ワイルド・スピード(2001年)監督 ロブ・コーエン 主演 ポール・ウォーカー(アメリカ)

 

ロサンゼルスを車で自在に走り回るドミニクは、夜な夜なレースに挑んでくる連中を相手に、一度のレースで一万ドルを稼ぐ凄腕。そんな彼に、謎めいた男ブライアンがレースに挑むことになる。実はブライアンは、トラックの連続ジャック事件を極秘に追う警官だった。容疑者は腕の立つストリート・レーサーたちだったので、潜入捜査を行なっていたのだ。しかし、ドミニクと、チャイニーズ系のジョニーがそれぞれ率いる二大組織の対立が高まりつつある中、ブライアンはドミニク、また彼の妹ミアとの絆を深めていく。

ロサンゼルスを舞台に、スピードの限界に命を賭ける若者たちを描いたカー・アクション。監督は「ザ・スカルズ/髑髏〈ドクロ〉の誓い」のロブ・コーエン。今回見直してみて思ったのは「あれ?こんな話だっけ」というもの。メインの映画だけで20年以上にわたり9本も作られただけに、その間内容は大変貌を遂げていた。

映画は鮮やかな手口で、輸送中のトラックを強奪するところから始まる。ここはいかにもアクション映画っぽいで出して、掴みはOKと言ったところ。場面はジョーダナ・ブリュースター演じるミアの働くカフェに入り浸るポール・ウォーカー演じるブライアン。どうやら好意を寄せているらしい。それに怒るやはりミアにお熱のヴィンスと喧嘩になり、仲裁に入ったヴィン・ディーゼル演じるミアの兄ドミニク・トレットからレッド・カード

その日の夜、ブライアンは大金を賭けたストリートレースで、ドミニクに勝負を挑む。NOSを噴射して一時は好位置につくが、エンジンがブースト。このNOSは彼が働く店の店長ハリーからもらったものだが、「つかったらやばいぜ」と言われていたもの。それでも周囲から認められたところで、警察が現れ会場は大混乱。そうした中窮地に陥るドミニクだったが、ここでお約束通り、ブライアンに助けられる。ほっとしたのもつかの間。敵対する中国系ギャングの縄張りに入ってしまい、砂漠でのレースで決着するからと言って、なんとかその場を逃れる二人。だが、銃撃によってブライアンの愛車はお釈迦に。ちなみに中国系マフィアのトランを演じるリック・ユーンは韓国系アメリカ人。まあ、見分けつかないよね。自分もだけど。なおリックは「ニンジャ・アサシン」で忍者を演じている。しかしこれがきっかけで、ドミニクはブライアンの信頼を得る。

翌日ブライアンは、警察の職務質問の末連行されるが、実はこれ茶番。彼はトラック強奪犯がドミニクであると当たりをつけ、潜入していた市警の潜入捜査員。しかしミアとは本気になるわ、ドミニクに惹かれ始めるわ、あんたそれで大丈夫か?まあ、ドミニクが無罪だったら問題ないんだが。

ブライアンはハリーの店に入った注文が襲撃事件と合致することに気づき、その夜注文者のガレージに忍び込むが、ドミニクたちに問い詰められることに。何とか誤魔化しドミニクらとトランのガレージに忍び込むことになるが、そこでトラック襲撃の被害品を見つけるとともにトランのやばさも目にする。その報告を受けた警察上層部は、ブライアンの反対を押し切って、がさ入れを実行するが完全に不発。その責任をブライアンに押し付ける。いやだから「事件は会議室で起きてない」ってさ。だいたい潜入捜査って、長い時間かけてやるものだろう。安室さんなんてあの極悪茶番集団に何年入っていると思っているんだ。そもそも、こうした捜査は相手に実行させて、現行犯で抑えるもんじゃないのか?

その後ブライアンはミアに自分が警官だと告り、トラックの運転手が、武器を持ち始めたからやばいと告げ、更にミアへの思いは本当だと言って協力を求める。いやあなた潜入捜査員だろう。ここはちゃんと警察に報告すべきだろう。ただ、この疾走するトラックの襲撃シーンは最大の見せ場。いつもの通りちょろいもんよと襲い掛かるが、運転手がショットガンで反撃。ヴィンスの手がワイヤーと絡まり脱出できない。みんなが何とか救出しようとするが、その都度運転手が放つショットガンで、次々と脱落していく。ただ、運転手がやたらショットガンぶっ放していたが、ドミニクたちは武器を持っていないようだったのでこれは正当防衛成立するのか。その後、なんやかんやあるが、最後はカーレースものらしい締め方でEND。

久しぶりに見てみたが、これまでドミニクが強盗ではないと記憶していたが、これは完全に勘違いだった。それと、意外と話がこじんまりしているのにびっくり。派手な演出はあるものの、基本ロス近辺で起こる車上強盗の話。その後スケールがインフレを起こし「ワイルド・スピード MAX」で、メインだったストリートレースすら脇に追いやられるようになり、世界を舞台にしたアクション映画へと進化?していく。確かに当初のままだと、3作目あたりで行き詰まり終了していたはずだから、それはそれで正解だったと思うし、最近のも面白いのだが、原点のこうしたカーカルチャーをベースにした、小ぶりな(結構派手だけど)アクション映画もそれはそれで味がある。

本作の成功に主演を務めた。ポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルがあることは間違いない。ヴィン・ディーゼルの一見強面でとっつきにくそうだけど、妹や仲間を大切にするドミニクのキャラは、彼なしに成り立たない。そして対照的な、イケメンのポール・ウォーカー演じるブライアンは、潜入捜査員ながら根っからの車好きで、本来捜査の対象に惹かれるという難役。私生活でも大の車好きで、その事が災いしたのか2013年11月40歳の若さで交通事故にて他界することになる。今回見直していると、彼の笑顔を見るたびに胸が締め付けられる気がした。彼の死後、ヴィン・ディーゼルとドウェイン・ジョンソンの確執が表面化したとも報道もあるので、そうした意味でも彼の死は惜しまれてならない。

色々と突っ込みどころあるものの、主役二人の魅力が詰まった名作。回を追うごとに派手になっていく後の作品もいいが、原点を見つめなおすのもいいだろう。もうポール・ウォーカーの笑顔を二度と見ることができないのだから。