バッド・マイロ!(2013年)監督 ジェイコブ・ウォーン 主演 ケン・マリーノ

 

気弱なサラリーマン、ダンカンは嫌味な上司や窓際への左遷、若すぎるボーイフレンドと付き合っている母親など、頭の痛い問題ばかりで、ストレスが極限に達し、猛烈な腹痛に襲われるように。不安になったダンカンが消化器内科を受診したところ、大腸に巨大なポリープが発見された。ちょうどその頃、アライグマと思しき凶暴な生物が人間を襲って殺すという事件が発生し、世間を震撼させていた。ほどなくして、ダンカンはポリープと事件の間に関連があると知らされる。実は、ダンカンのポリープは自我を宿しており、彼にストレスを与えた人間を殺害していたのである。ダンカンはポリープをマイロと名付け、彼と共存する道を探ることになった。

 

平凡なサラリーマンの腸にストレスのためにできた腫瘍がモンスターとなり、尻から出現してストレスの原因となる相手を殺害するという奇想天外な設定で、アメリカでも話題をさらった異色のホラーコメディ。ただ「誰でも皆さんご覧下さい」という映画になっていない。むしろかなりB級映画ファンの中でもかなり観客を選ぶ映画だ。

気が弱く頼まれれば嫌とは言えない主人公ダンカン。両親ともに微妙な関係で、美人でやさしい妻も本来は癒しになるはずが、彼にとってはそれもストレスに感じる。そんな彼にとって、ポリープが唯一心を通わせる事が出来ると友いうのが何とも皮肉な設定。こうしたキャラクターは、社畜精神にあふれた日本人のほうが、共感が持てるかもしれない。

そのポリープ、マイロだが、愛らしさと恐ろしさ。そして汚さが同居したクリーチャー。普段は腸の中に隠れ、ダンカンがストレスを感じると出てきて相手を殺すのだが、彼の肛門はどんな構造になっているのか、知りたいような知りたくないような。

主人公と心を通わす異形のモノが、本人に代わって殺人を繰り返すという映画自体、ホラーではよくあるので珍しくないが、それは主人公の思念が具体化した霊体だったり、可愛がっている人形やペットだったりで、観客は割と感情移入しやすいと思うただ、それが腸にできたクソまみれのポリープにどれだけの人が共感できるか?この映画を受け入れられるか否かはそこにかかっている。本作最大の関門さえクリアできれば、マイロに限りなく愛おしさを覚え、映画を十分に楽しめるはずだ。

一部には「ETに似ている」との評価もあるようだが、主人公の前ではおとなしくストレスを感じると狂暴になるのなら、どちらかと言えば「グレムリン」が近いかもしれない。ただ本作を受け入れられない層は、ETやグレムリンと比較されることに嫌悪感を露にするかもしれないが。

後半になってダンカンと父親の意外な(と言うか、半ば予想された)関係も明らかとなり、それが大団円?に至る布石となっている。

何度も触れたとおり、本作を一言でいえば「観客を選ぶ映画」となる。B級映画ファンなら下品な下ネタは耐性がついていると思うが、下は下でも不潔な方はどうだろう?本作に手を伸ばす前にそのあたりをじっくり考えて手に取って欲しい。そうしないと後悔することになるだろう。私のように….

ちなみに、本作は2013年製作にかかわらず、CGを使わずに、パペットでクリーチャーの感情表現や動きを、表現したことも注目された。ただ、瞬きだけはCGを使ったとか。昔瞬きをするパペットもあったが、すでにロストテクノロジーなのか…