炎の少女チャーリー(1984年) 監督 マーク・L・レスター 主演 ドリュー・バリモア
大学在学中に新薬の被験のアルバイトに参加して知り合った、アンディとヴィッキーはその新薬により、超能力を獲得する。だが、彼ら以外の殆ど被験者は死亡した。
その後、二人は結婚しチャーリーを授かる。2人は娘も超能力を持って産まれたことを知る。チャーリーは感情がたかぶると、火を発することができた。
チャーリーが9歳になった年のある日。アンディが仕事から帰ってくると、妻のヴィッキーが殺されていた。一家は既に新薬実験を行った政府の秘密機関「ザ・ショップ」に監視されていたのだ。「ザ・ショップ」はチャーリーのパイロキネシスの能力を分析し、兵器に応用しようとしているのだった。「ザ・ショップ」の責任者ホリスターが、インディアンの殺し屋ジョン・レインバードにチャーリー捕獲を命じていたアンディは、「ザ・ショップ」のエージェントの手からチャーリーを救い出し、二人だけの孤独な逃亡が始まった。
念力発火能力を持つ少女と、彼女を狙う政府の秘密機関との闘争を描く、スティーブン・キングの小説「ファイアスターター」の映画化。キングの著作は映画化されることが多いが、この作品が7本目にあたる。
当初監督はジョン・カーペンターが予定されたが、ビル・フィリップスが執筆した脚本が原作から大きく異なるものとなり、さらに特撮の費用も多額となったため中断となる。その後カーペンターとフィリップスは、83年に同じくキング原作の「クリスティーン」を製作する事となる。脚本はスタンリー・マンに移り、ストーリーも原作に近く、特撮費用も削られたため、監督はマーク・L・レスター、主演は当時8歳のドリュー・バリモアに決定し、ようやく製作が開始された。個人的に、カーペンター版の「炎の少女チャーリー」も見てみたい。
この頃は悪役が多かったチャーリー・シーンだが今作でも、目的のためには手段を選ばない冷酷でエキセントリックな秘密機関のトップを演じている。本人はハリウッドで随一のリベラル派で民主党支持者でその為か、しばしば問題も起こしている。
ジョージ・C・スコットは、チャーリーの心理に巧みに付け込む狡猾な工作員を演じているが、設定がアメリカ先住民。この辺り現在ではどうなるのかと思っていたが、2022年のリメイク版では、原作通りアメリカ先住民のままだった。
この映画の成功は主演のドリュー・バリモアに尽きる。一見可愛らしい美少女ながら、怒りが頂点に達すると火を放ち、すべてを焼き尽くす悪魔的な力を持つチャーリーは、天使と悪魔の両面を表現することが要求されるが、その難役を見事にこなして見せた。父の言いつけを守り、必死で能力を抑えていたチャーリーが、終盤怒りを爆発させ組織の施設を職員たちが逃げ惑う中、紅蓮の炎で焼き尽くすシーンはカタルシスを覚える。
もっともドリュー・バリモアは、2年前の「ET」での成功と引き換えに、学校では有名子役というレッテルからいじめにあい、登校拒否となったという。その為、人としてのマナーや常識を知らずに育つ事となり、幼い頃から夜遊びを覚えた9歳から酒と煙草を始め、10歳でマリファナ。12歳の時にはコカインを使用するようになり、14歳の時には自殺未遂の騒ぎを起こすほど生活が荒れていた。この映画の撮影時にはすでにその兆候は表れていたはずだが、そんな事微塵も感じさせない名演技で、観客を魅了する。やはり「女優は化ける」か?そのまま転落人生かと思いきや、奇跡の復活を遂げたのはごそん時の通り。
ラストで、すべてを明らかにしようと新聞社に入るシーンで終わるが、原作だとそこは当時サブカルチャー評論誌であった「ローリング・ストーン」誌だが、映画ではリベラルな論調で知られる「ニューヨーク・タイムズ」紙になっている。ここはファンの間で賛否分かれたという。