じるか、というところにあるので、その点では面白い仕上がりになっている。ちゃんと日本ロケもやっているところに好感が持てる。その一方で最後に管理人の話す話があるのだが、これが日本要素が全くない、SFホラー。ここまではまあまあ楽しめたのだが、このラストでちょっと引いてしまった。それまでを全否定するような話を持ってきたのは、ちょっと頂けない。出来ればこの管理人が昔在日米軍にいて、日本で体験した事とか言うのだったら大いに盛り上がったと思う。

それなりに面白いが、だからと言って劇場で見る程はない。レンタル円盤や配信になった時に楽しめばいいと思う。