バンディダス(2006年) 監督 ヨアヒム・ローニング エスペン・サンドベリ  主演     ペネロペ・クルス サルマ・ハエック

19世紀中頃のメキシコ。ニューヨーク銀行から派遣されたジャクソンは、鉄道開通のために、貧しい民衆から不当な値段で土地を奪い、邪魔する者は容赦なく殺害させていた。銀行によって父親を殺されかけた貧しい農民の娘マリアと、同じく銀行に父親を殺害された裕福な銀行頭取の娘サラは、銀行に復讐するために共謀して銀行強盗を計画する。育った環境や価値観の違いから、反発し合う二人だったが、元銀行強盗のビルや刑事クエンティンも巻き込んで、次々と襲撃を成功させていく。そこでジャクソンは、銀行に預けるはずだった州の金塊をテキサスに移送することにする。むろん二人をおびき出すためだったが、そこには彼の更なる陰謀があった。

フランス,メキシコ,アメリカ映画。19世紀のメキシコシティで、全く境遇が違う2人の女性が奪われたものを取り返すため銀行強盗となって活躍するウェスタン・コメディ。ペネロペ・クルスとサルマ・ハエックのお色気とコスプレも見どころ。
二人のラテン系美女が義賊となって悪徳銀行家と戦うお話かと思いきや、途中で二人の見方になる刑事が、銀行頭取の娘のフィアンセで、結局暗い話になるのかと思いきや、最後は結局収まるとこに収まるというご都合主義そのものの脚本。いったい誰がこんなの書いたんだと思ったら、リュック・ベッソンというある意味納得の人選。ノリと勢いで突っ走り、少々の破綻は力でねじ伏せるのがリュック・ベッソン流。本作もその絶大な破壊力をいかんなく発揮している一方で、彼は俳優(特に女優)の魅力を引き出すのもうまい。二人のラテン美女の魅力を存分に引き出しているが、それ以外何があるのかといえばこれははっきり断言できるが何もない!
公開時にペネロペ・クルス32歳、サルマ・ハエックが40歳。まさに女ざかりの溢れる色気に惑わされ、多少の事は気にならない。この二人の美女に存分に愛され、いい意味で弄ばれ?最後は逆玉に乗るアメリカの刑事をスティーヴ・ザーンが演じる。これほど羨ましいと感じた役はないと断言できる。
監督としてヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリの二人がクレジットされているが、別にどちらかが途中降板して、もう一人が立てられた訳でなく、この二人はコンビでメガホンをとることが多いようで「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」も二人が共同で演出している。
背景となっている19世紀中ごろのメキシコは、長かったメキシコ独立革命を経てようやく独立を果たすが、国内は不安定。更に外交も輪をかけてぐちゃぐちゃで、テキサスをめぐりアメリカとテキサス独立戦争が起き対立を深める。その後南北戦争によりアメリカが手を引き一息つけるかと思いきや、今度はフランスが勢力を伸ばし、ハプスブルク家のオーストリア大公フェルディナント・マクシミリアンがメキシコ皇帝マクシミリアーノ1世として戴冠。メキシコ帝国と言うフランスの傀儡国家が誕生するなど、国内は混乱を極めていたころ。その元凶を作ったアメリカとフランスが映画の製作に名を連ねているのを見ると、歴史とは過ぎ去るものだと感じさせられる。
余談だが、二人のセクシーな美女が、メキシコで大暴れする映画といえば、ブリジット・バルドーとジャンヌ・モローが共演した「ビバ!マリア」があるが、監督を務めたルイ・マルの思想が垣間見える、あちらとは似て非なる本作は単純に楽しめる。