文学全集、まとめて何でも200円 | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

Amazon.co.jpから宣伝のEメールが来た。それ自体には特に何もない。いつもならそのまま消去するのであるが、今回はタイトルが「『夏目漱石全集・122作品⇒1冊』などのおすすめ商品のご紹介」となっており、ひっかかった。

本文をみると…

『夏目漱石全集・122作品⇒1冊』
夏目 漱石
価格: ¥ 200
「坊っちゃん」「こころ」「三四 ... 続きを読む
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とある。

そのリンクからAmazon.co.jpのウェブページに飛ぶと、この手のものが他にもいくらでもある。

基本価格は、200円または99円だ。

たとえば、200円のやつは…

『夏目漱石全集・122作品⇒1冊』 [Kindle版] 200円

『森鴎外全集・124作品⇒1冊』 [Kindle版] 200円

『芥川龍之介全集・373作品⇒1冊』 [Kindle版] 200円

『太宰治全集・272作品⇒1冊』 [Kindle版] 200円

『吉川英治全集・111作品⇒1冊』 [Kindle版] 200円


等々。

99円のやつは…

『永井荷風作品集・77作品⇒1冊』 [Kindle版] 99円

『梶井基次郎全集・42作品⇒1冊』 [Kindle版] 99円

『北大路魯山人全集・121作品⇒1冊』【画像81枚】 [Kindle版] 99円

『種田山頭火全集・68作品⇒1冊』 [Kindle版] 99円


等々。


今回、
『種田山頭火全集・68作品⇒1冊』 [Kindle版] 99円
を購入させてもらった。

種田山頭火の作品もすでに無料Kindle本として多数存在しているので、99円は、1冊にまとめた労力の値段のようなものであろうか。

さっそくすこし読んだ。

最初に収録されているのが「草木塔」という句集。

大正十四年二月、いよいよ出家得度して、肥後の片田舎なる味取観音堂守となったが、そこはまことに山林独住の、しづかといへばしづかな、さびしいと思えばさびしい生活であった。」…と始まる。

最初の句は、

松はみな枝垂れて南無観世音

3句目のものが私は気に入った。

ひさしぶりに掃く垣根の花が咲いている

4句目のものは有名なやつ

分け入っても分け入っても青い山

これら山頭火の作品の全部が99円とは…感動してよいのやら、申し訳ないのやら、どういう気持ちになるべきなのかよくわからない。少なくとも言えるのは、気に入った日本の本をアメリカで即買えるのはすばらしいということ。


作家単位の文学全集として、私は「芥川龍之介全集」と「梶井基次郎全集」とを持っている。いずれも、若い頃に親に買ってもらったもの。京都の実家の押入れのような部屋に今でもある。

当時の「芥川龍之介全集」の定価は、調べてみると1巻3,200円(第12巻のみ3,800円)で合計39,000円であった。昭和の時代の39,000円であるから、今から思うと親に多大な出費を強いたものだと思う。逆に、よくそんなものを親は買ってくれたものだと思う。

ともあれ、それが今や全部まとめて200円だ。

IT技術が進歩し、書籍がデジタル化して、紙不要となった媒体が実質的にタダになった。そこに著作権切れがプラスされると、すばらしい芸術作品がごっそりまとめてタダ同然の値段で売買される。

すごい時代になったものだと思う。