前回保全・担保③(保証取得時の注意点)の時に「法人保証に取締役会議事録写しが必要」と記載したが、なぜ必要なのかという問合せがあったので、今回解説する。


<多額の借財に当たる保証>
 ・取締役は保証の金額がその会社にとって多額と認められる場合には、取締役会の決議を得なければならず、その取締役会の決議を得たという確認を取るために、取締役会決議の議事録写しを取得する

 ・これは会社法362条4項に「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することが出来ない。」とあり、4項の2号には、「多額の借財」と記載がある。
 
 ・つまり、会社の資産規模や利益額などと比較し相対的に保証金額が多額にあたる場合は、取締役会での承認決議が必要であり、この承認決議を欠いた保証契約であれば、無効になる可能性がある、となる。

 ・したがって、その保証契約が無効とされないように、多額の借財にあたりそうな場合は取締役会の承認決議を得ていることを確認すべきであり、エビデンスとして議事録の写しを取得することは基本動作である



<利益相反における保証>
 ・もう一つ、保証を差し出す際に取締役会議事録の写しを取得すべき場合があり、それは利益相反取引における保証の場合である。
 
 ・利益相反とは、自己や第三者の利益を図り、会社の利益を損なう行為のことである。例えば取締役個人としての借金に会社が保証を差し入れるような場合であり、取締役が会社の利益よりも個人の利益を優先して会社の利益と相反する疑いが高い場合は、「取締役会(取締役会非設置会社は株主総会)での承認」が必要となる
 
 ・これは会社法356条1項で「取締役は次に掲げる場合には、株主総会(取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。」と記載があり、
  その3号には「株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき」と記載がある。
 
 ・つまり、取締役会が①取締役の債務を保証する時及び②会社と取締役の利益が相反する時、に重要な事実を開示して、承認を得るための報告をしなければならない。
 
 ・もしも、株主総会での承認決議がなされないまま保証契約を締結した場合、「債権者が会社の承認決議がないことを知りつつ保証契約を締結したこと」を会社が主張立証することにより保証契約は無効とされる場合がある。

 ・したがって、保証の内容が利益相反取引にあたる保証でないかも確認し、該当する場合は、取締役会の株主総会決議を得る必要があることに注意すべきである。


以上