今回は集合物譲渡担保及び集合債権譲渡担保について説明する。



<集合物譲渡担保>
 ①集合物譲渡担保とは
  ・集合物(集合動産)…客先倉庫内にある商品や原料など。
  ・確定集合動産…機械設備、什器備品、営業設備等確定している動産を集合体として一括担保の目的とする。
  ・変質集合動産…工場内で原料から製品へと加工され変質していく。
  があり何れも担保取得可能である。

 ②目的物の特定とは
  ・種類の特定
   →種類の指定のみで特定されるということはほとんどなく、他の特定方法である所在場所、量的範囲との総合的な関係で決定される。
  
  ・場所の特定
   →特定の倉庫、工場あるいは○○倉庫の3階部分等と具体的に決める。

  ・量的範囲
    →「工場内の物全部」や「倉庫内の物一切」

  などにより特定する。


 ③集合物譲渡担保の実行手続
  ・換価→任意売却または競売して被担保債権に充当する。



<債権譲渡担保>
 ①債権譲渡担保とは
  ・債務者が売掛金等の債権を持っているときには、その債権を担保として譲渡させる方法がある。
  ・債権の譲渡性は原則として認められているが、認められない例外として下記事項がある。
   →債権の性質が譲渡を許さない
   →法律上の譲渡が禁止されている
   →当事者間で譲渡禁止の特約をしている

 ②債権譲渡の構造
  
  ・BはCに対し有する売掛債権をAに譲渡
  ・AはCに対し、以後Bに代わり債権者となる
  ・Cは売掛債権をAに対し支払い、Aはこの受領金をBに対する債権の回収に充当する

 ③債権譲渡の方法
  ・「債権譲渡証書」に判をもらう
  ・第三者対抗要件として、債務者から第三債務者の異議を認めない同意を「同意書」等の形で取り付ける(同意書には公証人役場で確定日付をとる)か、
  ・直接の与信先に信用不安が起こった時に第三債務者に対し内容証明郵便で「債権譲渡通知書」を発送する。(「債権譲渡通知書」は旧債権者が通知人となるため、予めこの通知書に判を押させ新債権者において発送手続きを代行する)

  ・第三者対抗要件としては同じであるが、第三債務者の同意を取り付けた場合と単に通知書を送りつけたのとでは効果に大きな違いがある。
  ・単に通知書を送りつけただけだと、第三債務者からそのような債権は存在しないとか、相殺したから支払うものではないとか様々な異議、抗弁がでる可能性があり、せっかく債権譲渡を受けても無駄に終わることが多い。
  ・この点異議を認めない同意を取り付けておけばこの様な心配は無いので、できるだけ同意を取り付けるよう努力すべきである。
  ・債権が二重、三重に譲渡される場合があるが、確定日付の前後(正確には確定日付のある通知の到着の前後)により優劣が決まる(早い者勝ち)。



<集合債権譲渡担保とは>
 ①集合債権譲渡担保とは、
  ・債務者が現有している債権のみならず、将来取得する売掛代金債権その他の債権も譲渡担保の方法で一括して担保にとることができる。
  ・最後にとれる担保という位置付けであり、集合債権譲渡担保契約を締結し担保取得することになる。実効性に問題があるが、緊急時のために取得しなければならない場合は多い。

 ②集合債権譲渡担保の注意点
  ・譲渡債権を特定する際の問題
   →譲渡担保が有効と認められるためには、譲渡担保の対象となる債権を特定する必要がある。特定の基準・方法としては第三債務者(売掛金等)債権発生原因債権の種類及び内容担保限度額等を規定しておく必要がある。

  ・対抗要件の問題
   →集合債権譲渡担保の場合も登記制度が導入され、対抗要件の問題は従前に比して整理されている。しかし、実際に登記する場合には信用不安に繋がるという問題がある。集合債権譲渡担保契約に基づき、債務者の第三債務者に対する債権が債権者に譲渡された旨通知する方法においても信用不安情報の蔓延を防ぐため通知書の発送はぎりぎりまで見送られる場合が多いように集合債権譲渡担保の登記制度も実務的には利用困難な面があるともいえる。
  ・従って、多重譲渡の可能性がある上に、破産・会社更生の場合管財人により否認される可能性が高い。更に、実行した際、債権自体があるかどうかが不明確なため担保としての実効性には疑問が残る。


 ③集合債権譲渡担保の実行手続き
  ・第三者への通知後取り立て。払ってこない場合は取立訴訟の提起を行う。

以上