前回は何か月ぶりかのブログだったのに、

たくさんの方がアクセスしてくださって、ほんとうにありがとうございました。

とてもうれしかったです。

そしてもっと嬉しかったのは、

後藤さんファンがたくさんいるのが分かったことでした。

長い間「後藤さんが一番」と言いたくて言いたくてしかたがなかったの!

 

ムックの「後藤喜一×ぴあ」。

私も10月1日に、書店に行きますね。

 

さて、ムックの取材の後、パトレイバーについての取材がまた、ありました。

OVA-劇パト1展 新潟展 機動警察パトレイバー 30周年突破記念」で披露される、

ARサービス用の収録です。

 

床に設置されたQRコードにスマホをかざすと、

指定された場所にキャラクターが表れて、

そのキャラクターをタップすると音声が再生される仕組みだとか。

南雲さんのQRコードにスマホをかざすと、南雲さんが現れて、

私のフリートークが聞こえる、というものだそうです。

 

面白そう!

 

コロナが無ければ新潟まで行ってみたいけれど、

何せ私は、基礎疾患を2つ持っているし、

感染したら重症化する確率の高い年代です。

コロナが無ければ、誰にもわからないように扮装して、出かけていくのに…。

 

他県から新潟に行かれる方もいらっしゃると思います。

新潟の方も、他県の方も、ご自分を守ってくださいね。

自分を守ることが、人をも守ります。

 

「OVA-劇パト1展 新潟展」は、

10月10日(土)から、11月15日(日)まで、開催される予定です!

 

来場される方、

くれぐれも、

ソーシャルディスタンスを守り、

マスクをしてくださいね。

 

このイベントの取材では、

印刷物と音声の媒体では感じが異なるので、

話題が重なっても大丈夫と伺っていましたが、

これだけ多くのパトレイバー・ファンがいらっしゃるのですから、

なるべく異なる話題にしようと思いました。

押入れの奥に片付けられていた古い日記を取り出し、

あの頃のことが書かれているものをもう一度読み直してみました。

懐かしい~。

ページを捲って行くにしたがって、いろいろなことが蘇ってきました。

 

以下は、新潟展のフリートークでは話せなかったことを書いていきますね。

 

時が一気に、1988年に遡っていきました。

あの頃は、まだまだ大人になり切れておらず、

それでも、

魅力的な大人の女性に成長していくにはどうしたらよいのだろう、

と考えていた頃です。

三十路は一見大人のように見えますが、まだまだ…。

そんな時代です。


私は割と現実的な人で、

「理想の男性像」等々、あまり考えたことがありませんでした。

理想は理想で、現実とはかけ離れているもの。

理想が現実化したら、もうそれは理想ではなく、現実となる  

というちょっと斜めった物の見方をしていました。

ですから、アニメや映画などの登場人物に「恋したり」「憧れたり」したことは

一度もありませんでした。

 

けれど、パトレイバーの後藤さんだけは、別。

私にとっての後藤さんはいつも、別格でした。

 

「パトレイバーMovie2」以降、

仕事仲間や友人たちとの間でたまに、この作品の話はしていたのですが、

最近もまた、「後藤喜一」について話す機会があり、

皆、私と同じ意見を持っていたので、心の中で「キャッ!」と喜んでしまいました。

皆、40歳代から60歳代の方々でした。大人の方々です。

皆、同じことをおっしゃいました。

「後藤喜一は、男として最高だ。南雲さんは、なぜそれが分からないんだろう?」

男女の違いに関わらず、皆が皆、口を揃えてそうおっしゃるのです。

100%同感!

 

パトレイバーの初回収録は、

今は閉じてしまった“ニュージャパンスタジオ”で行われました。

東京タワーの近くにあるスタジオです。

幽霊が出る・・・、という<噂>があったスタジオです。

(因みに私は一度も見ていません。

幽霊の方が怖がって出て来れなかったのかも…へへへ)

 

私はこの時、作品の内容はまだ明確には把握していませんでしたが、

「役柄はカチッとした優秀な女性警察官で、隊のトップにいる人」

ということは事前に伺っていました。

カチッとした優秀な女性警察官で、トップ???

 

個人的に、この「カチッと~」というところが引っかかったのを覚えています。

それまでの役柄の多くが、

女性でも上に立つ人で、優秀な人物でした。

また同じ感じになってしまうのかな?と危惧していました。

 

演技者というものは、浮気心が強く、

同じタイプの役柄を続けて演ずるのを「マンネリズム」と感じてしまうことがあります。

それしかできないと思われるが嫌なのです。

全く異なった人物を演じたいという気持ちが常にあります。

私も同様に、

いつも同じタイプの役柄ではなく、異なった性格の人を演じたいなぁ、

と思っていた時期の作品が「パトレイバー」でした。

 

けれど、第一作目を演じた後、閃いたものがありました。

 

1986年に「男女雇用機会均等法」が施行されました。

採用や昇進、解雇など、働く現場での男女の差別を禁止するという法律です。

世の女性たちが長い間求めていた男女平等がやっと法律化されたことで、

これから社会が変わっていくことに期待していた方々も多かったと思います。

が・・・。

 

