DAGON(2001年) 監督 スチュアート・ゴードン 主演 フランシスコ・ラバル

 

IT長者4人がバカンスを楽しんでいたが、乗ったヨットが座礁し、目の前の港町に助けを求める。しかし、その港町は、古くからダゴンという神を崇拝する奇妙な住民たちが住んでいた。途中妻と別れたエゼキルはホテルで異様な一団に襲われ、彼らから逃れるとともに妻を助ける為、村の中を探し回る。そうした中一人の老人と出会う。彼から衝撃の事実を耳にする。

 

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト原作で、監督は「ZOMBIO/死霊のしたたり」と同じスチュアート・ゴードン。同名のラブクラフトの小説があるが関連性はなく、タイトルに反し「インスマスの影」が原作。ゴードン監督らしくエログロ描写もあり、原作の禍々しい雰囲気も伝えている。原作と異なりスペインに舞台を打ちしているが、それに伴い町の名前を「インスマス」から「インポッカ」に変更している。

スペインと言えば乾いた大地。燦燦と降り注ぐ太陽。オリーブオイルの料理。情熱的なフラメンコ。そしてスペイン人は陽気で開放的な人柄、といったあたりがステレオタイプのイメージだが、この映画は終始雨が降り続き、太陽がささない曇天、生臭い魚、陰気で閉鎖的な村人と、そうしたイメージからかけ離れている。正直スペインを舞台にした意味が見られないが、現代のアメリカを舞台に「インスマスの影」を作れば、人種差別など禁忌に触れる部分が多いから、あえてスペインにしたのかもしれない。もっとも、制作費を節約したかっただけかもしれないが。

冒頭巨大な海底遺跡に圧倒されるがそれは夢と言うのはよくある出だし。これはこれで悪くないし、ラストに繋がるのもいい。目覚めたポールはノートパソコンで旅行中なのに株価のチェックをするにはドン引き。そして怒ったバーバラがノートパソコンを海に投棄するのにさらにドン引き。夫婦そろってろくでもないな。Iphone発売が2007年だから、この頃はノートパソコンなのか。つくづく便利な時代になったと感心する。

終始続く雨の描写も含め、全体的に原作の怪奇で陰鬱な雰囲気は良く出していたと思うし、村の女王?を演じたマカレナ・ゴメスのデカダンスな美しさも魅力。会って早々ポールを誘ってくる彼女の上半身は美女なのに、下半身はタコの足のような吸盤のある足が生えている造形は、おぞましさとともに美しさも感じてしまうが、この辺りの変態っぷりはスチュワート・ゴードン監督は変わっていない。しかも彼女は主人公ポールと兄妹の関係だという。いやそれは近親相姦だろう。いいのか?まあ、クトゥルフ神話だし。

原作のザドック・アレンに相当する人物も、エゼキルと名を変えて登場し、原作通り主人公に町の成り立ちを説明するが、原作ではフェードアウトするのに。本作では生きたまま顔の生皮を剥がされてしまうというグロ展開。他にも得意のスプラッター描写もぬかりない。なかなかにエロくてグロい佳作に仕上がっている。

余談だが本作を見ると、日本の「インスマスを覆う影」の影響があるように思える。DVDなどが海外で発売されたことはないはずだが、YouTubeで公開されていたので、ゴードンが目にした可能性はあると思うがどうだろうか。今となっては確かめるすべはないが。