タイトル 最も危険な遊戯

公開年

1978年

監督

村川透

脚本

永原秀一

主演

松田優作

制作国

日本

 

本作は、殺し屋の鳴海昌平を主人公とするハードボイルドアクション映画シリーズの第1作として作られた。全3作制作されいずれも主演:松田優作、監督:村川透となっている。

東京都内の渋谷、代々木、中野、六本木、霞が関、中目黒、芝浦ふ頭などでロケが行われ、本作的な再開発が行われる前の東京都心の様子をうかがう事が出来る。

映画の冒頭でどこかの雀荘で麻雀をやっていると、負けた鳴海が金を払えずボコボコにされるシーンから始まる本作。普通ならカッコいいシーンから始まるのが常道だが、それにあえて反したのが如何にも松田優作らしい。なお、この中に石橋蓮司がいる。

翌日、東日グループの小日向会長の秘書、土橋から、誘拐された南条を謝礼5千万で救出してほしいと言われる。東日グループと五大コンツェルンとの間に、日本の時期警戒システムの受注をめぐり、し烈な商戦が繰り広げられ、五大コンツェルンは、裏世界のフィクサー足立に依頼していたのだ。

鳴海は足立の配下・居郷の居所を突き止めると、情婦の杏子を脅し居所を吐かせる。

本作でヒロインの田坂圭子をレイプするシーンで、本当にやっているという都市伝説があるが、恐らく映画を見た事が無い人の発言だろう。映画を見ればわかるが彼女は裸だが、松田優作は着衣だし後半彼女は喘ぎ声をあげているので、明らかに疑似である事が分かる。

本作で松田優作と田坂圭子の絡みは、この2シーンのみ

 

鳴海は精神病院跡地に乗り込み、銃撃戦の末に居郷と実行犯グループ全員を射殺し、南条を救出。ところが、脱出中に何者かにより南条は射殺され、鳴海も重症を追う。元外科医の杏子の手当てで何とか回復し、小日向の元に詫びに行くが、これは彼の力試し。本当の依頼は足立の暗殺。

途中で五代グループと手を組んでいる葛城警部に拉致され、手を引くように言われるが、それを受け入れる鳴海ではない。まんまと狙撃に成功するが、彼の周辺はいつの間にか警官隊で包囲されていた。一斉射撃の中何とか脱出し、アジトに戻ると杏子が葛城達に誘拐されていた。急いで追いかける鳴海。彼の知らないところで、事件は急展開をしていた。というのが大まかな粗筋。

このシーンが撮影された場所は、今は六本木ヒルズになっている

 

公開当時、まだティーンエイジだったので劇場で見た事はないが、VHS、DVD、配信等で何回か見た事があるが、松田優作以外の俳優が演じていたら、とんでもない駄作になっていた可能性があると思う。全身から溢れですオーラは見るモノを圧倒するし、挙動一つ一つがしなやかで、まるで猫を思わせる。音もなく相手の背後に忍び寄りさっと倒す姿は、今見ても興奮させられる。

村川監督の演出も、カット割りを使わず、あえて長廻しを多用して、緊張感を持続させている。その為アクションシーンが始まると瞬き厳禁となる。本作で、精神病院に潜入し、最上部で南条を見つけるところまでワンカットで撮影するところなど、見事としか言いようがない。昔、村川監督と某映画祭でお会いした時、ワンカット撮影についてお話を聞いたことあるが、無論事前に十分な打ち合わせが行われるのは当然としても、「松田優作でなければできなかっただろう」と話されていた。

はっきり言って、突っ込み所は数多くある。流石に受注の為に会社の重役を連続して誘拐するのは無理があるし、腕試しでわざわざ南条の救出を依頼するより、ドストレートに足立の殺害を依頼した方がいい。それにニュース等で銃器をもって立てこもっている凶悪犯でも、説得して投降を促し、やむを得ず突入しても射殺することはない日本の警察が、いきなり一斉に銃撃するとはファンタジーにも程がある。更に誘拐された杏子を追いかけるのに、車に乗った犯人を相当長い間走って追いかけているので、鳴海はサイボーグかと思ってしまう。何より主人公鳴海の女性への扱いがひどい。暴力は当たり前で、ヒロインに至っては最終的にレイプに及んでいる。それでも何故か鳴海を慕うようになるのは謎。この頃の東映アクションでの、新人女優の扱いはこんなものだったのだろう。そのせいか、田坂圭子は本作だけで引退している。ただ彼女の演技はお世辞にもいいとは言えず、表情は終始変わらずセリフは棒読み。長所と言えば、脱ぎっぷりがいいぐらい。大成せず早期に引退することになっていただろう。

車を追いかけてくる松田優作

 

物語としては問題点だらけだが、それでも松田優作の魅力が溢れた作品と言って良いと思う。長さも90分程度と丁度良く、適度なお色気シーンもあって、初心者が松田優作を知るにはちょうどいい映画じゃないだろうか。