星の国から来た仲間(1975年)監督 ジョン・ハフ 主演 エディ・アルバート(アメリカ)

 

孤児院で暮らす二人の兄妹には、他の人間にはない超能力があった。それをかぎつけた男が、親類だと偽って二人を引き取る。しかし、兄妹はそこを脱出、妹の持ち物から発見された地図を頼りに旅に出るが……。

アレグザンダー・ケイによって書かれた1968年の小説を映画化したSFファンタジー作品。邦題は壮大なネタバレとなっているが、まあそれはご愛嬌というところ。ちなみに原題は「Escape to Witch Mountain」。ピンとくる方もおられるだろうが、本作は2009年に「ウィッチマウンテン/地図から消された山」としてリメイクされた。製作はディズニー・プロで、良くも悪くもディズニーテイストに溢れている。

映画は、身寄りのない兄妹が施設に入所するところから始まる。そこで妹のティアに悪さしたジャイアン的な餓鬼を、兄のトニーが超能力を使って懲らしめる。そう、二人は超能力者で、トニーよりティアの方が能力が高い様子。その後、施設のみんなと映画を見た帰りに、車に乗ろうとした男に「あなたの車が危ない」警告する。普通なら「変な餓鬼だな」と思う程度だが、この男は二人の言うことを信じたのか、近くまで歩き出したところでトラックがその車に激突。後部座席だけがぐちゃぐちゃになる。命拾いした男は、異様な眼差してトニーとティアを見つめる。この男はデラニアンといい、大富豪のボルトに仕え超能力者を探していたのだ。

デラニアンを演じるのは名優ドナルド・プレザンス。3年後の78年に「ハロウィン」でイメージを一新させるが、この頃はまだ悪役俳優とみなされていた。ただ、どんな困難に直面してもあきらめず、兄妹を追う姿は、後にブレイクすることになるルーミス医師を彷彿とさせる。

デラニアンは二人の叔父になしすまし、施設からボルトの屋敷に移すと、二人が超能力者と知っていることを告げ、自分たちに役立てるように告げる。兄弟は屋敷を抜け出すと、途中で追っ手を撒くため、キャンピングカーで気ままな旅をする、初老の男ジェイソンのキャンピングカーに潜り込む。ジェイソンは兄妹を連れ、ティアが持つ地図の場所、ウィッチマウンテンへ向かう。

ジェイソンを演じるのがエディ・アルバート。「ローマの休日」でグレゴリー・ペックに協力するカメラマン役や、「攻撃」での功名にはやる上官役など、名作での助演を務めることが多く、本作でも一応主演となっているが、登場は後半になってからで、兄妹の旅の友といつ役どころだけに、本作でも助演という位置づけ。ただ、一見こわもての頑固爺さんなのが、二人と交流を重ねていくと、次第におじいちゃんと孫のような関係になっていくのが面白い。

本作は、良くも悪くもディズニー作品。家族みんなで見られる安心安全設計となっているが、その分刺激的な描写は皆無と言って良い。キャラクターもステレオタイプで、深く掘り下げられていないだけに物足りなさも感じる。一度、兄妹に命を助けられたデラニアンは、深堀したら魅力的なキャラになったと思うし、前半で出てきたジャイアンも、後半で兄妹を助けて活躍することになったら面白くなったんじゃないかと思う。また動物の扱いも、馬、番犬、クマなど、いずれも兄妹を助けることになるのは、いかにもディズニーといった感じ。

特撮は、合成とまるわかりで今見ると微笑ましく感じる。ただ、当時の基準で見れば、お粗末とも言いかねるので一応合格点といったところか。ただ、本作の2年後に「未知との遭遇」が公開されているのだから、この2年間の技術の進歩はすさまじいものがある。余談だが、本作の後半に「E.T.」の名場面の元ネタと思しきシーンがあったりする。

日本での公開は2年遅れ、1977年に公開となったが、本作公開当時ディズニー作品の日本での直接配給機構である、ブエナ・ビスタ映画日本支社の解散・閉鎖をめぐって労使対立が続いて配給業務がストップし、ディズニー作品は2年以上日本で公開されなかったことが影響してか、興行成績はパッとしなかったが、アメリカではヒットしたらしく78年には続編「続・星の国から来た仲間」が公開され、さらに80年にはテレビ映画として「Beyond Witch Mountain」が公開された。このテレビ映画版は、テレビシリーズを前提に作られたパイロット版だったが、視聴率が伸び悩みテレビシリーズが見送られることになった。

最初から最後までディズニー印なので、刺激的な作品を好む人には向かないが、お子様と一緒にゆた~~~と見るにはいいと思う。もっとも最近のガキんちょは「『クレヨンしんちゃん』がいい」等とのたまうかもしれないが。

本作のクライマックス。空飛ぶキャンピングカー

「E.T.」にそっくりのシーンがあるが、真相やいかに?