タイトル バグズ・ライフ

公開年

1998年

監督

ジョン・ラセター アンドリュー・スタントン

脚本

アンドリュー・スタントン ドナルド・マッケネリー

声優

デイヴ・フォーリー

制作国

アメリカ

 

本作は、「トイ・ストーリー」のスタッフによるピクサー第2作目の長編アニメだ。誕生のきっかけは「トイ・ストーリー」制作中某スタッフが昼食中に昆虫の生態に関する会話を交わし、詳しく調べたもののほとんど参考にせず、逆にキャラクターの性格を掘り下げることに力を注いだ結果、概要が固まったという。

大方の人が察しが付く通り、イソップ童話の「アリとキリギリス」をヒントにしている。ちなみに元のギリシャの寓話だと「蝉とアリ」になっていることが多いが、ヨーロッパ北部では蝉がいないため、バッタやキリギリスに変えられていることが多いく、本作でキリギリスではなくバッタになっているのは、そうした理由がある。

同時期の「アンツ」と類似しているが、こちらの方がキャラは愛嬌たっぷりに魅力がある

 

製作に当たっては「トイ・ストーリー」の十倍もの処理能力を持った最新式コンピュータが採用され、霧や雨、稲妻や炎、キャラクターの動きなどがよりリアルに表現できた。ただ、確かに技術は凄いものの、制作費は「トイ・ストーリー」の3000万ドルから1億2000万ドルに跳ね上がっている。この辺りから、制作費が興行成績を、圧迫する現在のディズニーを苦しめている現象が起き始めているのかもしれない。興行成績は3億6000万ドルと大ヒットと呼べる成績を残しているものの、推測される損益分岐点から、かろうじて黒字といった程度だったのではないか。

ハードを大幅に入れ替えた成果は細かい点に現れている

 

アリたちが住む、アント・アイランド。今日も真面目に食料を運ぶアリたちだったが、彼らはバッタのホッパー達の分の餌も用意していた。彼らは突如姿をあらわすと、アリ達がコツコツと貯めてきた食料を奪い去っていくのだ。そんな関係が随分長く続いていた。

映画はフリックと呼ばれる発明好きの働きアリを中心に描かれる。フリックは地道に働くことを拒み、得意の発明でもっと効率的に餌が取れるように、と発明を行うが、ちょっと詰めが甘い。そんな中、ホッパー達が餌を取りに来た事からパニックに陥いる。そんな中フリックは折角貯めた食料を、川に流してしまう。

このフリックの発明は効率的だし、改良すればかなり作業を楽にできるが、女王の側近たちは保守的で「昔から餌は一粒一粒運ぶものだ」と取り合わない。ここは新が正しく旧が悪いという古典的な価値観で描かれているのが面白い。

餌を取りに来たホッパーは大激怒。こんな事態を作り出したフリックを、仲間達は責め立てるが、彼はホッパー達を倒してくれる勇士を探す旅に出かける。まあ、体のいいお払い箱というわけだ。

そうして街に出かけるフリックは、客に逃げられ潰れる寸前のサーカス団を見つけ、彼らを勇者と勘違いしてアント・アイランドに招待する。首になったサーカス団員たちも、営業の仕事と勘違いしてそれを受けてしまうのだった。

そして、お互いが勘違いをしたまま、一行はアント・アイランドへ到着。そこで、サーカス団員は、自分達が勘違いをしていたらしいということに気がついた。彼らは真実をフリックに告げるが、今やフリックは用心棒を街に連れてきた英雄として扱われた事から、もう後に引けない。フリックは、サーカス団のメンバーに用心棒の振りをさせて対策を練る。おりしも女王の末の娘ドット姫がとりに襲われたところを、サーカス団員たちはその持ち芸を披露することで助け出したことから、アリたちの信頼は絶大なものになってしまった。

フリックはバッタに鳥に弱いことから、張りぼての鳥を作り、それでホッパー達を撃退する作戦を立て、それをサーカス団員の発案という事にして、アリたちの協力を取り付け完成させる。

この作戦を立て、鳥の張りぼてを設計したのはすべてフリック。この事から彼は、頭が良く有能な事がわかる。得てして先進的な人は、評価されないものだ。

準備万端整ったところで、なんと、サーカス団の団長だったP.T.フリーが、サーカスを再び復活させると言い出したのだ。その事から、サーカス団員であることがばれ、彼らとともにフリックも追放されてしまう。やがてやって来たホッパー達はありの国を支配し、借りた血をこき使い餌を集めさせる。そして最後は女王を殺そうと考えていた。ホッパーには一つ不安があった。確かに1匹の力ではバッタが上回るが、数は圧倒的にアリが多く彼らが歯向かえばかなわない。そこで、女王を亡き者にしてアリを直接支配しようと考えていたのだ。その事を知ったドット姫は、フリックに知らせようと後を追うのだった。というのが大まかな粗筋。

鳥はすべての昆虫にとっての天敵

 

ストーリは前述のとおり、元ネタは「アリとキリギリス」だが、「七人の侍」の要素もあるし、やって来た助っ人が勘違いをしている辺りは「ギャラクシー・クエスト」との共通点もあって、適度にハラハラさせられだれでも楽しめる内容となっている。それだけに既視感を感じるストーリーで、前作「トイ・ストーリー」と次回作「トイ・ストーリー2」に挟まれている事から、やや影が薄いように感じる。虫の世界という事から、生理的に受け付けない人もいるだろう。それに主人公がアリという事もあり、他のアリたちをあまり見分けがつかないのも、残念ポイント。しかし、単純に楽しめる内容になっているので、個人的に面白く感じた。ただ、続編があったら見るか?と言われるとそこまでないかな。