タイトル 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

公開年

2023年

監督

古賀豪

脚本

吉野弘幸

声優

関俊彦

制作国

日本

 

本作は、2018〜20年に放送されたテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6期をベースに、原作者・水木しげるの生誕100周年を記念し、「鬼太郎」シリーズの原点である目玉おやじの過去と鬼太郎誕生にまつわる物語を描いた長編アニメーション映画。時代背景は昭和31年、都会を遠く離れた哭倉村を舞台に、龍賀一族の身に起こる凄惨な殺人事件から鬼太郎の誕生へと続く鬼太郎の父と事件に巻き込まれた水木の活躍を描いたものだ。

「ゲゲゲの鬼太郎」の原典と言いつつもベースになっているのは、貸本時代の「墓場鬼太郎」で、その中より 「幽霊一家」と「幽霊一家 墓場の鬼太郎」が物語のベースとなっている。また作中には水木しげるの戦争体験をベースにした「総員玉砕せよ!」のエピソードも、主人公のひとり水木の体験として取り入れられている。

謎の血液製剤M。その正体は?原作ファンなら分かるんですけどね

 

映画の始まりは、山田という雑誌記者がかつて哭倉村と呼ばれていた廃村にやって来る。彼は鬼太郎の誕生秘話を調査しに来たのだが、そこで鬼太郎と猫娘に遭遇。「これから先は来てはいけない。警告しましたからね」と言われるが、それでもめげずに先を進むと、恐ろしいヨウカイと遭遇する。

ここから舞台は昭和31年にさかのぼる。血液銀行に勤務する水木は、会社と深い関係のある財界の大物・龍賀一族の当主・龍賀時貞が急死しその跡目が発表されるのをいち早く知るために哭倉村へ向かう。龍賀一族の富の源泉、血液製剤のMの秘密を探るのが目的だった。

この件、「犬神家の一族」っぽくていい

 

しかし、彼の予想に反して龍雅家の当主は、正気を無くしている長男の時磨が継いでしまう。だがその夜、時麿は殺され犯人として、たまたま近くにいたよそ者の男が捕らえられあわや殺されそうになるが、水木がなんとかその場を抑える。

水木が戯れに「ゲゲ郎」と名付けたその男は、行方不明の妻を捜して哭倉村へやって来たのだった。

水木は目玉おやじにとって数少ない人間の親友

 

水木は時貞の孫娘紗代から、自分を連れて村を離れるように懇願され、Mの秘密を知るため思わず応じてしまう。当主の後継をめぐって醜い争いが繰り広げられる中、一族の者が惨殺される事件が発生。ゲゲ郎が村の中央にある湖に浮かぶ離れ小島に向かうのを見た水木は、急いで後を追い島に上陸するが、その島には恐ろしい妖怪が蠢いていた。危ういところをゲゲ郎に助けられ、水木とゲゲ郎はお互いの目的のため協力する様になる。ゲゲ郎はかつて幽霊族と呼ばれる一族で、太古から人間から狩られていた。その事からゲゲ郎は人間を嫌っていたが、次第に二人は友情を感じるようになっていく。そして水木にも妖怪が見えるようになり、事件の真相が水木に見えるようになる。というのが大まかな粗筋。

謎の少年って、正体バレバレ。声は古川登志夫だし...

 

「いまさら鬼太郎誕生秘話などと言われてもと、見る前はあまり期待していなかった。それにテレビシリーズがベースとなっているので、かなり規制が掛けられていると予想したのだが、実際見て見ると相当ダークでグロい描写がてんこ盛り。そして「鬼太郎シリーズ」特有の人間の闇深さ、業の深さもちゃんと描かれている。後で調べたらR-12という事で、完全に大人のファンを対象にしている作品だ。恐らく原作を読んだことがある、かなりコアなファン向けなのだろう。その意味では「シン・仮面ライダー」と同類と言えるだろう。

主人公のゲゲ郎(もう少しで目玉おやじの本名が分かったかもしれないのに!)と水木が、最初はお互いに信用せずに利用しあう関係だったのが、次第に深い友情で結ばれているところは見どころとなっている。特に戦争体験から、人を従えられる権力を持とうと考える水木が、次第に自分の弱さを自覚して人間臭さを増しているところは、興味深いところだ。鬼太郎の育ての親なのに原作では不遇な扱いの水木だが、本作では終盤に大活躍をする。特にラスボスに最後にはなった一言に、留飲を下げる観客も多いはずだ。流石、鬼太郎の父が友と思った男だけの事はある!

ゲゲ郎の妻や子供へ対する愛情深さと、龍賀一族。特に当主の龍賀時貞の家族をただ搾取する対象としか見ていないところは、好対象となっている。「ゲゲゲの鬼太郎」のファンなら見る事をお勧めするが、かなりグロ描写はきついので耐性のない人はお勧めしない。