<美由紀さん>

 

さて、私は今、初歩中の初歩、基本である「正座の統一」が出来ませんが、

自主稽古や道場での稽古で100%こなせるようになるまで、

審査は受けないつもりでいます。

合氣道に関しては、趣味の一つ、という見方も出来ますが、

私にとってはそうではないのです。

武道としてマスターしたいという気持ちも僅かばかりあるのですが

(悪い奴らを投げ飛ばせたら、うれしい!ナンテ・・・)、

合氣道を習いに行くと決めたのには、

複雑で、深い思いがあっての事でした。

この思いは、あまりにも多くの問題や事由がそこに係って来るので、

説明するのがまだ難しい状態です。

強いて言うなら、「人生に係ること」と言えます。

「人生」というのは、考えるとちょっと重たいものがありますよね。

その重たさが私の中で少し軽く感じられるようになった時に、

きっと、何気なく語れるだろうと思っています。

 

なので、合氣道の「正座の統一」について、

親友の“美由紀さん”とお話したことに入りますね。

 

髪の毛をカットしてもらいながら、私は、

審査を受けて、まぐれ当たりで正座の統一に合格しても、

それは嬉しくないし、何にもならないような気がする、と言いました。

美由紀さんはすぐにわかってくれて、

『基本は、どんな状況でも常に出来ないと基本をマスターしたことにならない』

と言いました。

 

基本がまぐれ当たりでできたとしても、

身についていなければいつか必ず、その影響が出て来ます。

先に進めたとしても、必ず立ちはだかる壁にぶつかります。

その時に慌てず、心を鎮めて初心に帰る…。

つまり基本に戻ると、

試行錯誤をしたり、応用をしたりする発想が生まれて、

その壁を超えることが出来ます。

けれど、基本があやふやだと、乗り越える手段がなかなか見つかりません。

 

基本の先に位置するレベルも、その先にあるレベルも、

すべて「基本から伸びている」もので、

クリアーしたから基本はもう学ばなくてよい、という物ではないのです。

卒業ではないのです。

 

基本が出来ていなければ、必ず上達の途中で迷いが生じたり、

訳が分からなくなってきたりします。

もう一度基本に立ち返って丁寧にやり直し、そこで初めて先に進め、

立ちはだかる壁を乗り越えることが出来るのだと思います。

 

正座の統一が出来ずに私が途方に暮れたのは、

正座の統一という合氣道の基本の前に把握しておかなければならなかった、

私の「個人的な基本」を、

しっかりと見ていなかったからだと思います。

 

前に、私は芸能人的ではなく、職人気質が強い人だと書きました。

美由紀さんも、昔の言い方をすれば“髪結い”という職人さんです。

今は、技術者と言うのだと思いますが、

よく、耳にしますよね、

職人は、基本をマスターするまでに何年も何年も同じことを繰り返しさせられる。

それが出来なければ、次には進めない・・・。

その基本が無意識のうちに出来てこそ、次の段階に進めるのですが、

美容師・髪結いという職人として修業を続けてきた美由紀さんだからこそ、

その大切さを、間髪を入れずに理解してくれたのだと思っています。

 

声優と美容師…。

仕事の内容は全く異なる職人同士です。

私が一生懸命“鋏”をパチパチやっても、生きたセリフは言えません。

また、美由紀さんが一生懸命“セリフの稽古”をしても、

お客様の髪形を素敵に整えることはできません。

それぞれが全く異なる仕事、動きをしなければならないのですが、

“臨む姿勢”というものには多くの共通点がある、ということだと思います。

 

美由紀さんは私の話を聞きながら、いつも、

自身の中の“何か”に置き換えて、的確な助言・意見を言ってくれます。

それは、蓄積してきたものが膨大だというだけではなく、

とても優れた感性を持っていらっしゃるからだと思います。

しかも、根本がブレることはありません。

 

もし私が何か変なことをして美由紀さんに叱られることがあったら、

私は素直にその言葉を受け入れられます。

諭されたら、また、素直に受け入れられます。

美由紀さんには、そういった不思議な力、包容力があるのです。

(私の方が年上なのに…)

 

私は美由紀さんが大好きです。

それだけでなく、

人間として、とても信頼しています。

信頼できる人がそばにいる、というのは、とても幸せなことだと思っています。

私は“人”に恵まれているようです。

 

髪の毛を整えてもらったり、パーマをかけてもらったりしている間、

笑い話や、ためになる話で、あっという間に時間が経ってしまいます。

この時ばかりは隣の部屋でほったらかしにされている「ピジュ」は、

終始、覚えたての言葉を飽きることなく繰り返し“さえずっています”。

隣の部屋の私たちの会話に参加しているつもりのようです。

 

美由紀さんとは、ひょんなことからもう二十数年のお付き合いになりますが、

ずっとこの親交を保って行きたいと思っています。

美由紀さん、かけがえのない親友! 

いつもありがとう! 

 

さて、パンが焼けました。

クルミパンです。

腎不全だった父に、腎臓病のための特別なパンを作るために購入した

ホームベーカリーで作りました。

2011年に購入したものです。

私は物持ちが良いようですね。

もう9年も、しっかりとパンを焼いてくれています。

パンを焼くたびに父を思い出しますが、

思い出し、偲ぶことが供養になっていると嬉しいな…。

 

パパ、普通の、クルミパン、できたよ💛