<素敵なスタッフ>

 

さて、2020年も始動しています。

昨年暮れも押し迫った日に

数年前に一度出演した外国ドラマの吹き替えの問い合わせが入りました。

アメリカの作品で15シーズンに入るシリーズものです。

まだ許可を頂いていないので詳細はお伝え出来ません、ごめんなさい。

 

この作品には母がまだ生きていた頃に出演させていただきましたが、

その時の人物が再び登場したということで、ディレクターさんから直接連絡が入りました。

肝が据わった感じの中年女性の役です。

 

台本を受け取りに制作会社に伺い、その帰りに、渋谷にちょっと寄ってみました。

今週末に知人が遊びに来るので焼き菓子を購入しようと考えたからです。

いつものケーキ屋さんがその日お休みなってしまうので、日持ちの良い焼き菓子にしました。

 

私はあまり洋菓子の店を知りません。

スイーツはコンビニも力を入れていて、安くても美味しい新商品がどんどん売り場に並びます。

ただ知人は1時間以上をかけて遊びに来るというので、コンビニではちょっと・・・と考え、

渋谷のデパートに寄りました。

 

「BEL AMER」というチョコレート店が、食品売り場にありました。

湿度や気温に影響されるデリケートなチョコレートを、

日本でも美味しく頂けるようにと作っているチョコレート専門店だそうです。

バレンタインデーやホワイトデーにはお客さんが大勢並びます。

丁寧に作られているのでチョコレート一粒はちょっとお高いのですが

(私は明治のブラック板チョコ派でございます・・・)、

焼き菓子はそれほどでもなく、以前購入して食べてみたらとても美味しかったので、

今週末の知人の訪問に、いろいろな種類の焼き菓子を一つ一つ選んで揃えました。

 

何故私がここを選んだかというと、

味もさることながら、

初めてここで焼き菓子を購入したときの販売員の女の子が、とても感じが良かったからです。

明るくて、溌剌として、丁寧語も使ってはいるもののそれが自然な形で身についている。

作り笑顔ではない素のままの笑顔。

お客さんの目をしっかりと見て、注文を聴いている。

販売の仕事が楽しく、誇りを持って仕事をしているというブレない姿勢がありました。

そして、謙(ヘリクダ)り過ぎるわけでもなく、

どの年代の方々にもすんなりと受け入れられてしまう姿が印象的でした。

で、また購入してみようと思い、立ち寄ったのです。

 

初めての時とは別の販売員さんが売り場に立っていました。

嬉しいことに、最初の印象がまったく壊れない対応でした。

その人その人の特徴は異なるものの、気持ちが良いのです。

やはり、自然な笑顔でお客さんの目をしっかりと見て、明るく溌剌としていました。

自宅用だからと伝えましたが、袋詰めの仕方が凄い!!

袋の形が崩れないようにしっかりと詰めているのですが、

どこかにクッションとなるような隙間を上手に作り、

中身が潰れないようにしながらコンパクトに包装するのです。

袋全体も型崩れしません。

そして雨の日だったので、雨用のビニールをかけてくれました。

「適当でいいですよ」と言うと、にこやかに「はい」と応えながら、丁寧、迅速に袋掛けをします。

プロフェッショナルですドキドキ

またここに来て良かった、と思いました。

 

訪れるお客さんも多種多様で、販売員の方々は一日のうちにいろいろな思いを抱くことでしょう。

今は少しずつ変化してきていますが、“お客様は神様です”という考えはまだ根強く、

横暴なお客さんも中にはいるかもしれません。

からかい半分で来るお客様さんもいるかもしれません。

タクシーの運転手さんなどは暴力を振るわれたり悪態をつかれたりと、

とても嫌な思いをしながら我慢して仕事をしなければならないことも多々あると言います。

その映像をテレビで何度も見ています。

 

