おい…!なあ…!
聞いてんのかって…!
ねぇってば!
……………………………!
ねえ吉村…っ!
━━━━その声が辺りに響いた。━━━━
「うわ、何これ」
徳井は嫌そうな顔をした。
こいつはアイドルヲタクの徳井健太。
実は妻に内緒で女の子のロボットを注文していたのだ。
このロボットは高性能で、喋ったことに的確に、まるで本物の人間のように返してくれる。
要するに彼女になってくれるロボットというものだ。
前から少し気になってはいたので思い切って頼んでみることにした。
では何故徳井が嫌な顔をしたのか。
…中には男が入っていたのだ。
しかも、自分と同じくらいの歳の、同じくらいの背丈の、色の白い男。
なんの手違いだよ。何なんだよマジで。
よし、返品しよう。
徳井はとっさに書いてある番号に電話してみる。
「はいお電話有難うございます!村本が承ります」
「あの~ロボット注文したんですけど、中身男だったんですけど」
「あーすいません、そちらもう開封されましたか?」
「はい、だって中身見て言ってんだもん」
「あー申し訳ございません!開封してからの返品は不可とさせていただいております。」
「え、でも男とか嫌なんですけど」
「あ、そう言われましてもねー。。
もし鬱陶しかったりしたときはすぐに電源切れば動かなくなりますから!腰の所にスイッチがありますので困ったらそちらでなんとかしてください!」
「いや、こっちは買ってんだからさ、なんとかしてくれよ」
しかし電話を切られてしまった徳井。
ため息をつく。
こうもしていられないのでとりあえず、仕方なく電源ボタンを押してみた。
まもなく起き上がったそのロボット。
「あ、こんにちは。僕、吉村っています。よろしく。」
「……あ、どうも。。俺は徳井。」
「説明書、読みました?」
「まだ」
「僕に関して、重要なこと書いてあるから読んでください。」
渡された薄っぺらい紙を読む。
そこには
①このロボットは、話したことに対して人間のように返答しますが、痛みなど感覚はありません。
②充電式なので人間の食べ物を与える必要はありません。
③ロボットであることを周りに知らせてはいけません。
④あとは自由に扱ってください。
TEL ××× ×××× ×××× 代表 村本
「ってことだから、よろしく」
「ああ」
吉村はにこっと笑った。
が、その無邪気な笑顔を睨み潰す。
「え、徳井さん…なんか怖い…」
「そうか?…ってか徳井さんって呼ばれるの嫌だ。適当にあだ名で呼んで」
「じゃあ徳ちゃんって呼ぶね!」
「なんだよそれ」
「ねぇ徳ちゃん」
「何」
「あのさ、なんか着るものない?」
そう言えばまだ箱から出したきりだったので吉村は何も着ていなかった。
タンスの方まで行き適当に漁る。
「はい」
吉村に下着とジャージを投げつけた。
「うわぁ!ありがとー」
早速着る吉村。
それを眺める。
なかなか素直なやつだな。
男だったのにはびっくりしたんだけど。
まあ1人なのも寂しいし。
友達として一緒にいてくれるなら男も悪くないかもな。
こうして徳井とロボットの生活が始まった。