『甘いものは別腹』ってよく聞きますよね。

ただいま食欲の秋、食べ物が何でもおいしい頃ですが、ほんとに
人の体のなかには『別腹』があるのでしょうか?



●別腹は最近の言葉

さて『別腹』を広辞苑でひいてみると、意外や意外、なんと意味
がのっていないのです。

・・・ということは『別腹』は存在しないのでしょうか?でも、
お酒の後にラーメンが食べたくなるとか、食事のあとにデザート
が食べたくなるとか、実際にある気がしますよね。


実は、別腹は最近の言葉で、あまり国語辞典にはのっていないよ
うです。

1990年ころ、ちょうどグルメブームの時代から使われて出してき
たようです。



●食欲と睡眠に関係する脳内ホルモン~オレキシン

『オレキシン』という物質をご存知でしょうか?

脳の中の視床下部というところに『摂食中枢』という食欲をコン
トロールするところがあります。

オレキシンはここで産生され、脳のほかの部分に運ばれます。

範囲は広く小脳を除く脳の全域にわたっています。


特徴的なこととして、睡眠や覚醒の中枢にたくさん運ばれています。

つまりオレキシンは『パッチリ目がさめている状態にする』役割が
あるのです。

逆にオレキシンが不足すると寝てしまいます。

『ナルコレプシー』という日中に突然深い眠りに入ってしまう病気
があるのですが、去年、この病気の治療にオレキノンが使えるとい
うニュースがあったのは記憶に新しいところです。


つまり、昔はおなかがすいたら自分で食べ物を探して食べないとい
けなかったので、おなかがすくと『目がさえてきて食べ物を探す』
という図式が成り立っていたと思われます。


眠い目をこすりながら獲物を追いかける動物なんて聞いたことない
ですよね。

オレキシンは、食事と睡眠をつないでいるホルモンなのです。


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●オレキシンが分泌される時

オレキシンはどんな時に分泌されるのでしょうか。

不明な点も多いのですが、まず、血糖値が低くなった時に分泌され
ます。

また専門的になりますが血中の『レプチン』という物質の量にも影
響されますし、その他の神経が出す物質によっても複雑に制御され
ることがわかってきています。

(オレキシンと同じように脳細胞から分泌されて食欲を促進する物
質には、ニューロペプチドY AgRP(agouti related hormone) オレ
キノン(orexin) メラニン凝集ホルモン(melanin concentrating
hormone オピオイドペプチドがあり、その他の場所では胃から分
泌されるグレリンがあります) 



そもそも1998年にオレキシンが発見されるまでは『脳内食欲亢進物
質』としては神経ペプチドYというものが有名でした。

でも、最近では、『脳内食欲亢進物質』はひとつではなくて、複数
の物質が相互に関係しながら食欲を調節しているといわれています。

逆にこういった複数の物質のバランスが乱れると食べ過ぎがおこっ
て肥満になるともいわれています。



●別腹をつくるオレキノンの働き

オレキノンはラットの脳に投与すると、胃を緩めて小腸に内容物を
送り出すことによって、内容物の充満した胃に新たなスペースを作
るといわれています。

つまりは『別腹』スペースをホントに作るのですね!!


繰り返しになりますが、オレキノンは血糖値が低い時に分泌されま
す。

ところがそれだけではありません。

一説には『これはおいしそうなものだ!』と思うと同時に分泌され
るともいわれています。


これが『別腹の正体』なのでは、というのが最近の説です。


つまり、人間は胃がいっぱいになり、血糖値が高くなると満腹を感
じますが、それでも『実際には満腹なのに、脳が食べたいと判断し
た』という理由で食べることができる!ということなのですね。



そもそも『おいしい』という感覚は『ホントに体に欠乏している栄
養素やエネルギーを体内に入れた時』と感じる場合と、『経験や学
習で始めは特においしいと思っていなかったのにおいしく感じるよ
うになった』という場合があります。

たとえばアルコールは後者の代表的なものです。アルコール摂取後
の軽い酩酊状態が『快感』と判断されるので、次にアルコールを摂
取したいと思うといわれています。



つまり、『デザートはおいしい』、『この目の前にあるデザートは
見た目とってもおいしそう・・・・。

いままでの経験上コレをたべればすごく満足感、満腹感が得られる
はず』という脳の働きの結果、『別腹』が生まれるといってもいい
かと思われます。


デザートで幸せになるのは素敵ですが、食べすぎにはご注意くださ
いね。



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*参考*
文:山田 恵子
医師。東京大学医学部卒業。ハーバード大学研究所
客員研究員等を経て、現在、東京大学医学部医療情
報経済学客員研究員。研修医時代~救急医療に携わ
る中のハードワークで体を壊してしまった経験を含
め、現代社会で頑張る女性に、役立つ健康情報をお
届けします。