タイトル ナチス・バスターズ

公開年

2019年

監督

アンドレイ・ボガティレフ

脚本

アンドレイ・ボガティレフ ブヤチェスラフ・シクハリフ 他

主演

アレクセイ・シェフチェンコフ

制作国

ロシア

 

本作は、第2次世界大戦下の1941年末、極寒のソ連の地を舞台に、「赤い亡霊」と呼ばれるソ連の狙撃兵とナチスドイツ軍との戦いを描いたロシア製戦争アクション。1941年末はまだドイツ軍が勢いのあるころで、モスクワ前面で激しい戦いが繰り広げられていた時期。それだけに、ドイツ軍はまだ余裕があって、「あともうチョイで勝てるぜ」といった感じの頃だろう。

ゴキブリホイホイを思わせるセンスのない邦題だが、原題は「Красныйпризрак(赤い幽霊)」とそのまんま。誰がこんなセンスのない邦題つけたんだと思い配給会社を調べたら、アルバトロスと納得の結果が。B級臭いと思ったらやっぱりね。ただ映画はテンポよく進み、B級臭さが割といい方向に作用していた。

覆面を取ったら...。これは笑うしかない

 

映画は1941年の、独ソ戦たけなわの頃のロシアの戦線を離れた後方で、一組の男女がドイツ軍に銃殺されそうになったところを、突然現れた謎の狙撃兵に助けられるところから始まる。この処刑されかかった男の方は顔がちょび髭そっくり。そして本人もそれをネタに、病院で慰問活動をやっていた様子。

その頃本隊から外れたロシア軍の一団が、さまよっている最中に、一人の凍死しかかった若いロシア兵プロスタチョクを見つけ、合流する。その一団に紅一点のヴェラがいるが何故か妊娠している。父親は誰かははっきりしないが、途中で死んだ負傷兵っぽい感じ。

定番の「食べ物に毒が」

 

途中で農家に立ち寄り一息つく事が出来たが、身重のヴェラと中尉を置いて他の兵は先に行く事にした。

丁度そこにブラウン大尉が率いるドイツ軍部隊が到着。中尉は逃げ出せたがヴェラは衣装箱に隠れる。ブラウン大尉は武装親衛隊だが、他の兵士は国防軍で指揮官はクライン少尉。西側の映画だと親衛隊が鬼畜で国防軍はまともだが、本作はどっちもどっち、というよりクラインの方が鬼畜に描かれている。ここにブラウンが立ち寄ったのはロシア式のサウナに入るためという、本当にどうでもいい理由。「兵士の規律がなっとらん」等とよく言えたものだ。

衣装箱から変な音がするのを、不審に思った若い兵士が箱を開けるが、ヴェラがワンピースに着替えていた事と妊娠していた事から見逃そうとするが、ブラウンに見つかってしまう。この後でヴェラを尋問するのだが、件の若い兵士が通訳を務め、何とか助けようとかなり意訳したり、付けたしたりしているのが面白い。ドイツ兵も鬼ではないというところを描きたかったのか。しかし兵士であることがばれ処刑されかかるが、そこに赤い幽霊が現れ、更にヴェラの仲間たちも合流し激しい銃撃戦になる。ドイツ軍はほぼ全滅するが、クラインは死んだふり、入浴中のブラウンはマッパだったので女性用のワンピースで逃げだす。そこでヴェラが産気づき男児を出産。喜ぶ一同だが、そこにドイツ軍が逆襲してくる。いち早く気配を察知した赤い幽霊は銃を取り、他の兵士たちも迎え撃つ準備をする。というのが大まかな粗筋。

ある意味本作最大の被害者。

 

この手の映画だと「赤い幽霊とは誰だ?」という展開で、ラストで大どんでん返しがあったりするが、本作は「みんなが赤い幽霊だ」という、かなりプロパガンダ色が強い作品。ラストなんてむせる程プロパガンダ臭が漂っている。それに、結構激しい戦闘シーンがあるが、ドイツ軍の攻撃はかなりグダグダ。最終決戦では早々に指揮官が戦死し、バラバラに攻撃を仕掛け数の優位を生かせないでいる。敗残兵の寄せ集めの様な部隊にこれだけ手古摺るなら、楽勝じゃん!という訳にはいかず、ドイツ軍をロシアから追い出すのに、あと4年かかることになるのはご存じの通り。

本作はかなり低予算のアクション主体の映画で、戦車などの重装備は一切出てこず、ひたすら兵士対兵士の銃撃戦と肉弾戦が主。赤い幽霊以外のロシア兵とドイツ軍の方も主なところは、ちゃんとキャラ設定がしてあって、プロパガンダ臭に目をつぶればそれなりに面白く見る事が出来る。音楽と言い、バイオレンス色が強い戦闘シーンと言い、マカロニウェスタンを彷彿とさせるので、これは監督が狙ったのだと思う。多分個人的に気に入ったのも、私がマカロニウェスタンが好きだからというのもあると思う。