タイトル バーフバリ 王の凱旋
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公開年 |
2017年 |
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監督 |
S・S・ラージャマウリ |
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脚本 |
S・S・ラージャマウリ K・V・ヴィジャエーンドラ・プラサード |
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主演 |
プラバース |
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制作国 |
インド |
伝説の戦士バーフバリの壮絶な愛と復讐の物語を描いてインド映画史上歴代最高興収を達成し、日本でもロングランヒットを記録したアクション「バーフバリ 伝説誕生」の完結編となる第2作。
前作を上回る(前作は18億ルピー)25億ルピー(現在のレートで43億円)の製作費をかけて、インド・ハイデラバードにある映画スタジオであるラモジ・フィルムシティで撮影された。ここは1666エーカーの広さを誇り、世界で最も巨大な映画スタジオとしてギネス世界記録にも登録されている。考えてみれば43億円でこれほどのクオリティの映画が撮れるのなら、8~90億円かけた「聖闘士星矢 The Beginning」は、相当予算のかけ方が下手としか思えない。単純に比較できないが。
現時点で、国内外の合計で180億ルピー以上の興行収入を記録し、インドの興行収入記録を更新して歴代1位となった。
前作の最後に、マヒシュマティ王国に襲い掛かった蛮族カーラケーヤとの戦いに勝利するまでが描かれているが、本作はその直後から始まる。アマレンドラ・バーフバリとバラーラデーヴァの二人は等しく武功をあげるが、国母シヴァガミは国民の命を優先させたバーフバリを次期国王とする。
敵を人質に取られた、民もろとも殺すのは流石に誰でもドン引きする。このインド式の分かりやすい演出は助かる。
シヴァガミは見聞を広めるために国内を巡ってくるよう命じバーフバリはカッタッパお供に出発、途中で立ち寄ったクンタラ王国で国王ジャヤ・ヴァルマの妹デーヴァセーナに一目ぼれしてしまう。彼は正体を隠してデーヴァセーナの従兄クマラ・ヴァルマの使用人となる。彼の助けで、臆病で武術が苦手だったヴァルマは、急に活躍しだす。聡明なデーヴァセーナはバーフバリが密かにヴァルマを助けている事に気が付いていた。
ヒーローを生かすも殺すも悪役次第
その頃、バラーラデーヴァはバーフバリがデーヴァセーナに惚れていることを知り、彼を貶めシヴァガミとの信頼関係を崩す為に、シヴァガミに彼女との婚約を申し込ませた。
デーヴァセーナはあまりに強引な申し出に激怒し、使者を追い返す。事の詳細を知らないシヴァガミは怒りデーヴァセーナをマヒシュマティ王国に連れてくるよう命じるのだった。
これら一連の経緯で、クンタラ王国はマヒシュマティ王国の一部ではなく、小なりと言えど独立国であることがわかる。それなら聡明なシヴァガミが、あのような無礼極まりない使者を送り、かつ断られたからと言って「王女を誘拐しろ」等と無茶な命令を出したのかは謎。この辺で、それまで理想的な国母だった彼女が、次第と愚かに描かれるようになる。
その時、クンタラ王国の宮殿に盗賊団が侵入、バーフバリは武芸に優れるデーヴァセーナとともにこれを撃退する。この時、それまで臆病だったヴァルマはバーフバリに励まされ、見事盗賊団の撃退に活躍する。
エルフを彷彿とさせる巧みな弓裁き
この盗賊団だがえらく規模が大きく、王宮の近衛兵を圧倒するほど。何か背景があるのかもしれないが、そのあたりは全く描かれていないので、謎のまま。
そこにシヴァガミの命令が届き、一同は勘違いしたままマヒシュマティ王国へ向かうのだった。誰か一人でも詳細を記した手紙を送れば、その後の悲劇は防げたはずだが、それだと物語が成立しない。
王国に到着しようやく誤解が判明するが、この件でシヴァガミの怒りを買い、これによりバーフバリは次期国王の地位を奪われ、バラーラデーヴァが国王に即位することになる。しかし国民の間でバーフバリの人気は高く、危機感を抱いたバラーラデーヴァと父のビッジャラデーヴァはバーフバリを完全に抹殺し、同時に邪魔なシヴァガミをも排除する姦計をめぐらす。
デーヴァセーナの懐妊をきっかけに、バラーラデーヴァはバーフバリを国軍最高司令官から解任。更にデーヴァセーナは後任の国軍最高司令官セートゥパティから性的悪戯をされそうになり彼の指を切り、事情を知り激昂したアマレンドラは独断でセートゥパティを処刑してしまう。だが、これはシヴァガミの怒りを買い夫婦共々反逆罪で追放とする。この辺りのシヴァガミは、前半と別人のように愚かになっているが、心のどこかに実子を国王につけたいという思いがあったのか。
シヴァガミにバーフバリが、自分の暗殺を企んでいることを吹き込んだバラーラデーヴァは、彼女がカッタッパにバーフバリ暗殺を、命じさせることに成功。彼は我が子同様のバーフバリを殺すことが出来ず固辞するが、シヴァガミから「お前がやらないのなら、私がやる」と言われ苦渋の思いで殺害する。その際バラーラデーヴァから真相を聞くと、急いでシヴァガミに通報。いやいやそれ以前に、彼はバラーラデーヴァ達が謀反をたくらんでいること知ってるんですが。己を恥じた彼女はバーフバリの赤ん坊を次期国王にしようとするが、バラーラデーヴァたちはクーデターを実行し、シヴァガミとデーヴァセーナ、そして赤ん坊の命を狙う。デーヴァセーナはシヴァガミに赤ん坊を託し、自らは捕らえられる。逃げるシヴァガミにバラーラデーヴァは矢を射かけ、追跡を命じる。ようやく滝の下に逃げた彼女は、村人に赤ん坊を託し息絶える。
冒頭で赤ん坊を連れて逃げていたのは、やはりシヴァガミだったことが判明。
バーフバリの子を国王に推すが、時すでに遅し
すべてを知ったマヘンドラ・バーフバリは父の復讐と暴君を倒し民衆を解放するため、立ち上がる。彼は兵を募ると、都目指して進軍するのだった。というのが大まかな粗筋。
良くこんな事思いつくなと思う程、全編見せ場の連続。最後まで怒涛の展開で、長い映画にもかかわらず、最後まで一気に見る事が出来た。一人二役(と言いつつも、実質同一人物と言って良いが)で親子を演じたプラバースのカッコ良さもさることながら、宿敵のバラーラデーヴァを演じたラーナー・ダッグバーティの、憎たらしさも最高。実はダックバーティの方が年下なのだが、そんなこと感じさせないほどの存在感だ。やはり、悪役が映えると映画が締まる。
前作と続けてみると、約半分が父の回想で占められているが、普通に考えれば3部作にして、真ん中に置けばいいのに、それをしなかったのも潔い。おかげで前作でバーフバリの前に跪いたカッタッパの気持ちや、彼が父を殺したという経緯が気になり、どうしても続きが見たくなる。この辺りの観客の心理を利用して構成を練っているのが結構うまい。突っ込み所は数多くあるし、「そんなバカな」と思ったのも数知れず。育ての親の事なんて、後編では完全にどこかへ行ってしまっている。それでも、本作を見るとそうしたささいな(でもないけど)欠点なんてどうでもいいと思わせ、映画の面白さが全く損なわれていない。ノリに乗った時のインド映画の破壊力はすさまじいと感じさせる。
英雄バーブバリのその後を描いたスピンオフなんて言うのも、ありなんじゃないだろうか。






