タイトル 死霊のはらわた ライジング

公開年

2023年

監督

リー・クローニン

脚本

リー・クローニン

主演

リリー・サリバン

制作国

アメリカ

 

本作は、サム・ライミ監督の出世作となった傑作ホラー「死霊のはらわた」シリーズの正統続編。現代のロサンゼルスを舞台に「ネクロノミコン」で蘇った死霊と人間たちの戦いを描いたアクションホラー映画だ。「死霊のはらわた」は続編として「死霊のはらわたⅡ」が作られているが、これは前作のリメイク的な内容。それを含め何度も作られているが、本作はそのどれとも繋がらない完全な新作。しかもこれまでは人里離れた山奥が舞台となる事が多かったが、本作は大都市ロサンゼルスが舞台となっている。これは今までにない事なので、本作は新たなシリーズの始まりとなるかもしれない可能性がある。

一家の要を早々に失い、ベスがまとめなくてはならなくなる

 

映画の冒頭で、どこかの山奥の湖畔で「嵐が丘」を読むテレサと、ドローンに興じるケイレブ。そしてケイレブの恋人ジェシカはテレサの従兄妹という、なかなかにややこしい関係の3人がいた。ここでジェシカは悪霊に憑りつかれていて、二人を惨殺するお約束の展開。この導入部を見ると、「ああ、山奥のバンガローで惨劇が起きるのか」と思わせといてそれはフェイント。事件はその前日のロサンゼルスで起きる。

ギターの調律師ベスは妊娠をしてしまい、相談の為タトゥーアーティストの姉エリーの元を訪れる。昔から、ベスはエリ―を頼りにしていたが、最近疎遠となっていた。彼女は長男のダニー、長女のブリジット、次女のキャシーの4人暮らし。一家の住むアパートも取り壊しが決まり、近々出ていかなくてはいけない。ちょっと気まずい空気が流れ、エリ―は子供達に夕食のピザを買いに行かせる。しかしその間地震が起こり、地下駐車場の床の一部が崩れ、金庫のようなものが見つかる。ダニーが明けると中から古いレコードと古びた本が見つかる。その本こそシリーズでしばしば登場する「ネクロノミコン(死者の書)」。呪文を唱えると邪悪なものが蘇るのだが、そんな事を知らないダニーは、レコードをかけて期せずして呪文を流してしまう。ちなみにこのレコードの声は「死霊のはらわた(1981年)」で主人公アッシュを演じたブルース・キャンベルがやっているから、シリーズのファンはたまらないだろう。なお、「ネクロノミコン」はクゥトルフ神話に登場する架空の魔導書。このシリーズでは死霊を蘇らせるアイテムとして、たびたび登場している。

蘇った資料はまずエリーに憑依し、一家に襲い掛かる。家族のかなめを真っ先に失った事で、、右往左往する子供たちを何とかベスがまとめ、廊下に締め出すが、外ではほかの住民たちがエリーの餌食になっていた。

このシーンはドアの穴を通して外の景色が見えるのだが、平面的で結構コミカルというか、なんだか寸劇をやっている様に見えて面白い。多分狙ったんだろうな。

アパートからの脱出を試みるが、地震のせいでエレベーターは動かず階段も壊れてしまい、アパートは孤立してしまう。そして部屋の中でも、長女のブリジッドが憑依されダニーに襲い掛かる。かろうじて相打ちになる形でブリジッドを倒すダニ―。残されたベスとキャシーは脱出を試みるが、エリーに殺された者たちも蘇り、二人の前に立ちはだかる。というのが大まかな粗筋。

本作で一番気になっていたのが、都会のど真ん中でどうやって孤立した状況と作り出すのかと、「ネクロノミコン」をどこに隠しどうやって見つかる様にするのかだったが、それは地震といでうまく解決している。まさに一石二鳥のグッドアイデア。

随所のホラーの名作へのオマージュがちりばめられていて、それを探すのも楽しみの一つ。分かりやすいのは、終盤でエレベーターが開くと大量の血が噴き出るシーン。これは「シャイニング」の名シーンのオマージュで、これを再現するため6500リットルもの血糊を用意したとか。頭どうかしてるぜ(いい意味で)。そして終盤に登場したクリーチャーは、間違いなく「遊星からの物体X」へのオマージュ。もっともここは賛否が分かれそうではあるが。

それともう一つ、本作の主人公のベスが、かつての主人公、最初は怯えていたのが、死霊との死闘を通じで次第に強さとたくましさを身につけヒーローとなっていくアッシュに被るところがあるのも見どころの一つ。そして蛇足の様だったファーストシーンが最後に重大な意味を持つのもなかなか凝っている。本作の監督リー・クローニンは、かなり凝った絵作りをするので見ていて引き込まれる。本作も昨今の映画にありがちな、画面が暗いという欠点があって、中班はかなり見にくくなっているが、目立った欠点はそれぐらい。ゴア描写てんこ盛りの映画を期待する、コアなファンにとっては物足りないだろうが、「死霊のはらわた」を始めて見るという、新規のファンには導入部として手ごろな映画となっている。

相当ヒットしたようなので、恐らく続編は作られると思うし、今から楽しみだ。

 

※だいぶ前に書いていたのですが、アップするのを忘れていました。