宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟(2014年) 星巡る方舟 監督 出渕裕 声の出演 小野大輔

西暦2199年、イスカンダルで「コスモリバースシステム」を受領したヤマトは、地球への帰路につく。同じ頃、七色星団の戦いを生き延びたフォムト・バーガーが率いる、第二空母ランベアのもとに、バーガーの同期であるネレディア・リッケ率いる第8警務艦隊が到着。ヤマトとの講和がなったため帰還が命じられるが、ヤマトへの復讐を誓うバーガーは、ネレディアの説得にも耳を貸さなかった。その時、バーガーの耳に謎の歌が聞こえ、艦内に警報が響き始めた。
その頃、大マゼラン銀河の外縁部で、グタバ遠征軍大都督「雷鳴のゴラン・ダガーム」率いるガトランティス艦隊に遭遇。戦闘を避け、先を急ぎたいヤマトは、ガトランティスの最新兵器から逃れながらワープするが、その結果薄鈍色の異空間に迷い込んでしまう。謎の惑星を見つけたヤマトは、情報収集のため古代ら5人のクルーが惑星に降下するが、そこでガミラスのバーガーらと出会うのだった。

「宇宙戦艦ヤマト」のリメイクであるテレビシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2199」とは異なり、完全新作映画。完全新作の劇場公開は「宇宙戦艦ヤマト完結編(1983年)」以来となる。内容は「宇宙戦艦ヤマト2199」のサイドストーリーで、時間軸的には第24話と第25話の間の話で、新たなる敵ガトランティスとの戦いや、謎の惑星における異星人との相互理解を描いている。
最初に断っておくが私は「2199」派で、「2202」以降の作品は、あまり評価していない。「2202」の最大の問題点は、「2199」を否定したことにあると思っている。その為、本作で描かれたガトランティスに関する設定は、「2202」では全く反映されないことになった。私はその原因は、制作総指揮の西﨑彰司と、シリーズ構成の福井晴敏の起用だと考えている。西﨑は福井の起用を「2202」だけの一過性のものではなく、今後のシリーズの展開までを見通したものだと考えていたようだが、この「前作を否定したうえで、その続編を作る」と言う矛盾したことをやったがため、物語の根幹に異常なまでの歪さを抱え込むことになった。そして福井も「スタッフを変える理由というのは単純で、『前とは違う作品を作ってくれ』ということですよね。」と語っているので、その方針で作ったのだろうが、その結果どうなるかという事は考えなかったのだろうか。それなら何故別のシリーズにしなかったのか?「2199」を新たに作り直さなくても、旧シリーズの第1作の続編という形にすれば良かったのだ。実際「2199」及び本作を見た後で「2202」を見ると、大半の観客は混乱してしまうだろう。それに比べれば、副監督の暴走なんて、大した問題ではない。もっともこれは個人的な考えで、「2202」が好きな人や、福井晴敏氏のファンも違う考えを持っているだろうし、その考えを否定する気はない。ちなみに私は福井晴敏が関わった「機動戦士ガンダムUC」は名作と思っている。「UC」はそれ以前のガンダムを否定していないからだ。
本作は冒頭から、ガトランティスの火焔直撃砲が無双する熱い展開。前作でフェードアウトしたかと思ったバンデベルがその餌食となる。そして復讐を誓うバーガーと、彼を優しく諭すネレディアの関係もいい。本作のバーガーは、人種差別思想は影を潜め、ザルツ人と勘違いした古代たちにも、平等に接するようになっている。前作のバーガー的な立ち位置になるのがクリム・メルヒ。最初はヤマト側とやりあうが、最後はバーガーに諭され共にガトランティスに立ち向かう。ガミラス側に比べると、ヤマト側特に古代ら主要キャラはいまいち印象が薄いが、本編ではほぼモブだった桐生美影と沢村翔がそれを補っている。爽やかカップル誕生が期待されたんだがな~。
クライマックスは、ヤマト、ガミラス連合艦隊VSガトランティス艦隊の大決戦。ガミラス艦隊の出現に驚くヤマト側の中で、古代が「ヤマトはこれよりガミラス艦隊と共同で敵にあたり、これを叩く」の声とともに、ガミラス艦隊とシャンブロウを守るように布陣する。このムネアツ展開は痺れた。火焔直撃砲に苦戦するが、ここで真田さんの「こんなこともあろうかと」が発動。バーガーが他のガトランティス艦隊を引き受けているうちに、ゴラン・ダガーム率いる、メガルーダとヤマトの一騎打ち。すべてが終わった後で廃墟同然のミランガルの艦橋で「メリア。またそっちに行きそこなっちまったよ」とひとりつぶやくバーガー。熱いぜ!
中盤のホテル内の描写が長いとの評価もあるが、あれぐらいないと地球、ガミラス、そしてジレル人の三つの種族が理解しあう不自然だから、ちょうどいいと思う。それにその分何か挿入するのも難しいだろう。
余談だが、小説版でバーガーは、古代たちを地球人だと早い段階で見破っていたが、その理由はヤマトの戦闘糧食。バーガー曰く「ガミラスのはあんなにうまくねえ」。なるほど。それでメルダはヤマトのパフェに感激していたのか。
第二次大戦後、日本の食生活がアメリカナイズされアメリカにも日本食が浸透したことで、双方の理解が増したように、続編でガミラスと地球が、食を通して相互理解を図るという展開も面白かったのに。