太陽にかける橋/ペーパー・タイガー(1975年) 監督 ケン・アナキン 出演者 デヴィッド・ニーヴン 三船敏郎 ハーディ・クリューガー
東南アジア某国。日本大使の一人息子が家庭教師と共にテロリストに誘拐された。教師は自分を大戦中の勇士だと吹聴したが、それは虚栄心から出た他愛の無い嘘。実は第2次大戦時教師で戦場に出たことはなく、足の悪さも戦傷ではなく病気だった。だが偶然大使主催のパーティーでテロリストたちの襲撃を阻止することになったことから、少年から絶大な信頼を得ることになってしまう。しかし元から平凡な男だから、誘拐された当初は脱出しようとする少年を抑えることに。しかし自分を勇者と信じる少年の熱い思いを受け本当の勇気を取り戻し、テロリストに立ち向かっていく。
アクションを得意とするケン・アナキンだけに90分の短い中に、冒頭の爆弾テロやパーティー襲撃。山の中の脱出行にヘリによる襲撃など小気味よいアクションが盛り込まれている。イギリス映画だから最初は香港でロケをやったのかと思ったが、どうやらマレーシアらしい。確かに香港にしては山が多い。
原題の「ペーパータイガー」所謂「張り子のトラ」の事で、最初は文字通り張子の虎だった主人公が、自分を慕う少年の情熱により本物のトラへと変貌していく姿を描いている。
デヴィッド・ニーヴィンが十八番の癖のある英国紳士を好演。三船敏郎も公的立場と父親の情とのはざまに苦悩する父親を熱演している。そしてハーディ・クルーガーは教師の正体を暴きつつも、最後は沈黙を守る正義感のある記者を演じている。しかし大使の息子を演じた安藤一人が素晴らしい。三大名優を完全に食っている。古くから言われるが、どんな名優も子役と動物にはかなわない。
なお三船敏郎の妻を演じたのは、日系アメリカ人女優の高美以子。三船とは後にテレビ映画「将軍 SHŌGUN」でも共演することになる。
欧米の映画にありがちな、勘違い日本の描写が少ないのも特徴。おそらく三船をはじめ、日本側キャストと入念な打ち合わせをやったおかげだと思うがどうだろうか。だから、三船敏郎が真剣で素振りをするのはご愛敬だろう。また、劇中で弘一少年が読む漫画雑誌が少年サンデーで、読んでいたチャンバラ漫画(子連れ狼風?)の主人公の侍が、三船敏郎そっくりなのは笑った。今なら少年サンデーだから「名探偵コナン」風になるかも?