ノストラダムスの大予言(1974年) 監督 舛田利雄 主演 丹波哲郎

 

環境学者である西山良玄は、代々西山家に伝わる「諸世紀」の研究をしていた。そんなある日、娘・まり子の恋人の中川が帰国する。数日後、夢の島で何らかの有害物が原因で巨大化したナメクジが大発生し自衛隊により火炎放射器で退治される事件が発生。やがて日本各地では奇形児が増加する一方で、特定の能力が異常に発達した子供が現れる。

そんな中、世界各地で異常気象が発生。さらに、成層圏に滞留した放射能がニューギニアに降り注いだとの知らせが届き、国際合同調査隊が派遣されることになった。良玄の研究所からも2人の部下が派遣される。しかし合同調査隊は行方不明になり、良玄や中川らによる第2次合同調査隊が派遣された。そこで彼らが目にしたのは、放射能によって崩れた生態系や、食人鬼となり襲いかかる原住民、そして洞窟の奥で生きる屍と化した第1次調査隊隊員の姿であった。そのころ、SST事故によるオゾン層の破壊で日本列島に超紫外線が降り注ぎ、山火事やコンビナートの炎上が続発。さらに、異常気象は世界各地に拡大し、各国の穀倉地帯は軒並み全滅。暴騰する食料価格や大災害で人心は荒廃し、食料目当ての暴動や若者の退廃が進行する。このまま人類は滅亡するのか...

 

東宝は「日本沈没」の大ヒットを受けて、パニック映画の第2弾として本作の制作を決定する。当時大ベストセラーとなっていた五島勉の著書「ノストラダムスの大予言」が原作だが、ほぼオリジナル脚本で、娯楽性の高い作品となっている。映画のプロットを練る際の科学考証の過程において、アドバイザーの1人であった西丸震哉の影響を色濃く受けたものとなった。

俗に「封印作品」と呼ばれるものがある。様々な理由で上映やテレビ放送されなくなった作品だが、関連団体からの抗議で封印されたものの、過剰反応と思えるものも多い。だが本作に関してはマジでやばい。

ニューギニアでは放射能で狂った原住民が食人族となっており、さらに廃人となった第1次探検隊を拳銃で始末する。狂ったら殺していいのかと突っ込みたくなるが、こんなの序の口に過ぎない。奇形児(これも現在ではタブーだが)が多く生まれる村で、医師(演じるは名優志村喬)がひそかに始末していると平気で言うし、無軌道な若者たちがバイクに乗って、集団で崖からダイブするし。極めつけはラスト。核戦争の後でわずかに生き残った人は異様なミュータントとなって、食べ物をめぐり殺しあう。他の描写も非科学的なものが多く、岸田今日子によるおどろおどろしいナレーションもあって、当時の餓鬼どもに大いなるトラウマを与えた怪作だ。現在ではもちろんアウトだが、当時でさえロードショー公開されたのが不思議なレベル。

これまで何度かソフト化の話はあったが、現在に至るまで一度もビデオ、DVD、ブルーレイ等ソフトは発売されていない。もっともイタリアではDVDが発売されたらしく、一時Amazonでも買うことができた。レビューから2020年までは買えたようだが、2023年1月の時点で品切れとなっている。見られないとなると見たくなるのが人情で、様々なルートで海賊版が出回っている。ちなみに私もあるオークションサイトでVHSビデオを入手したことがある。相当画質が悪かったので、ダビングを繰り返したのだろう。

なお、「大阪府原爆被害者団体協議会」と「原水爆禁止全面軍縮大阪府協議会」が、実際の原爆症を歪曲したとして反倫理的・差別的であると、11月に東宝関西支社に抗議して上映の中止を求めたが、これも封印された理由だろう。

現在では東宝の黒歴史となった本作だが、公開時は文部省の推薦がついていた。なんの冗談かと思うが、アドバイザーの西丸震哉が、当時農林省食品総合室長だったことも大きいだろう。

ちなみに本作の同時上映は、ルパン三世史上最大の黒歴史と言われる「ルパン三世念力珍作戦」。類は友を呼ぶとはこのことか。