本日は今までにも出てきた土地の評価方法について述べる。

<1.不動産調査の意義>
  取引先の不動産の全体を丹念に調査すれば、取引先の財務分析で把握していた財務内容の裏付けが取れ、実質的な資金繰りの余裕度・逼迫度が把握できる。


<2.不動産登記簿謄本の見方> 
土地の権利関係を見るのに必要なものが不動産登記簿謄本となる。
サンプルはこちらから見ていただければと思うが、具体的な見方は下記ホームページから参照されるとよいだろう。

http://www.rclo.jp/general/report/cat56/211/

簡単に説明すると、
表題部:不動産の所在や面積、地目(宅地、商業用途、農業用途など)の表記。
権利部(甲区):所有権に関する事項を記載。○○年に○○が取得、〇〇年に○○に売却など。
権利部(乙区):所有権以外の権利に関する事項を記載。抵当権、根抵当権の設定や債権者、債権額、債務者など。

ちなみに登記情報は一昔前は閲覧するために法務局に行かなければいけなかったが、現在は登記情報提供サービスから取得することが出来る。


<3.不動産価値の算定方法>
①簿価に基づく算定
 ・取引先に所有土地をヒアリング、それぞれの価値も大よそ把握する。
 ・価値に関しては参考(下記②~④の評価の方が重要)なので、聞きづらい場合は「どこどこに土地を持っている」だけの情報でもヒアリングする。


②路線価に基づく算定
 ・国税庁発表の路線価図(http://www.rosenka.nta.go.jp/)から路線価を算定する。
 ・路線価とは固定資産税賦課の計算根拠となる不動産価格の算定に用いられる方法である。
 ・路線価図の説明はこちら参照。


③周辺販売価格に基づく算定
 ・不動産販売サイトなどで近くの同様物件の㎡当たりの販売価格を算定する。
 ・取引先所有物件の㎡を乗算して、価値を算定する。


④賃貸物件の場合は、賃料のDCFに基づく算定
 ・土地と建物が一緒に所有されており、賃貸されている場合は賃料を計算し、その賃料から現在価値を算定する。
 ・マンション担保価値評価サンプルはこちら参照。
 ・建物のみを所有しており、賃貸などしていない場合の算定価値は通常0とする。


<4.不動産価値算定実務>
 登記簿謄本を取得した後に権利関係を整理、上述①~④の価値を算定し不動産集計表を作成する。
 サンプルはこちら

 作成上の注意点は
 ・物件は、できるだけ自分の目で確認する。
 ・共同担保関係を正しく整理すること
  →共同担保とは当該不動産担保と共に差し出されている担保を示す。不動産登記簿謄本で確認が必要。
 ・担保余力は、幾ら残っているかという点。担保余力が十分ということは企業抵抗力がある。
 ・新興の急成長企業は企業抵抗力が弱い為、意外に脆く資金繰で破綻するケースがある。
 ・一つの不動産に多くの銀行から担保を設定されている場合は、かなり無理をして資金調達をしていることが窺える。
 ・金融機関だけでなく、商社にまで入担している。全く知らない一般企業先にまで入担している時はいよいよ資金繰りが苦しくなっている時。
 ・複数の不動産評価方法を併用し、平均を取ったりConservativeに最低価値を取ったりする。
 ・処分価値という考え方が必要。実際の価値に手数料や販売時の経費、価格下落も見越して60%程の価値として考える。

不動産価値の算定は企業に温存されている体力を知ることが出来、銀行の融資姿勢や資金調達余力などを判定することが出来るため、必ずチェックすることが必要である。
客先審査手法(概論及び信用調書のチェックポイント)でも述べたが、最重要チェック項目である点、留意されたい。

以上