エイリアンVSプレデター(2004年)監督 ポール・W・S・アンダーソン 主演 サナ・レイサン(アメリカ)

 

南極大陸の氷の下600メートルの地点に、突如、巨大な建造物が出現。実業家のウェイランド(ランス・ヘンリクセン)は探検家のレックス(サナ・レイサン)を中心に世界中から人材を集め、探検隊を組織する。

 

 「バイオハザード」のポール・W.S.アンダーソンが監督と脚本を手がけた、“エイリアン”と“プレデター”が地球上で激闘を繰り広げるバトルムービー。ハリウッドが生んだ人気2大クリーチャー、エイリアンとプレデターの対決が話題となった。ポール・W.S.アンダーソンなのに奥様出演されていないのね?と思ったら、まだ結婚する前か。最近奥様をかっこよく見せる映画しか撮っていないが、本作ではなかなかいい仕事をしている。

ちなみに本作のバチモン「エイリアンvsアバター」で「勝手に戦え!」とのキャッチコピーがつけられたが、本作は「勝手に戦え!」とはならず、人間がこの戦いの勝敗に深くかかわる事になる。

ウェンライト社の人工衛星が、南極のブーヴェ島に大規模な熱源を発見。調査の結果、熱源が地中深くのピラミッド状の遺跡であると判明。社長のビショップ・ウェイランドは各界の若くて優秀な人材を金の力に物を言わせ集め調査隊を編成すると、世界に先んじて派遣する。

このブーヴェ島は南大西洋に実在する島。しかし劇中ではピョートル1世島が示されるなど、ブーヴェ島をモデルにした架空の島といった方がいいかもしれない。

とにかくカッコいいレックス。誰じかに似ているか?

 

主人公レックスを演じているのは舞台出身のサナ・レイサン。彼女がとにかく凛としていてくカッコいい。彼女を見ているとアンダーソンの女性の好みがうかがえる。

一方で、ウェイランドを演じているのは、エイリアンシリーズの常連ランス・ヘンリクセン。「エイリアン2」で演じたアンドロイド・ビショップは主人公リプリーに匹敵する人気キャラとなった。初監督作品と言われる「殺人魚フライングキラー」では主役を演じて以来、ジェームズ・キャメロンとのかかわりが深い。最初は典型的な嫌なセレブと思われたウェイランドだったが、レックスが父親の事を思い出し、落ち込んでいた彼女を励ますなど根は善良。次第にレックスへ親子の様な感情をかわすようになり、最後は彼女を助けるために、自ら囮となってプレデターに挑む。

100年前に、全住民が謎の失踪を遂げた捕鯨基地に到着すると、何者かの手によって地下のピラミッドへ至る深い穴が掘削されている。そのピラミッドは、様々な古代文明の特徴を含んでいて、調査隊が遺跡の銃のようなものを取ると、内部は動く壁により頻繁に構造の変わり、彼らは散り散りになってしまう。

本作のプレデターとエイリアンの設定は、南極にはかつて、プレデターが人類に文明を教えたことで、人類最古の文明が栄え、ここから世界中に文明が広がることになる。その引き換えに、「エイリアン」と生死を賭けて闘う成人儀礼のための闘技場としてこのピラミッドを作らせたのだった。地下奥深く、女王エイリアンが鎖につながれ、その産卵期に合わせて成人式を迎えるプレデターがやってきて、生贄となった人間から生まれたエイリアンと戦っていた。となっている。100年前に全住民が謎の失踪を遂げた捕鯨基地の住民はエイリアンの宿主にされたのだが、そうなると南極文明が滅び厚い氷に閉ざされた後は、どうやっていたのか疑問がわくが、まあ細かいことは気にしちゃいけないという事で。

映画の後半、人間の唯一の生存者となったレックスと、これもプレデターの唯一の生存者が共闘してエイリアンに立ち向かうことになる。この共闘はレックスにとっては、エイリアンの方がより人類にとってより危険だから、これを倒さなくてはいけないし、プレデターにとっては、レックスは目の前でエイリアン一人を倒した“英雄”だから敬意を表するのは当然という、何とも歪な協力関係。ただ最後にプレデターが、ピラミッドともどもエイリアンの卵を全滅させ様としたところを見ると、彼女の気持ちもくみ取ったのかもしれない。もっとも、過去映像でも、ピラミッドを埋め尽くすほどのエイリアンの大群が出現すると、プレデターたちは爆破して文明もろとも、エイリアンの滅ぼしている描写があるから、自分たちの予想以上にエイリアンの繁殖が激しかったので、手に負えないと判断したのかもしれないが。

今回のプレデターは1対1なら強いが、多勢に無勢となると分が悪くなり、中盤まで劣勢を強いられる。「プレデター」シリーズでの無双っぷりを期待したファンには、人間ごときに助けられるプレデターにがっかりするかもしれないが、それは最初に武器を人間達が勝手にとってしまったからで、武器を手にしてからは強いプレデターが復活する。ただラストのクイーンとの戦いは、ややあっさりと終ったのは残念。ポール・W・アンダーソンは「今回はプレデター3のつもりで作った」と言っているように、今作でのエイリアンは完全に悪役でプレデターをヒーローのように描いているのが特徴。確かに意思の疎通ができないエイリアンに比べ、プレデターとは共闘できるかもしれないが、他の助けを求めないプレデターにとって、レックスから助力を得るのはどうなんだろうかと、疑問に思わないでもない。ただ、アクション色が強い本作に比べ、次の「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」では原点回帰でホラー色を強くしたらあまりいい評価を得られなかったことを思うと、本作の方向性は間違っていなかったのかも仕入れない。

「勝手に戦え」とはならず、人類の存亡をかけた戦いとなる。

 

話のテンポもほどほどに良く、アクションシーンは見ごたえあるし、双方の旧作へのリスペクトも感じさせる。大金かけたB級映画として見るべきだと思う。