タイトル ゾンビスクール!

公開年

2014年

監督

ジョナサン・マイロット キャリー・マーニオン

脚本

リー・ワネル イアン・ブレナン

主演

イライジャ・ウッド

制作国

アメリカ

 

本作はイライジャ・ウッドが製作総指揮と主演を務めたホラーコメディ映画。ハリウッド映画には、子供は殺してはいけないという暗黙の了解があるが、本作ではその子供たちがゾンビと化して、教師たちに襲い掛かり、反撃で少なからぬ子どもが殺される。「子供じゃなくてゾンビだ」との言い訳もできるが、結構珍しい類の映画と言えると思う。そんな映画に、イライジャ・ウッドが制作・総指揮を務めているので、何かあったんじゃないかと個人的に心配になるほど、とんがった作品だ。ただ、イライジャは子供のころからホラー映画が大好き。好きがこうじて、ホラー映画製作会社The Woodshed(現在SpectreVision)を友人と立ち上げたほどなので、根っからホラー映画は好きなようだ。ちなみに以前紹介したニコラス・ケイジ主演の「カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-」はそのSpectreVisionが制作した映画だ。

冒頭のなんかやばいナゲットをかじるシーン

 

養鶏場に入った男が、逃げ回る鶏の中から1羽を見つけ、縊り殺す。羽根をむしり解体し、ひき肉にすると、チキンナゲットとなって、出荷された。そのうち学校給食になったものを、一人のツインテールの少女が食べるところから、本作は始まる。

クリント・ハドソンは、若い頃は作家を目指してニューヨークで暮らしていたが芽が出ず、故郷に帰り代理教師として働きだす。学校に初登校の時、彼の背後にベンチに座るツインテールの女の子が映し出され、さりげない伏線になっている。

休暇中の校長に代わり、シムズ副校長が校長代理。挨拶したクリントは、「学校内に携帯は持ち込み禁止」と言われて取り上げられる。このシムズは実務より理想を追い求める、典型的な意識高い系。職員控室に案内されたクリントは、小学時代の同級生の女性ルーシー・マコーミックと再会を喜び合う。この時偶然を装っていたが、実際は事前にリサーチしていたと後で告白。しかし、彼女は体育教師のウェイドと付き合っていた。リサーチ不足だな。

この二人、最後まで友達以上、恋人未満

 

何とか授業を進めるが、授業中に件のツインテールの女の子が、学級の問題児ペイトリオットに噛みつく珍事が。逃げた少女は校庭の植え込みに隠れていたのを見つけた、生徒が仕返しをしようとするが、右手でひっかかれて即発症する。このゾンビは噛みつかれなくてもすぐに発症するのが特徴。そして、ゾンビ化するのは子供限定。実はクリントも引っかかれていたが、発症しなかった。

ようやく事態に気が付いた先生たちは、校舎に立てこもり外部と連絡しようとするが、携帯電話はチャイルドゾンビたちに壊され、連絡できない。異変を察知したパトカーがやって来るが、子供だとなめていたせいで、あっさり惨殺されてしまう。

ルーシーは「3時になれば親が迎えに来るから、その時連絡を取ろう」と提案。一人の親が車で迎えに来るが、電話に夢中で我が子の異変に気が付かず、あっさり食べられてしまった。この事からも分かるとおり、本作のチャイルドゾンビはある程度の知能を持っている。

万策尽きたクリントたちは、車で脱出を図るが校内はチャイルドゾンビで埋め尽くされていた。というのが大まかな粗筋。

1976年に制作されたスペイン映画の「ザ・チャイルド」という映画がある。ある時、風光明媚な離れ小島に観光に来た夫婦が、大人たちが子供たちに襲われているのを目撃。やがて子供たちは夫婦にも襲い掛かると言うもので、本作にはゾンビでこそないが、おそらく本作は「ザ・チャイルド」を参考にしたのではないかと思われる。

ゾンビ化するのは子供だけで、その線引きは女の子は初潮を迎えるか否かで分けられるようだ。ちなみに男子には、特に言及はなかったが、女子が初潮なら男子は精通だろうか。

そして本作の見どころは「子供がゾンビとなる」という、この一択。ゾンビになったとはいえ、子どもの姿をしたものをあろうことか、教師たちが学校の備品で殴り、蹴り、ぶったおしていく姿は相当にブラック。体罰厳禁の最近の世相に、あえて物申すスタイルは、ある意味で痛快に思える。

それに関してイライジャもどう描くか。相当悩んだ様子で、「観客にとっても面白いと思ってもらえるように、かつ、いき過ぎじゃない範囲」を模索し続けたという。

そうしてたどり着いた結論が、武器は銃を含めて全く登場させないという事。それにアメリカでは学校で、銃乱射事件が頻繁に起きている事への配慮もある。

珍しく体育会系が役に立つ

 

そしてどんな学校にも普通にあるもので、ゾンビチャイルドたちと戦うことにした。その涙ぐましい努力の結果、本作を見てもかなりのゴア描写があるのに、あまり不快な印象は持たなかった。

その一方で、ゾンビ映画として見ても、なかなかよくできている。残酷描写も手抜きはなくて、子供たちが校庭で先生を取り囲んで手を引きちぎり、内臓を抜き出す姿などなかなかえぐい。子役にトラウマが残らなければいいと、心配になるレベルだ。

正直主人公とヒロイン、そしてその彼氏との三角関係やなどどうでもよく、観客は1ミリも関心を持たない事だろう。

この手のホラーによくありがちな、周囲に関心を向けない人

 

お下品で、ゴア描写がたっぷりな本作。間違っても「ロード・オブ・ザ・リング」のような、カッコいいイライジャ・ウッドが好きな人は、絶対に手を出して行けない映画だ。