ギャラクシー・クエスト(1999年)監督 ディーン・パリソット 主演 ティム・アレン

 

20年前、宇宙探査局の活躍を描いた伝説的人気SF・テレビシリーズ「ギャラクシー・クエスト」。いまだ人気は衰えず、イベント会場は熱狂的なファンで満員だった。しかし出演した俳優たちは放送後、あまりぱっとせず、ファンへのサイン会やイベントを糧にして俳優生活を送っていた。ある日、イベント会場に、一風変わった4人組が現れた。彼らは実は宇宙人サーミアンで、悪者宇宙人サリスとの戦争を打開するため、プロテクター号タガート艦長に助けを求めに来たのだった。だが、タガート役のジェイソンはプロモーターの出演依頼と勘違いし、彼らのリムジンに乗り込む。「嘘」の概念が無いサーミアンは、テレビ番組の電波を自星で受信し、事実と信じ、宇宙船プロテクター号さえも完全に再現していた。ジェイソンはメンバー達に体験を話すが相手にされない。そこへサーミアンが再び助けを求め現れ、メンバー達は最初帰ろうとするが、営業の仕事だと勘違いして慌てて後を追う。本物の宇宙船で宇宙戦争をすることになるとも知らずに。

 

宇宙の英雄を演じる売れない俳優が、実際の宇宙戦争に巻き込まれる二重構造に、現実の「スタートレック」を絡ませた三重構造の形を取っている。前半ではかつて大流行したSFシリーズとその熱狂的なファンの活動をやや批判的に描写。実際に熱狂的ファンというのは、はた迷惑な面もある。中盤から宇宙に飛び出した元クルーたちが、サーミアン達に半ば載せられ宇宙冒険活劇になだれ込む。そうした中で、過去の栄光にすがり、未来を見いだせないでいた売れない俳優たちが、誇りと情熱を取り戻していく姿を描く。

本作のスタッフは、相当実際の「スタートレック」を調べていることがわかる。例えば、ウィリアム・シャトナー演じるカーク船長のブリッジでの座り方から、セリフの喋り方等かなり参考にしているのがわかる。演じたティム・アレンも実際に「宇宙大作戦」を見て、ウイリアム・シャトナーの癖を研究したと語っている。シガニー・ウィバー演じる命令を復唱するしか仕事のないマディソン少佐は秘書のウラーフ中尉かジャニス・ランドだろうか。トニー・シャルーブ演じる技術主任チェンは機関長のスコットだろう。アラン・リックマン演じるドクター・ラザナスは分かりやすい。ミスター・スポック以外ありえない。それぞれ「元ネタは誰だ」を探してみるのも面白い。

サーミアンが作ったプロテクター号は、ドラマに忠実に作られていて、武器もちゃんとついている。テレビの長期シリーズになると設定の矛盾や、サスペンスを盛り上げるため過剰な演出がとられることがあるが、それもちゃんと盛り込んでいるし、ドラマではさらっとしか描かれていないことが、ファンの考察で具体的に設定されている事も再現されている。その為思わぬ事態にもなるわけで、反応炉の運転を停止させる手順など知らないクルーたちが、イベントで知り合ったファンに呼びかけて指示を受けるシーンや、シガニー・ウィーバーが、数々のトラップがあることに怒り「この脚本家、殺してやる!」と叫ぶのは笑った。こうした遊び心は思わずニヤリとしてしまう。また、クルーで一番やる気のなかった、ドクター・ラザラス役のアラン・リックマンが奮起してあれほどいうのを嫌がっていた「このトカゲ頭にかけて」と叫び奮起するところはムネアツ。その直後にみんなが「タガート艦長万歳」と叫び不貞腐れるのも、リックマンらしくていい。

本作は、笑って、笑って、笑って、最後に少しだけ泣かせる映画。売れない俳優たちが、お遊び感覚でやり始め、途中で投げ出しかかるが、最後は自分たちを信じてくれた宇宙人の期待に応えるべく、一念発起して誇りを取り戻す姿に熱くなる。キャラもたっているし、前半の伏線が後半回収される、巧妙に練りこまれた脚本がいい。映画に一番大切なのは脚本だと痛感させられた。

余談だけど、ベリリウム球を求めてとある惑星に着陸した時、ゴリグナックに追いかけられるシーンは「最低の戦闘シーン」と呼ばれる、ゴーン人との戦いのパロディーだろうか。もっともこのネタはファンしか分からないだろうが。