タイトル トランスフォーマー/ビースト覚醒

公開年

2023年

監督

スティーヴン・ケイプル・ジュニア

脚本

ダーネル・メタイヤー ジョビー・ハロルド

主演

アンソニー・ラモス

制作国

アメリカ

 

本シリーズも長いもので、2007年にマイケル・ベイ監督、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮のコンビで第1作「トランスフォーマー」が公開されて以降、世界的大ヒットを記録してきたが、本作をもってシリーズ通算7作目となる。実を言うと、シリーズ第3作の「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」以降、シリーズから遠ざかっていたので10年以上間隔があいている。この手のモノは1作でも見逃すと、よくわからなくなるのも遠ざかっていた理由。そして単純に「疲れた」というのもある。今回は、新シリーズで第1作の前日譚という事なので、久しぶりに見てみた次第。

今回はオプティマスプライムの成長の物語でもある

 

本作の特徴は、かつて日本で人気を博したテレビアニメ、「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」で活躍した、動物の姿をしたビースト戦士(マクシマルズ)が初登場する。この「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」がなかなかの曲者で、もともとコメディタッチを意図していたが、放送当時「声優無法地帯」と称されたほどの、ベテラン声優たちによる息の合ったアドリブが全開で、それが人気に拍車をかけることになった。

なお、2023年7月に、音響監督の岩浪美和によるビーストウォーズの旧キャストが声を当てた日本語版予告が公開された。声優陣は唯一本作に出演している高木渉(チータス役)のほかにも、映画未出演の千葉繁(メガトロン役)、山口勝平(ラットル役)、加藤賢崇(ワスピーター役)が出演する豪華版で、往時のファンを熱狂させた。いや、どうして変えたんだよ!

ミラージュとノアのコンビは第1作を思わせる

 

映画の冒頭、宇宙の星をエネルギー源とするユニクロンは、「トランスワープキー」を奪うためにある惑星を襲う。マクシマルのリーダーエイブリンクはユニクロンの手下スカージを引き付け、その隙に「トランスワープキー」を持ったオプティマスプライマル達を逃がすことに成功する。

それから時は流れ1994年、就職活動で失敗続きのノアは弟の治療費を稼ぐ為、ポルシェ泥棒をやる羽目になる。一方、博物館につとめるエレーナは、持ち込まれたヌビアのホルス像におかしな点を見つけ、夜二階席を行っていた。しかし、「トランスワープキー」を起動してしまい、オプティマスプライムはみんなに呼集をかける。ノアが盗もうとしていたポルシェはオートボットのミラージュで、勝手に動き出して工場跡に向かうのだった。

本作は第1作以前だからオートボットはまだ人間を信頼しておらず、リーダーとしての統率も悩んでいる様子なのが興味深い。一方のノアを演じるアンソニー・ラモスはプエルトリコ系でエレーナのドミニク・フィッシュバックはアフリカ系と、多様性に配慮したキャストになっている。

本作最大の被害者であるエレーナ。多分一生ニューヨークからでないだろう

 

工場跡に集合した一同は、大騒ぎにならないようにミラージュの発案で、ノアに博物館に侵入しキーを手に入れる作戦を取り入れる。ノアは首尾よくエレーナと接触できたがそこへスカージ達が襲来。オートポットたちと交戦となる。謎のハヤブサ戦士が駆けつけるが、バンブルビーは殺されキーを奪われてしまう。

ハヤブサの戦士はマクシマルのエアレイザー。冒頭に登場するオプティマスプライマルの部下だ。これまでの経緯を説明するとともにワープキーは半分であることを告げるが、その行方は不明だ。すると、エレーナは石像の文字がインカ帝国のものと説明し、一同はペルーのマチュピチュへむかう。

ノアは自業自得な面もあるし、ミラージュと友情で結ばれるし

 

このエレーナは本来博物館のインターンで、嫌みな上司から雑用を押し付けられているが、その知識は上司を凌駕し、彼女はエレーナを利用して自分のスキルアップにつなげている。その嫌味な上司が白人なところに、昨今の情勢が反映されている。

ペルーでホイールジャックと合流し、インティライミ祭り中のクスコでエレーナの発案で、ノアとともにサントドミンゴ教会の庭から地下神殿へ向かうが、棺は空だった。そこにスカージたちの襲撃があり、オプティマスプライム達と交戦する。その間、ノアとエレーナは脱出に成功。そこに、マクシマルのゴリラ・オプティマスプライマル、チーター、サイのライノックスと遭遇し戦闘寸前。エアレイザーが到来し、事情を説明して打ち解ける。いや、最初から説明しろよ。

キーはインカの人とオプティマスプライマル達が守っていたのだった。人間を信頼するその姿勢はオプティマスプライムたちに影響を与える。

どうでもいいが、オプティマスプライムとオプティマスプライマルって分かりにくい。もともと別の作品だったから仕方ないが。

真昼間にこんなのがうろうろしていて、警察も軍隊も出てこない!と思っていたら...

 

エアレイザーが先ほどの攻撃でスカージに洗脳され暴れだし、キーをスカージに奪われてしまう。スカージ達は活火山の頂上でキーを起動してユニクロン呼ぶ。全世界で大きな異変が襲い、それはニューヨークのノアの弟も感じていた。

オートボットとマクシマルは共闘し、スカージ達と交戦。その隙に、ノアとエレーナはキーを止る作戦を実行する。果たしてユニクロンを阻止できるのか。というのが大まかな粗筋だが、第1作「トランスフォーマー」の前日譚なので、阻止できることは確定している。この辺り、ちょっと詰めが甘い部分でむしろパラレルワールド化、全く違う話にすべきだったと思う。旅先でエレーナが情報を集めるのに、わざわざ分厚い本を持ち歩いているのに、それに全部の情報が入っていたり、脚本の段階で現在のネット社会から抜け切れていない節がある。ただ、最近は「マルチバース」ものに食傷感がある様なのであえて避けたのかもしれない。

前日譚という事もあって、オプティマスプライムはまだ人間を信頼していないし、故郷に帰ろうという焦りから、冷静な判断が出来ていない。それだけに本作を通してリーダーとして大きく成長している様子が伺える。ただ一つ残念なのは、お互いに因縁のあるスカージとオプティマスプライマルが、最終決戦で戦わなかったこと。ここではオプティマスプライムとノアが協力して戦うことで、人間を信頼するようになる布石にしたかったのだろうが、それはもう少し前にして、最後はプライム、プライマルがスカージ相手に共闘する展開なら、大変ムネアツだったはずだが。

非常に面白かったし見ごたえもあったけど、これをマイケル・ベイのシリーズとつなげるにはいろいろ手を加えなくてはいけない事が多すぎる。そもそも本作は、全米興行収入で苦戦している。いや、普通に見ると大ヒットなのだろうが制作費が2億ドルだから、損益分岐点は6億ドルと予想されるが8/5の時点で4億3000万ドル。次があるかどうか、微妙な情勢だ。個人的に続けてほしいのだが、映画も産業である以上赤字覚悟で作るわけにはいかない。いや大体、2億ドルも予算をかけるのがおかしいのだが。