バイオレント・ナイト(2022年)監督 トミー・ウィルコラ 主演 デヴィッド・ハーバー(アメリカ)

 

物欲主義な子どもたちに嫌気がさして久しく、なにかと疲れ気味のサンタクロースは、それでも体に鞭を打ち、良い子にプレゼントを届けるため、トナカイの引くソリに乗ってクリスマスイブの空を駆け回っていた。とある富豪一家の豪邸に降り立ち、煙突から中へ入ったサンタは、金庫にある3億ドルの現金を強奪しようと邸内に潜入していた悪党のスクルージー一味と鉢合わせてしまう。見なかったことにしてその場を去ろうとするも、すぐさま大騒動に発展。武装集団を相手に孤軍奮闘する。

クリスマスプレゼントを届ける途中、3億ドル強奪計画に巻き込まれたサンタクロースの受難を描くバイオレンスアクション。「処刑山」シリーズなどのトミー・ウィルコラが監督を務め、「Mr.ノーバディ」などのケリー・マコーミックやデヴィッド・リーチらが製作を担当。サンタをドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」などのデヴィッド・ハーバー、武装集団のリーダーを「潜入者」などのジョン・レグイザモが演じるほか、アレックス・ハッセル、アレクシス・ラウダー、ビヴァリー・ダンジェロらが出演する。

映画はバーで、くだまくサンタクロースの格好をした男から始まる。そこにもう一人サンタの格好をした男がやってきて、二人で最近のガキンチョ共の、夢がなく功利的な態度を嘆いているが、最初にいたサンタが店を出る。屋上に上がったのに驚いた、店の女将が慌てて追いかけると、トナカイの乗るそりに乗って飛んで行ってしまう。なんと、そいつは本物のサンタだった。唐突なファンタジー展開にびっくりだが、次の瞬間に女将の頭にげろをぶちまけて颯爽と去っていくサンタ。とまあ、こんな調子で始まる本作。

サンタはプレゼントに現金を望むような餓鬼に嫌気がさしたのか、勤務態度は最悪。訪れた先の家で酒やお菓子を盗み食いしたり、マッサージチェアで揉まれながら転寝したり、全くやる気がない。まあ、気持ちはわからんでもない。最近の餓鬼は「プレゼント何が欲しい?」などと聞こうもんなら「Nintendo Switch」などと答えやがるし。

ところが銃声がして起き上がり、慌てて逃げようとするが、一人に見つかり格闘となる。靴下にビリヤードの玉を仕込んで、振り回すサンタが何ともシュール。何とか倒すことに成功するが、トナカイに逃げられてしまう。様子を窺うと武装した強盗が入り込み、セレブの家族を銃で脅している。やってられねえぜと逃げようとするが、その家の孫娘がサンタを信じているいい子だと判明し、更にもう一人に見つかり、こいつも倒す。そいつが持っていた無線機から、その子の声が聞こえる。父親はサンタを信じる娘の為に、サンタと交信できると言って無線機をプレゼントしていたのだ。彼女はそれを使って、サンタに助けを求めてきた。これを聞いたサンタは、強盗達と戦う決心をする。しかしこの女の子。ただ、助けを待つようなしおらしい子ではなく、ホームアローンのマコーレー・カルキンバリに、トラップを仕掛けて強盗一人を結果オーライながらやっつける。子供がそんなことしていいのか?まあ、自業自得だし...。

あらすじを聞いて真っ先に思い付いたのは「ホーム・アローン」。確かに似ているが、どこかマヌケで憎めなかった、あちらと違いこっちの強盗は、自動小銃を持ち完全武装で、屋敷の警備員や使用人を皆殺しにする傭兵っぽい極悪集団。それではサンタは、何か魔法でも使えるのかといえば、煙突を通れる魔法と、良い子か悪い子かわかる名簿、そしてプレゼントを出せる4次元ポケットならぬ4次元袋?ぐらいしかない。後はやたらとタフで、怪我をしても麻酔なしで縫って治す。この辺りなんかありそうかと思っていたら、後半でサンタの前身が仄めかされていたが、どうもヴァイキングだったっぽい。なるほど。それなら後半の暴れっぷりも理解できる。

強盗の目的は、屋敷の地下にあるという現金3億ドル。それも中東の誰かに送る予定の裏金を、ここの当主のばあさんが横取りしたのだ。なるほど。中東が荒れ放題なのは、このばあさんのせいなのか。しかし米ドル紙幣の最高額は100ドルだから、3億ドルとなれば300万枚だから、約3トンぐらいか?特にトラックを持ってきているように見えなかったけど、持ち出せるのか?

後半サンタは、巧みにトラップを仕掛けたり、相手の裏をかいたりして次々と敵を倒していく。その倒し方が手足を折り、頭をハンマーで叩き潰すなどホッケーマスクのサイコキラーばりにグロい。サンタを演じるはデヴィッド・ハーバー。さすがヘルボーイだぜ

半端ないほどの血しぶきが飛び散るのに、演出がうまいのか何故か笑ってしまい、最後は不覚にもうるっときてしまった。さすが87ノース・プロダクションズは侮れない。

「ホーム・アローン」と「ダイ・ハード」を足し、「サンタ・クローズ」で味付けをして3で割ったような、グロだけとユーモラスで、ハートフルな本作。ぶっ飛んでいるが最後までぐいぐいと引っ張られる快作。R-15だし、お子様に見せる映画じゃないのかもしれないが、むしろ良い子のうちに見せて「悪い子になったらこのサンタさんが来て、〇〇ちゃんの肛門に石炭ぶち込むよ」と言ってみてはどうだろうか。もちろん自己責任でだが。