タイトル 翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

公開年

2023年

監督

武内英樹

脚本

徳永友一

主演

GACKT

制作国

日本

 

本作は、埼玉県の自虐ネタを詰め込んだ魔夜峰央原作のギャグ漫画を実写映画化した映画の第2弾。前作公開時、「パタリロ」等と違い原作は、ほとんど一般には知られていなかったうえに、未完の作品だけに「なぜこれを?」という反応が大きかったが、興行収入37.6億円と大方の予想を裏切る大ヒットを記録した。

それを受けての4年ぶりの続編となる。普通この手の映画は、主役の年齢が続編づくりの問題となるが、前作の時点でも25歳の二階堂ふみと45歳のGACKTが高校生をやっただけに問題はなかったようだ。ただ、前作で千葉解放同盟の阿久津翔を演じた伊勢谷友介が“大人の事情”で出演できなくなったのを、さっそく劇中でネタにしているあたりは流石としか言いようがない。

この冒頭だけで笑いがこみあげてくる

 

本作も前作同様都市伝説パートと、現実パートが交互に描かれる構成になっていて、現実パートもちゃんとドラマが用意されている。

前作から3か月後、埼玉県を横に繋げる武蔵野線の構想をめぐり利害が対立。そこで、麗は埼玉県民の心を一つにするため、越谷に海を作ることを計画。そのために必要な美しい砂を求めて白浜がある和歌山へと向かう。そこで麗は、関西にも大阪府を中心に周囲の地方を差別があり、通行手形制度が存在しているのを目の当たりにする。滋賀解放戦線の桔梗魁に助けられた麗は、差別の中心人物の大阪府知事の嘉祥寺晃の悪事を白日の下にさらすため、高校野球が開かれている甲子園に向かうが、そこで魁が裏切り嘉祥寺に捕らえられ、甲子園地下にある謎の粉物工場に監禁されてしまう。魁は、自分たちの心の師である和歌山の姫君と捕らえられた同志の釈放を条件に裏切ったのだが、嘉祥寺によって反故にされてしまう。

こう見えても男ですから

 

今回は百美と麗は冒頭とラストを除いて共演しない。その代わりヒロイン?として杏が演じる桔梗魁が登場し、終始麗と行動を共にする。当初は麗に猛アピールするが、実は兄弟であることが判明し、二人の関係はフェードアウト。一応演じているのは杏だが設定は男子なのは前作の百美と同じ。同性愛でも近親はだめなのか?などと小難しい事は考えないように。

「私はテレサ。テレザートのテレサ」というセリフが聞こえてきそう

 

甲子園地下で作られる粉物を食べると、関西弁を喋り大阪人化してしまう不思議な現象が発生しる。一緒に捕らえられていた埼玉の同志たちの協力で脱出できた麗は、魁の協力で無事滋賀に逃れる事が出来た。その頃嘉祥寺は神戸市長や京都市長と協力して、日本中を大阪の植民地にする計画を練っていた。

神戸市長を演じる藤原紀香は兵庫県西宮出身だが、本作では2015年に和歌山県の、紀の川市フルーツ大使に就任したことがネタにされる。片岡愛之助が演じる大阪府知事・嘉祥寺晃と京都市長を演じる川崎麻世と並び、この3人の怪演が映画を引っ張っている。これまで女優として藤原紀香はあまり評価してこなかったが、本作はドはまりしていた。

3大怪優。夢の共演

 

嘉祥寺が栽培する怪しげな実で粉物は作られていた。そこで麗は、琵琶湖の水を止め栽培を阻止しようとする。これに怒った嘉祥寺たちは大軍を率いて滋賀に押し寄せる。それを防いでいる隙に、麗は甲子園に捕らえられている仲間を解放し、嘉祥寺たちを挟み撃ちにしようと計画を練る。しかし甲子園に捕らえられていた和歌山の姫君は、嘉祥寺たちが粉物をミサイルに搭載して東京に打ち込み、大阪植民地計画を実行しようと考えている事を伝える。というのが大まかな粗筋。

和歌山解放戦線を率いる「和歌山の姫君」は「さらば宇宙戦艦ヤマト」のテレサが元ネタ。元ネタ通りのヌ〇ドでなかったのは残念。演じているトミコ・クレアは日系アメリカ人のタレントで、現在日本で活動している。実はこれは仮の姿で本来の姿は…。

他にも本作では「チャーリーとチョコレート工場」のウンパ・ルンパのパロディも登場する。私が見つけたのはこの2本だが、他にも色々とあるかもしれない。

さて、生まれた子供の名前はどうなったのやら?

 

とにかく、乗ったもん勝ちで「乗れる阿呆に乗れない阿保。同じ阿保なら乗らなきゃ損損」という映画。この手のおバカ映画は、一瞬でも観客にリアルを感じさせたら駄目なので、終始同じテンションで突っ走る必要があるが、その点本作は約2時間弱。ノリと勢いで突っ走っているので、観客に考える隙を与えない。一見何も考えていないようで、周到な計算があるようで前述のヤマトネタや、「チャーリーとチョコレート工場」ネタのように、各世代に刺さるパロディを盛り込んでいる。

一つだけ気になる点を挙げるとすれば、主要な舞台が関西に移ったため、百美がいる埼玉パートが弱くなった事だろうか。百美と魁が絡むシーンはなく麗を中心とした三角関係に発展することはない。ここは前作で麗と百美は結ばれているので仕方が無いのだが、出番が少ない分、前作以上のハイテンションの演技を披露しているので質的には十分満足できるが、二階堂ふみを目当てにした観客は残念な思いをするかも。

一応21世紀ですから...多分

 

ただ、そんな事は些細な事に過ぎない。最後までハイテンションで突っ走る本作は、ラストには、あの禁断の夢の国のネタまでぶっ込んで来ているので、頭空っぽにしてどっぷりと本作の世界観を楽しむべきだろう。問題は三作目はあるかだが、さすがに奇跡は三度は起きないと思うので、本作で終わると思う。と言うか、私がプロデューサーなら本作で打ち切りとして、どうしても作りたいならスピンオフを考える。ただ、製作の主体となっているフジテレビの経営状況から、強引に三作目を作りそうな気がする。そうなったら多分大爆死だろうが。