「改革」は一夜にして成されません。

それが成就するまでには長い時間が必要になります。

歴史に残る様々な改革、革命を調べてみても、

混乱や、逆戻りと思われることが何度も繰り返され繰り返され、

長い年月を費やしてやっと定着していくもの、のようですね。

 

パトレイバーは、この法律が施行されてから2年後の作品で、

やっと手に入れた「男女平等」の現場では、

まだまだ期待通りの状況にはなっておらず、

頑張っていた女性たちが少し疲れて来ている、という記事などが

新聞に載っていたりしました。

長い歴史をかけて男性が築いてきた社会に女性が進出するということは、

異なった質を尊重し合う前に、まず、

女性が男性社会のシステムに慣れなければならない、という窮屈さがあったようです。

キリキリしてしまうことも多かったのではないかと…。

 

そういった社会背景を、

南雲しのぶさんにダブらせることができないか?

 

「警察」というと、男社会というイメージがとても強いものです。

男社会で優秀だと言われている南雲さんが、

ただただキリキリとして、

男性と競争し合うだけの女性になってしまうのか、

それとも、男性を抱擁してしまうくらいの

「しなやかな」大人の女性になっていくのか・・・、

そういったことを想定して、役作りができないかと考えました。

(当時の日記に書いてありました!自分でもびっくり・・・) 

 

現実はいろいろだと思いますが、

私個人の考えは、

男女は戦うものではなく、融合していくもの、でした。

男女間のトラブルは嫌い、喧嘩も嫌い、

なんでお互いに見え張って、頑張っちゃうの?

違いを尊重し合って仲良く笑って、刺激し合おうよ!という感じ…。

 

けれど、多くの人が抱く「声優・榊原良子」の“イメージ”は、どうやら真逆のようです。

 

亡くなられた井上瑶さん(香貫花クランシー役)がおっしゃっていました。

「良子ちゃんは、ほんとうに不器用な人ね、

イメージと全く違うほんとうの自分をストレートに出すのが、

すごく下手なのよね!」

 

その通りです。

瑶さん、私をしっかりと見てくれていて、ありがとう。

感謝してます。

 

南雲しのぶさんが、男社会と言われている場所で四苦八苦しながらも、

「しなやかな大人の女性に成長していく」過程を描きたいなぁ、と、

当時の私は自分勝手にそう考えて、

南雲しのぶという女性と取り組むことにしました。

また、その当時の現実的な様々な問題、

男女間で起きる不協和音を身近に感じてもいましたので、

役柄を離れた一人の人間としても、

その問題をクリア出来たらいいなぁと思っていました。

 

男女雇用機会均等法が施行されたのに、

なぜ女性たちはキリキリしてしまうのだろうか、

それを克服するにはどうすればよいのだろうかと、

キリキリしてしまう女性たちに自分をダブらせて、

現実の世界をどう生き、成長していったら良いかを考えるようになったきっかけが、

パトレイバーです。

 

そして女性の成長に欠かせないのが、異性の存在。(男性も、そうですね💛)

「後藤喜一」という存在。

 

収録当初から、

大林隆介さんが演じる一見チャランポランな「後藤喜一」という男性を、

南雲しのぶを作り上げていこうと考えていた私は、十分に意識していました。

 

後藤さんは、

キャリアや肩書だけを重要視し、そこに価値を見出すタイプの女性にとっては、

理解しがたい人です。

自分の才能を自分自身でなぜ台無しにしてしまうのだろうと、首をかしげてしまうのでしょう。

 

でも私が見ていた後藤さんは、違いました。

「決して裏切らない人」

「最後の最後まで、さりげなく支えてくれる人」

「気づいたら、いつもそばにいてくれた人」という、

一見、変テコリン人なのに、

実は“染み入るようなイメージの男性”で、

それこそ「最高の男性」です。

スーパーマンではないけれど、そこに居るだけで良い、

と思わせる男性として、私は後藤さんを見ていました。

 

後藤さんと同じ男性が、現実に身近に存在していたなら、

私はたぶん「押しかけ女房」になっていたと思います( ̄∇ ̄😉ハッハッハ!

 

私は南雲しのぶさんに、

成長していく過程で柔軟性を身に着けて欲しかったのです。

もっと素直になって欲しかったのです。

 

“警察”という男性的な色合いの濃い組織で、

南雲しのぶさんが当初は肩書等を重視していたとしても、

後藤さんと接することで、また、野明ちゃんや遊馬君など、

第二小隊の部下たちと接することで考え方が変化し、

“男性観や人生観を見直していく女性”、

として描こうとしていました。

 

“本当に大切なものは何かが、少しずつ分かってくる人”

として作り上げたかったのです。

 

もちろん、南雲しのぶさんのセリフはほとんどが“警察官”としての固い内容のもの。

女性特有のセリフが少なかっただけに、

その少ないセリフの中に、変化を入れていたつもりです。

表現できていたかどうかはわかりませんが、

ニュアンスとして出そうとしていました。

 

「二人の軽井沢」

 

