タイトル インシディアス

公開年

2011年

監督

ジェームズ・ワン

脚本

リー・ワネル

主演

パトリック・ウィルソン

制作国

アメリカ カナダ

 

「ソウ」シリーズのジェームズ・ワンが監督、リー・ワネルが脚本を手がけ、「パラノーマル・アクティビティ」のオーレン・ペリが製作を担当したホラー。古い屋敷に引っ越して来たある家族が、その直後から起恐怖の体験をするという王道を行くホラーだが、終盤に意外な真相が明らかとなる構成から大ヒットとなった。またこの手の映画としては、直接的なゴア描写や暴力的な描写はなく、音や演出で観ている者の恐怖を誘うかつてのJホラー的な演出がとられている。

ジェームズ・ワン以外にパトリック・ウィルソンと「死霊館・シリーズ」と被る部分も多い

 

高校教師のジョシュ・ランバートとその家族が新居に引っ越して来るところから始まる本作。妻のルネは新居に違和感を覚えていた。そんな中、長男のダルトンが屋根裏部屋で転び、昏睡状態に陥ってしまう。医者にも原因は分からず、3ヶ月後ダルトンを自宅に戻し家族で看護することにした。

ある日、ルネは赤ん坊の娘カリの部屋から妙な音がし、夜には次男のフォスターが「夜中に兄が歩き回る」と言い出す。夫妻が就寝しようとすると玄関の呼び鈴が鳴り、カリが泣き出してしまうが調べても、侵入者の気配はなかった。そんな中、ルネは家の中に人影を見る様になる。

さらに翌日、ルネは夜中に悪夢を見て飛び起きたところを謎の男に襲われる。ジョシュが駆けつけると男の姿はなかったが、怯えるルネは引っ越しを懇願し、ジョシュは半信半疑ながら引っ越すことにした。しかし、引っ越しても一家の怪異は収まらなかった。

左が脚本家のリー・ワネル。俳優になっても食っていけるほどいい味出している

 

そんな時、ジョシュの母ロレインはエリーズ・レイニアを一家に紹介する。彼女はいわゆる霊能者だった。

本作の陰の主役と言っていいのが、このエリーズ。霊能者とか占い師とかどうしても、クールで近寄りがたいイメージを持つが、彼女は親しみやすく情にあつい。に保谷かに微笑みながら、巧みな話術で一家の警戒心を解き、話を引き出していく。監督は彼女に関して、少々ギャグっぽい演出をしようとしているらしく、まず実地調査に助手?の二人を差し向けるが、このうちの一人は脚本家のリー・ワネル。なかなかにとぼけたいい味を出していて、前座として笑いを取っている。この先にやって来た助手たちの調査で心霊現象であることを確かめたエリーズは、ダルトンの部屋に恐ろしい魔物を見つける。彼女の話だと、ダルトンには天性の幽体離脱能力があり、これまでも何度もる奪していたが“あちらの世界”から魂が帰ってこれなくなっている事。楚々て、魂のない体を悪魔が狙っていることを告げる。

霊能者のエリーズを演じているのは、撮影時に70歳近いベテランのリン・シェイ。「エルム街の悪夢」や「ヒドゥン」、「呪い襲い殺す」等ホラーやSFへの出演が多い。

余りに突飛な話のため、ジョシュは信じられず彼女を追い出したが、ダルトンの描いていた絵に気付くと考えを改め、エリーズに解決を依頼する。

悪霊たちの妨害を退けたエリーズがダルトンの魂と交信し、所在を確認するとロレインを呼び出した。実は、ジョシュも8歳の頃幽体離脱した経験があり、ダルトンの幽体離脱能力はジョシュから遺伝だった。その際、エリーズは彼を助けた記憶を封印されていたのだ。ダントンを救出するためにはジョシュがあちらの世界に行くしかなかった。というのが大まかな粗筋。

余談だが、後半登場する悪魔が「スター・ウォーズ」のダース・モールにそっくりである。多分、ダース・モールが悪魔のイメージで描かれているんだろうが、なんとなく見て笑ってしまった。

前半は、Jホラーを彷彿とさせる音や目線の端でちらっと見せるなど、雰囲気で怖がらせるタイプ。味方によっては退屈かもしれない。しかし、後半になると悪魔だけでなく音量がこれでもかと出てくる怒涛の展開。そしてハッピー・エンドと思わせて更に...という展開は、ある意味王道。それだけに期待を裏切らない映画に仕上がっている。

「ソウ」シリーズのジェームズ・ワンが監督、リー・ワネルが脚本という事で、えげつないゴア描写が満載かと思ったが、流血シーンは皆無で、親子の絆を前面に出して安心してみる事が出来る様に作られている。ワンとワネルにとっては新境地の開拓となったはずだ。

日本ではいまいちな本シリーズだが、アメリカでは大ヒットしている。どれぐらいかといえば、150万ドルの製作費に対して、9700万ドルという規格外の大ヒットとなり、シリーズ化され現時点で4本製作されることになるが、この一家を描いたのは次の「インシディアス第2章」までで、その後の2本はエリーズを主役にしたものとなったが、本作のラストで彼女を殺したので、本作の前日譚という構成をとっている。特に第4作の「インシディアス 最後の鍵」では、エリーズの生い立ちを描くことになるなど大人気となっている。恐らく本シリーズ最大のミスは、エリーズを殺したことだろう。生かしていればもっと自由に続編が作れたはずだ。ちなみに現在アメリカでは第5作目「Insidious: The Red Door」が公開され、大ヒットしている。またランバート一家が登場するので「第2章」の続編となるようだが、あのラストでエリーズの驚愕した理由が判明すると思われるので楽しみである。