遊星王子・遊星王子 恐怖の宇宙船(1959年)監督:若林栄二郎 主演 梅宮辰夫

宇宙征服を企む銀星人まぼろし大使は、テレビを使って日本中に警告を発する。警官隊や自衛隊の攻撃は、まぼろし大使の宇宙船に全く歯が立たず地球は危機に陥る。その時、どこからともなく流星のように飛んできた円盤に乗って現れたのが遊星王子だった。かくして真城博士が発明したロケット燃料を奪おうとするまぼろし大使と、遊星王子の死闘がはじまった。

雑誌「少年」に連載されテレビでもおなじみの伊上勝の同名小説を映画化した空想科学活劇で、当初はテレビドラマとして制作された。宣弘社のテレビヒーロー第2弾であり、日本初の宇宙人を主人公とするテレビヒーローの劇場版。「遊星王子」は1959年5月19日、「遊星王子 恐怖の宇宙船」は同年5月25日公開された。当時の子供向き作品は、このように連続公開されることは珍しくなかった。
森田新が脚色し、「少年探偵団 敵は原子潜航艇」の若林栄二郎が監督した。テレビシリーズの好評を受けて制作されたが、主演は村上不二夫から梅宮辰夫に交代するなど、テレビ本編の劇場版ではなく、基本設定のみを活かし、出演者やコスチュームデザイン、細部設定は一新されている。設定のみ生かしたリブート版と言ってもいいような作品。当時のちびっこは映画館に行って驚いただろう。
アメリカでは、「プリンス・オブ・スペース」のタイトルで2作を1本にまとめた83分の再編集版が1962年にテレビ放映されたが、評判はどうだったのだろう。
現在では主演の梅宮辰夫は、やくざ映画の組長役か、料理番組、あるいは娘の梅宮アンナのパパという、印象しかない人が多いかもしれないが、この頃は細面ですらりとした二枚目。このままだとあまり大成しなかったかもしれないから、やくざ映画に出演し、大胆に路線変更したのは大成功と言っていいだろう。
銀星人は魔女のような鉤鼻で、全身タイツとまるでエド・ウッドの映画に出てくる宇宙人のようなスタイル。まぼろし大使を演じた岡譲司は、恥ずかしかったことだろう。ちなみにキャスト表を見ると、銀星人の中に八名信夫がいたようだが、映画を見る限り確認できなかった。
銀星人は、地球を凌駕する科学文明を持っているのに、わざわざ地球人の科学者を誘拐したり、その科学者を地球への降伏勧告にだけに使ったり、何がしたいのかよくわからない。また肝心の銀星は地球から70万キロというセリフがあったが、地球と月からの距離が約38万キロなので、地球と月の距離の2倍ということになる。無論そんなところに惑星はない。この辺りの脚本の緩さは当時としては仕方ないか。
ちなみに梅宮辰夫から可愛がられていた俳優の岡崎徹は、自身が「仮面ライダーアマゾン」への出演を一旦断ったことを告げたところ、梅宮から自分も「遊星王子」に出演していたことを話され「仕事を選べるような立場なのか」と諭され、「アマゾン」への出演を決意したという。その後岡崎はドラマ「非情のライセンス」の撮影中にオートバイで転倒し、長期入院することに。その為、芸能界に復帰せず引退するが、その後も仮面ライダー関連のイベントなどには出演し、本人にとってライフワークとなる。信頼する先輩の意見には、耳を傾けるべきというエピソードだ。