続・荒野の用心棒(1966年)監督 セルジオ・コルブッチ 主演 フランコ・ネロ(イタリア・スペイン)

 

メキシコとの国境沿いにある寂れた村。南軍の残党で人種差別主義者のジャクソン少佐とメキシコの独立運動家ロドリゲス率いる2つの勢力が激しく対立するこの土地に、棺桶を引きずった流れ者のガンマン、ジャンゴがたどり着く。ジャンゴは酒場を訪れたジャクソンの部下たちを射殺。ジャクソンは40人の部下を率い報復に現れるが、ジャンゴは棺桶から取り出した機関銃を乱射し返り討ちにする。そこへ、ロドリゲス一味がやってきてジョナサンは殺される。ジャンゴはロドリゲスに対し、ジャクソンが金塊を預けているメキシコ政府軍の砦を襲撃することを持ち掛けるのだった。

本作はコルブッチ監督、およびフランコ・ネロの出世作となった。原題は「Django」だが邦題ではセルジオ・レオーネの「荒野の用心棒」の続編のようなタイトルとなっているが、配給会社によって付けられたいわゆる邦題詐欺であり全く関係ない。

本作は、フランコ・ネロ演ずるクールでどこか神秘的な雰囲気をまとった、棺桶を引きずるジャンゴは強烈な印象を残し、マカロニ・ウェスタンの伝説的ヒーローとして後世に語り継がれることとなった。あまりの人気に非公式の続編映画、つまり勝手に主人公をジャンゴと名乗らせた無関係なイタリア産西部劇が続々と作られ、その数は30本を超えるとも言われている。ちなみに正当な続編は、本作公開の20年後の1987年に制作された「ジャンゴ/灼熱の戦場」のみ。いつの世も、エンタメ界は商魂たくましい。

映画の冒頭で棺桶を引きずるジャンゴ。馬に乗るでもなく、馬車でもなく歩く姿が目を引く。ロドリゲス一派につかまり、リンチを受けるマリアを発見。直後現れたジャクソン少佐の、お仲間たちが彼らを一瞬で射殺。マリアを助けるのかと思ったら、メキシコ人に寝返った裏切り者として処刑するため。そこに現れたジャンゴが彼らを一掃すると、マリアを町へ連れていく。居酒屋兼ホテルにいると、手下を殺されたジャクソンが現れるが、この前に彼は逃げるメキシコ人を狙撃するという遊びをやらせることで、彼の歪んだ人格を現している。ジャクソン以外を殺し彼を挑発することで、一族郎党率いたジャクソンが押し寄せてくる。ここで、棺桶に隠していた機関銃で返り討ちにするが、ジャクソンだけは逃がす。彼の相棒がジャクソンに殺されていたのだ。だから差しで勝負しようというのかな。ずいぶん回りくどいやり方だが。ところで重量50キロを超える、当時のガトリング砲を抱えて撃てるとは、ジャンゴの筋肉はどうなっているのか。シュワちゃんもびっくり!

ジャクソンがいなくなったので、ロドリゲスが登場。町にやってきて、ジャクソンの手下の耳をナイフで切り落として、本人の口へ突っ込むというゴア描写。残酷描写の多いマカロニ・ウェスタンだが、ここまで過激な描写はなかなかない。そのおかげで英国では1993年全英映像等級審査機構によりR18に指定されるまで、上映禁止となっていた。

ロドリゲスもジャクソンに負けないクズ野郎だが、ジャンゴと旧知の関係で、かつてはメキシコ革命軍を率いていた英雄だった。貧すれば鈍するというわけか。

それでも祖国に帰りたいようで、彼は帰国の軍資金を得るため、メキシコ軍の砦を襲い黄金を強奪する。機関銃買う為だが、分け前を要求するジャンゴをのらりくらりとかわし、らちが明かないと見たジャンゴは金を強奪する。この時女を窓辺に立たせて服を脱がせることで、監視の気をそらせるが、それをマリアでなくメキシコ人の女にやらせるあたり、彼もジャクソン同様の人種差別主義者じゃないか?そのあとなんやかんやあって、ジャクソンと最後の勝負を挑む、となる。

マカロニ・ウエスタンの看板スターであるフランコ・ネロを輩出したことが、本作の大きな功績のひとつに数えられるだろう。コルブッチは前作「リンゴ・キッド」に主演したアメリカ人俳優マーク・ダモンをジャンゴ役に考えていたのだが、そんな彼に助監督のルッジェロ・デオダートは当時まだ23歳の駆け出し俳優フランコ・ネロを推薦する。

また、マカロニ・ウエスタンはスペインで撮影するのが定番だったが、共産主義者のコルブッチはフランコ独裁者政権下のスペインでの撮影を嫌がり、スペインでの演出は助監督デオダートに任されたという。その為撮影はローマ郊外のエリオス・フィルムで行われたが、敷地の整備も全くされていなかったので泥だらけ。監督はこの荒れ放題を生かして屋外セットを作るよう指示したのだそうだ。本作の主要舞台、酒場兼ホテルの前が泥濘なのはそのせいで、おかげで娼婦同士の泥まみれの乱闘シーンを生むことになる。

 

バイオレンス描写が多いマカロニ・ウェスタン。その為、正統派の西部劇ファンからは眉をひそめられることの多いが、その中でも本作は別格で、その後のイタリア産西部劇に多大な影響を与えた。「シェーン」や「OK牧場の決闘」の様な上品な西部劇もいいが、汗臭く泥にまみれ、時に血まみれの西部劇もたまにはいい。おせち料理も三日も食べれば飽きてきて、カップラーメンを食べたくなるだろう。そんな時に手を伸ばしてみてはいかがだろうか。

泥まみれの荒れ地に作られたセット。確かに本作のイメージに合っている。