この「BEL AMER」の販売員さんが正社員なのかアルバイトなのかはわかりませんが、

アルバイトだったとしても、

「BEL AMER」というお店の顔として、プロフェッショナルな販売をしている姿は、

見ていてとても快いものです。

“主役”は商品(チョコレートやチョコレートを使った焼き菓子)ですが、

ふと、販売員さんの仕事ぶりを見ながら思いました。

商品が出来上がるまでの間、どれほどの人たちが力を注いだのだろう、と・・・。

 

美味しいものを作ろうと試行錯誤し、敢えて出来上がったもののウィークポイントを揚げ、

また商品をさらに美味しいものとするために再び試行錯誤を繰り返して作り上げていく…。

出来上がった商品の金額やその見栄えについても考え、

環境に配慮したエコ包装を取り入れたり

味だけなく、商品価値を下げないよう、販売から包装に至るまで、

心を込めて商品を扱っていく・・・。

 

販売員さんたちはその製造工程も勉強しているようでした。

袋詰めも生易しい作業ではありません。

包装の仕方は、デリケートな感性が大切です。

たとえアルバイトであっても学んだ知識を大切に、その商品のプロとして接客をする…。

お客さんの要望に応えるために、あるいは、お店の自信作を広く知ってもらうために、

製造から販売までに係った大勢のスタッフが、

スポットライトの当たらないところ日夜努力している。

 

大変だろうなぁと思いながら、

プロフェッショナルとしてブレずにいる「BEL AMER」の販売員さんのところで、

また、美味しい焼き菓子を買いたいなぁと思いました。

 

職種の相違によって、具体的な業務、仕事の内容は大幅に異なります。

私はちょっとひねくれているのか、

あるいは、統計的な物の見方をしない天邪鬼(アマノジャク)なのか、

自分の職種から学ぶことよりも、こういった異業種の方々の普段の姿から、

いろいろなものを想像し、受け取らせて頂いている…。

 

私はどうやら、芸能人的ではなく、

職人気質の強い質なのではないかと思います。

 

父方の祖父は、建築関係の職人でした。

母は養女でしたので祖父母とは血の繋がりは無いのですが、

仕立て屋だった祖父母の家に遊びに行くと必ず、

その仕事ぶりをじっと見ていたのを覚えています。

職人と言われる方々の仕事に向かう姿勢を、子供ながらにあれやこれやと考え、

感触を捉えていたような気がします。

 

手前味噌で恐縮ですが、父は勤め人となり、「経理」を長く担当していました。

係長、課長を経て、部長になる時に別の課に移りました。

まだ職場がOA化されていない、というか、OA化というものすら遠い未来の事と思われていた時代に、

父が作成した帳簿は、長く「お手本」として経理課に残されていたそうです。

母から聞きました。

父はごく普通の人です。脚光を浴びるような人ではありませんでした。

どこにでもいる人でした。

 

以前NHKの番組「プロフェッショナルの流儀」で、空港の清掃員さんが取り上げられました。

その仕事ぶりが素晴らしかったので、

番組を見た旅行客の何人もの方が、

一緒に写真を撮らせて下さいと頼んでくるほどの反響だったそうです。

 

マスコミに華やかに取り上げられるプロフェッショナルもいらっしゃいます。

その方々の努力や才能もさることながら、それ以外にも、

まるで日常のごく当たり前の場所や、

日々の忙しさの中で見過ごされてしまうような代わり映えのしないような場所に、

プロフェッショナルはいるのだと思います。

 

「BEL AMER」も、商品が主役ですが、

それを主役とさせるのはプロフェッショナルなスタッフ。

そのスタッフが居なければ、「主役」は生まれないのですね。

 

さて、今日はこれからパスタ・ジェノベーゼを作ります。

生のスイートバジルとニンニクと松の実、オリーブ・オイルとパルメザンチーズで、

ソースは作り置きしていました。

年齢も考え、塩味は控え目。

食いしん坊の私は、夕食が楽しみです。ニコニコ