ながぐつ三銃士(1972年)監督  勝間田具治 主演 鈴木やすし(日本)

 

西部に流れ着いたペロは、馬車の中で美少女アニーやのんびり顔のジミー少年と、仲好になったりした。アニーの故郷ゴーゴータウンに到着したペロ達だったが、その町ではアニーの父を始め保安官が殺され、町は無法状態だった。アニーは父の酒場をレストランに改造し、そこでペロもジミーも、新しくペロの部下になったネズミたちも働いたが、町の悪いボスの子分たちのために、店はメチャクチャになってしまう。子分たちが帰ったあとにメキシコ銀貨が落ちていたが、それはニセ金だった。ボスの酒場に忍び込んだペロとジミーは、アニーの父が、ボスたちのニセ金造りを知ったために殺されたということを知った。

 

監督は「ゲゲゲの鬼太郎」や「タイガーマスク」等、テレビアニメを中心に活躍し、本格的な長編劇場アニメは本作が初めての勝間田具治に交代。これが本作の評価を分けたような気がする。

本作は西部劇仕立てで、タイトルに反し三銃士は登場しない。それどころか、銃を持って戦うのは実質一人。ペロとアニーを含んでようやく3人だが、アニーは前作のローザ姫の様に悪党に立ち向かうことはせず、典型的なヒロインの立ち位置。ペロも、殺し屋たちと追っかけっこをするばかりで、前半の空回りっぷりは苦笑するしかなく、完全に狂言回しとなっている。3匹の殺し屋も前作は絶妙なところで現れて、予期せぬ形でペロのアシストをすることもあったが、本作は終始コメディリリーフの立ち位置で目立った活躍はない。

劇的な効果を狙い、ジミーの正体を隠したのだろうが、ボスたちの会話でペロたちが乗っている馬車に乗っているはずの保安官が、いなかったというところで、ジミーの正体はバレバレなんだから、中盤位にペロとジミーが協力して事件を追う展開にして、終盤アニーに正体を明かすという展開ならもっと面白くなったはず。最後の方で一人のおばさんがジミーの正体に気が付いて、町の人に悪党に立ち向かうように呼び掛けるが、これも空回り。ここで、人々が立ち上っていたら、盛り上がったんだけどな。

作画もラストの銃撃戦シーンが気合が入っていたぐらいで、それ以外は特筆するほどではない。

ストーリーは「シェーン」をはじめとする、典型的な西部劇だが、それにペロたちの世界観がうまく融合できていないように感じられる。スタッフはアニメで本格的な西部劇をやりたくて、この企画を立ち上げたのだろうが、そのあたりの詰めを誤ったような気がする。まあ、これも前作が規格外の名作だったからそう感じるだけで、なんの予備知識もなく見れば、普通に面白いアニメになっていたはず。

一つ良かったのは、「びっくりしたニャア、びっくりしたニャア、びっくりした、びっくりした、びっくりしたニャア」と一度聴いたら妙に耳に残る主題歌は本作でも健在だったこと。あれを聞いたら、楽しい気分になる。

余談だが、前作の「長靴をはいた猫」の初出は1697年に出版された、シャルル・ペローによる「寓意のある昔話、またはコント集〜がちょうおばさんの話」だが、本作の舞台となった西部開拓時代は1860年代以降なので200年近く差があるが、「小さいことは気にするな」というわけだろうか。次回作の「長靴をはいた猫80日間世界一周」は19世紀末のビクトリア朝時代だし。まあ、200年の差に比べれば些細なことか。