ずいぶんと、時間が経ってしまいました。

長い間私は、気持ち的に自粛をしていました。

お仕事は続いていましたが、

新しい作品をお伝えしたくても、

果たしてこの時期に自分の出演作品を公にしてお話しすることが、

多くの人にどのように受け止められるだろうかと、

様々な状況に置かれた人の心の内をいろいろと考えては、

どうしようか・・・・。

 

この何か月も、毎日、私のポリシーである「普通に生きる」ということをしていました。

自粛は私にとってはそれほど苦痛ではありません。

2009年~2017年まで、2回、入院をしました。

まともに歩けない状態で10か月以上も杖に頼っていたり、

手術をして普通に歩けるようリハビリに専念していたり・・・。

そして、父と母の同時介護。

6年間の介護生活…。

 

自分の思うようにならない状況、状態を介護年数も含めて8年間続けていると、

今回の新型コロナウイルスによる自粛は、苦しくはありませんでした。

というより、

なぜ私がコロナ禍に閉塞感を抱かなかったり、苦しいと感じなかったかというと、

たぶん、それまでの8年間があったからだと思っています。

 

もしかしたら、このコロナ禍を苦とせずに過ごせるよう、

思うように動くことができない状況での精神的な訓練を、

誰かに

(例えばお天道様に)、

前もって、させられていたのではないか…、

そんなことを考えたりしていました。

8年間は、私にとって、

このコロナ禍を乗り越えるために必要不可欠な「経験」だったのではないかと…。

 

8年間の辛さも、この季節を乗る超えるためのウォーミングアップだったような気がします。

けれどそれは、自分自身のことでしかありません。

 

今、多くの人が窮状に立たされています。

こうして仕事をしていられる私はとても恵まれています。

誰かの役に立つのならと思い、

特別定額給付金や確定申告後の還付金の金額を合わせて半分ずつ、

医療従事者への支援と、某育英会の奨学金にと、寄付をしました。

でも、人数でそれを割ったら、一人1円の支援にもならないのですね・・・。

 

恵まれている私が、自分の作品を話題にして語ってよいものだろうか…。

私もグッと堪えて、自粛をする意味を改めて考えなければならないのでは…。

思うようにいかない状況を、あの8年間を振り返りながら、

もう一度、再確認しなければいけないのではないか…。

 

いろいろと考えて、考えあぐねていた矢先、

雑誌「ムック」の取材のお話が飛び込んできました。

「パトレイバー 後藤喜一×ぴあ」

 

何て素敵な企画!

ああ、後藤さん、後藤さん、後藤さ~~ん・・・。

 

 

後藤喜一のために一肌脱ごう!と思いました。 

 

主役は「後藤喜一」。

そして、この人物を魅力あふれる中年男性として作り上げたのが、

俳優の大林隆介さん。

だったら自分のことではないから、語るにもそれほど気が引けない。

しかも、私はパトレイバー初回の収録から、

後藤喜一という登場人物が気になって気になってしかたがなかったのです。

当時私は三十路になったばかり。

三十路だった私は、現実に「後藤喜一」という人が存在するのだったら、どんなに良いか!!!

と思っていたほどです。

恋していたのですね(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

 

大林隆介さんと後藤喜一の似ているところは、「頭脳明晰」「博識」。

時々とぼける…、くらいでしょうか。

 

異なるところはたくさんあります。

 

大林さんはイケメン。

後藤さんはとうていイケメンとは言えない。

大林さんは会話の仕方が率直で面白く、とてもスマート。

嘘やお世辞がなく、イケメンなのに決して気取らない。

どんな方にも同じように接するというとてもフェアーな方です。

そして、おしゃれ! 

センス抜群。

 

後藤さんは南雲しのぶさんに弱い。引いてしまう。

会話も口ごもったりして、言いたいことが言えない。

そして、おしゃれはできない。

家ではジャージーで過ごしているような人。

 

因みに大林さんの和服姿はとても素敵なのですよ!

イベントに出られるとき、和服姿で登場したら、皆、胸キュンになるかも!

さりげなく、格好良い。

後藤さんはせいぜい浴衣かな?

