パーキングエリア(2022年)監督 デイミアン・パワー 主演 ハバナ・ローズ・リウ(アメリカ)

 

真冬の夜、ダービー・ソーンはガンで入院中の母親の容態急変の知らせを受け、車を走らせるが、休憩のために立ち寄った高速道路のパーキングエリアで吹雪のため、その場に居合わせた先客とともに立ち往生してしまう。そこで偶然、一台の車に誘拐された子どもが隠されているのを発見するが…。

主演のハバナ・ローズ・リウ。クールなかっこよさがあって結構好きになった

 

テイラー・アダムスによる同名の小説に基づいて、アンドリュー・バラーとガブリエル・フェラーリの脚本が脚本を起こし、ダミアン・パワーが監督した2022年のアメリカのスリラー映画。ちなみに原題は「No Exit(出口なし)」。当初は20世紀スタジオによる劇場公開を目指していたが、断念し米国Huluによって配信されることになった。なお、日本ではディズニープラスで配信されている。

麻薬中毒者の厚生施設に入っているダービーは、母の危篤の連絡を受け電話をしようとするが、施設側は規則を建てに断る塩対応。この時の施設の融通の利かなさはどうかと思うが、設定上彼女はこれまで何度も問題を起こしていることになっている。ただ、映画を見る限り彼女は、ちょっとやんちゃなところがあるものの、特に問題児の様な描写はされていない。冒頭の、同じ入所者を揶揄うところだって、取り繕うとする相手の本音を引き出したとも取れるわけだし。

ブチ切れた彼女は施設を抜け出し、母のいる病院へ向かいが途中で大雪に見舞われ、パーキングエリアに足止めされることになる。4人が同じように足止めされている。携帯の電波を拾うために外に出たダービーは、1台の車に少女が閉じ込められている事を発見。彼女は誘拐され、その犯人はパーキングエリアの中にいる。そこから彼女の犯人を見つけ少女を誘拐するための孤独な戦いが始まる。

危篤に陥る人質。相手の健康状態ぐらい事前に把握して誘拐しろ

 

中盤までは「この中に犯人がいる」というサスペンスの定番の展開だが、更に共犯者がいるというひねりがあって、そこそこ緊張感があり楽しめる。まあ、とりあえずパーキングエリアに数人しかいない場合は車の台数を数ろよ、とは思うけど。

しかし、そこからサスペンス的には尻すぼみになり、急に立てこもり籠城モノにカギを切る。これなら両者の心理戦へ移るのかと思っていたら、更に内部に共犯者がいるという力技の急展開。いやこれはさすがにやり過ぎというか、リアリティに欠ける。

普通に考えると、誘拐犯が呑気にパーキングエリアにとどまっているのも不自然だし、大事な人質をいくら拘束しているとはいえ、見張りもおかずにいるのもおかしい。その少女は病気で、定期的に薬を注射しなくてはいけないのだが、犯人たちは容体が急変することを考えていない。それに、事前に対象の健康状態ぐらいはチェックしとこうよ。その為本来会わないはずの、第3の協力者とここで落ち会う事になり、失敗のリスクを増大させる事なった。それさえなけれ、犯人は今頃遠くに逃げていたはずだ。ここはさっさと用を済ませて、いったん引き返して別ルートを行った方が行くべき。しかし、いくら大雪とは言え、警察は金持ちの子供が誘拐されたのに、探している素振りもなかったからOKか。


この中に誘拐犯が?と思わせて誘拐犯だらけ?

 

ところが、後半に入るとグロいアクションの方向に舵が切られていく。これが結構きつい。そして最終盤で、彼女が麻薬中毒患者だったという設定が生かされてくる。実はここまで彼女は禁断症状が現れるわけでもなく、もう麻薬中毒は完治している様子。それなのに、なぜ施設に入っているのか?この辺り、私は詳しくないので、何か理由があるのかもしれないが。

それとこれは考えすぎかもしれないが、主演のハバナ・ローズ・リウはアジア系。主人公を助けるデニス・ヘイスバートはアフリカ系。一方犯人側はおよそ白人というのも、最近はやりのポリコレ対策のように思える。いやハバナ・ローズ・リウはかなり気に入ったけど。

このまま怒涛のクライマックスに突入するが、後半から終盤にかけて犯人のマヌケっぷりは目を覆うばかりで、グダグダぶりが最後まで尾を引いて、映画に没入できなかった。冷酷になったかと思えば、ダービーの母が死んだメールを見せてお悔やみを言ったり、犯人のキャラが一定しないところも、主人公に感情移入できなかった部分。特に、釘のシーンは「これはギャグか?」と笑いそうになった。

奇を狙わずに普通に作れば、それなりの映画になったのに。ちょっと残念な結果だ。