テレビで、酒井法子という女性が保釈され、会見を行ったのを見る機会がありました。

会見には表現上、さまざまな制約があることが想像できるとはいえ----。
求められていることに応えようとふるまうことで、
かえって優等生的な表現になり、メディアや世間に悪くとられるというような
悪循環に陥っているようにも見え、痛々しい気持ちになりました。

この会見に限らず、本当の気持ちがなかなかうまく表現できないという、
元々の傾向性の現れなのかもしれません。

日常の中で、自分の気持ちを十分表現できず、求められた役割を演じることが多いと、
どこかで反転して、過激な行動に走ります。

本人が自分の性格について語っている情報を基にすると、
とても慎重な性格のようで、エニアグラムにおいては、
タイプ6の可能性が非常に高いと思われます。

タイプ6の人は、「両極性」という特徴があり、一方の極からもう一方の極へと、
大きく揺れます。慎重かと思うと、突然大胆なことをします。
(詳しくは、『エニアグラム 自分のことが分かる本』に書きました。)

安定を求めるために、人間関係や組織や理念などに依存する傾向があります。

薬物依存からの回復には、こうした心の傾向性に取り組むことも重要でしょう。

「依存」というのは、非常に大きなテーマです。

私は一時、徹底して依存というテーマについて学んだことがあります。
それは苦しい人間関係を通じて、学ばざるを得なかったからです。

薬物依存については、私がとても信頼している友人の臨床心理士、
加藤力さんが『セルフ・サポート研究所』というところを主宰し、
家族への支援を行っています。

また、私自身、雑誌の仕事で、沖縄のダルクを取材させていただいたことがあります。

ダルクは、薬物依存からの回復に努めている人たちの自主グループです。
1日数回のミーティング、リハビリのための畑作業や沖縄の伝統芸能であるエイサー、
リクリエーションなどに1週間、毎日同行させていただきました。

全国にあるダルクのセンターの中でも、沖縄は一番回復率が高いのです。
それは心・体・魂の癒しにとって必要なすべての要素があるからです。
豊かな自然と文化、地元の人の暖かさ。
そしてスピリチュアルな精神風土---当時は、沖縄のセンターの大家さんが、
「ユタ」と呼ばれるシャーマンの女性で、回復中の人たちの心を守り、
支えていたのです。

沖縄ダルクに滞在させていただいている間、
薬物に関わるようになった経緯やその後の経過について、
いろいろな方にインタビューしました。

基本的に薬物からの回復とは、「今日はやらない」ということを毎日ずっと
(おそらく一生)積み重ねていくことなのです。

C+Fで行っているホロトロピック呼吸法の開発者でもある
スタニスラフ・グロフ博士の奥さん、クリスティーナ・グロフは、
自らもアルコール依存症に苦しんだ体験から、依存症とは、
スピリチュアルな「渇き」であると述べています。

依存症の特徴は、繰り返すことにあります。
それは、一時的に高揚したとしても、実は心が満たされていないからです。

本当の意味で満たされれば、もっともっとと求める必要がなくなります。

依存の対象は、薬物、アルコール、恋愛、テレビ、インターネット、チョコレート、
活字、買い物など、さまざまです。

けれどもプロセス指向心理学の創始者であり、心理療法の最前線に立っている
アーノルド・ミンデルによると、もっとも中毒している(依存している)のは、
自分のアイデンティティなのです。

つまり、これが自分だ、と執着しているもの(性格のパターンを含む)を手放すことが、
もっとも大変なことといえるでしょう。