 

ですから大林さんと後藤さんが外見的にダブることはないのですが、

でも、どうしても後藤喜一は大林さん以外の人では、絶対にダメ! 

と声を大にして言いたくなってしまいます。

 

そして、この作品は、

私が三十路だった頃の社会と、その中で生きていた私自身にとって、

とても大切で重要な役割を果たしてくれました。

女性としてどのように成長していったらよいかを、

演技を楽しみながら考えさせてくれた作品なのです。

 

「ガンダム」や「ナウシカ」が印象深いと思っていらっしゃる方が多いかもしれません。

この二つの作品も私にとってはかけがえのないもの。

ただ、私的な部分では、

「パトレイバー」が、

現実を生きる上で一番重要な意味を持つ作品になっています。

 

プロフィールを求められると、私は必ずこの作品を書きます。

 

私はかれこれ2年ほど、ボイストレーニングを受けていますが、

この新型コロナウイルスによって、レッスンスタジオに行けなくなったのがきっかけで、

オンライン授業を受ける体制を整えていました。

 

ですので、「ムック」の取材は、オンラインで行いました。

ご担当は坂下大樹さん。

 

はじめてお目にかかったのにそんな感じがせず、

前々から知っていたような、そんな気持ちの良い方です。

そして、画面の向こう側に、大林隆介さんが見えました。

 

「おう、おう、おう!」とにこやかな笑顔で、カメラに向かって乗り出してきます。

お髭を生やし、ブラックフレームの眼鏡をかけていました。

髪型は滑らかで、額の生え際が、自然なウェーブを描いています(オデコが出ていてかわいい!)。

また一段とシルバーヘアーが輝いていました。

 

センスの良い大林さん。

ロマンスグレーの素敵なおじ様(私にとっては“お兄さん”)に、

また変身していらっしゃいましたよ!!ヒューヒュー💛

 

大林さんは、元気溌剌。

とぼけた三枚目を演じたり、

博識から生まれる意味深い言葉を、重くもなく、軽くもなく、

さりげなく口にしたりするのも変わりません。

ホッとしました。

 

パトレイバーの30年の歴史の中、大林さんは、

体を壊されたり、わけのわからない疾病にかかったりと、

いろいろと辛いことがあったようです。

当時、その都度その都度、不調なのかしら?と何となく察していましたが、

取材のこの日はとても元気で、

年齢とともに、どんどんと素敵になっていかれるんだなぁと感じ、

安心しました。

 

お元気で何よりです。

ほんとうに、ほんとうに、何よりです。

そして、皆が皆、元気で居てくれたらと、それだけを願っています。

 

 

これから来年にかけて一番大変な時期になります。

切実な問題が覆いかぶさってくるような暗い季節ですが、

もし、昔、「パトレイバー」を見て、面白いと思ってくれた方がいたら、

そして、今回再び「パトレイバー」に触れる機会があったなら、

あの物語に出てくる欠点だらけの人たちの「豊かな魅力」と「底抜けの明るさ」から、

それぞれ皆さんの心の中にある勇気や元気に気付き、掘り起こして頂ければ、

それこそ私は、この作品に出演させていただいたことを誇りに思えます。

 

原作の「ゆうきまさみ先生」が描かれた多くの人物。

皆が皆、なぜあれほど魅力的なのでしょう! 

欠点を曝け出しながら人間をあれほど素敵に描いてしまうのは、

きっと、モーツァルトと同じように、

ゆうき先生の根底に「人間賛歌」があるのかもしれません。

いつかそこのところをお伺いしたいと思っています。

 

パトレイバーのイベントはまだまだ続きそうです。

今もあるところから取材のご依頼が来ています。(ありがとうございます)

これまでに話して来なかったいろいろなこと、

作品や人物から想像し、考え、それをどう自分の人生に取り入れたか等々、

まだ三十路だった私が語らずにいたことを、

30年たった今、少しずつ語りたいと思っています。

 

ムック「後藤喜一×ぴあ」は、10月1日発売予定!

 

 

 

大林隆介さんは、お写真でも素敵ですが、

実際にお目にかかった方が、もっともっと素敵ですよ!

三枚目のダンディーです。