画が出来ていない状況で“声”だけ先に録音する

“プレスコ”用として書かれたこの台本を頂いたとき、

やったァ!\(^_^)/ぁ、と飛び上がってしまいました。

 

一社会人としてはとってもしっかりしているのに、

殊、男女二人っきりになると、ドギマギしてしまう。

そのドギマギ感に、南雲さん自身まだ自分では自覚していない

「後藤さんに対する女性としての思い」を重ねようかな!と、

南雲さんの心理を細かく考え、役作りをしていきました。

 

役作りをしていた時、本当に楽しかったのです。

そして収録時も、とっても、とっても楽しかったのです。

 

何年か前に、押井守監督と、大林隆介さんと一緒にイベントに出たことがありました。

前もってアンケートを取られていて、

当日、大きなスクリーンにアンケートの結果が映し出されるというプログラムがありました。

 

アンケートの内容は、

「押井守監督と、大林隆介さんと榊原良子さんが、一番印象に残っている作品は何ですか?」

 

その答えは…。

 

大林隆介さんと私が一番印象的だと感じていた作品は、

やっぱり、『二人の軽井沢』。

押井守監督は、別の作品を挙げていました。

 

大林隆介さんは、俳優としての立場から、

画に合わせずに自分の間や呼吸で演じられることが一番だ

とおっしゃっていたのを覚えています。

私は、大林さんの意見に同感で、

加えて、

密かに考えていた南雲しのぶさんの隠れた一面が出せたことが一番うれしかったので、

この作品を挙げました。

そして、想像していたよりも多くのファンの方が、この作品を選んでいるということを知り、

私の記憶の中には、「二人の軽井沢」が、

一つの代表作として刻まれることになりました。

 

因みに、「二人の軽井沢」では、

そこしか泊まる場所がなかったので、二人はラブホテルに宿泊することになりましたよね。

 

私が捉えていた後藤さんの心理の一つですが・・・、

 

バスルームに南雲しのぶさんが入りますよね。扉を閉めます。

少しして、妙な感じのBGMが流れ始め、

後藤さんが突如、体勢を低くして、

“ウサギ跳び”ならぬ“ウサギ歩き”みたいにそろそろと歩き、

閉じたバスルームの扉に近づきます。

扉に手をかけて、ソローッと扉を開けます。

開けた扉の向こうに、仁王立ちの南雲しのぶさんがいる!

 

この場面ですが、

後藤さんは実は、

扉の向こうに南雲さんが仁王立ちになっているということを見越して、

敢えて扉に近づいて行ったのだと考えています。

“ウサギ歩き”みたいな恰好で扉を開けるという、

「子供のようないたずら」をしたのだと思っています。

そして、南雲しのぶさんも、後藤さんがいたずらをするだろうと予想して、

敢えて仁王立ちのまま、扉が開くのを待っていたのだと考えています。

 

二人の間には、暗黙の裡に「いたずら」に対してのそれぞれの対応がすでに用意されていて、

その通りの結果になったと思います。

南雲さんは喝を入れますが、

いたずらをする後藤さんを、怒っていません。

心の中で「ほんとうに、後藤さんは、こどもなんだからぁ」くらいにしか考えていません。

 

私がなぜそう考えるかというと、

後半のシーンで、

それぞれが床に就いた後、二人ともなかなか寝付かれずにいますよね。

そして、南雲さんがふと起き上がり、背を向けて寝ている後藤さんのそばに立ちます。

後藤さんは、目を開けたまま寝たふりをして、

南雲さんがそこに立っているのを、背中で感じています。

そしておもむろに、南雲さんが、床に落ちたバスタオルを拾い上げ、

後藤さんの体に静かにかけてあげます。

南雲さんがベッドに戻ります。

後藤さんの目が閉じます。

この静かなシーンがあるからこそ、そして、

南雲しのぶさんがバスタオルをかけてあげるからこそ、

南雲さんは後藤さんの行為を怒ってもいないし、

そんな南雲さんを、後藤さんも分かっている…。

 

バスタオルをかけるまでの無言の、あの時間。

そして、バスタオルをかけてあげる、というところに、

普段身に着けている“鎧”を外した南雲さんが、そこに立っていた…。

私はそう考えました。

 

なんとも、不器用な、大人の男性と女性ですよね。

見ていて歯痒くなりますが、

だからこそ、面白く、ほのぼのとしていて、魅力的なのだと思います。

 

「OVA-劇パト1展 新潟展 機動警察パトレイバー 30周年突破記念」

10月10日(土)から、11月15日(日)まで、開催される予定です。

 

今回は、新潟展のフリートークでは話していないことを書いてみました。

私のblogは、まだ、もう少し、「パトレイバー」のこと、になるかも💛

 

 

突き抜けるような爽快な気持ちになれるのはまだまだ先のようでですが、

せめて今夜は、

皆さん

楽しく、面白い、元気が出るような夢を見てくださいね。

後藤さんファンには、「後藤喜一さん」が出てくるといいですね。

そして南雲さんファンには、「南雲しのぶさん」が夢に出てくるのを祈って!

 

ではおやすみなさい。

穏やかで幸せな眠りを!